史上最速の梅雨明け

数日前から、急にめちゃくちゃ暑くなった。35℃以上の猛暑日が、連発。

昼間に外に出ると、かりっかりに熱い日射しが、首や腕の肌を灼く。風はあるにはあるのだが、ファンヒーターの前に座って、温風を全開で浴びてるかのようだ。まともに歩いていられないので、買い物とかの用事をすませたら、早々に部屋に引きこもり、電力逼迫を気にしつつもクーラーを全開にせざるを得ない。

まだ梅雨だったはずでは……?と訝っていたら、ついさっき、梅雨明けと発表された。ということは、今日から夏か。出だしからこの調子だと、大変な夏になりそうだ。

……まあ、個人的には、あと2週間くらいで、……なのだが。

———

アニー・ディラード『本を書く』読了。この本は、文章を書くための指南書ではなく、作家としての心構えを開陳するような本でもなく、ディラード自身が長年にわたって自問自答し続けてきた、「書く」という行為の意味とありようを綴った散文集だ。彼女にとって本を書く日々は、自信と希望に満ちあふれた日々というより、ひりひりと傷口に滲みるような痛みに苛まれ続ける日々だったのかもしれない。僕自身は、同じ書き手として何となく腑に落ちる部分もあれば、そこは少し自分とは違うなと感じる部分もあった。それが当然なのだろうと思う。

「アラスカの無人島で過ごした四日間」

以前、「バター茶の味について思い巡らすこと」というエッセイを執筆した金子書房のnoteに、新しいエッセイを寄稿しました。「アラスカの無人島で過ごした四日間」という文章です。同社noteで組まれている「孤独の理解」という特集のテーマに沿う形で執筆しました。

よかったら、読んでみていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

「カクテル 友情のトライアングル」

今年も始まった、インディアンムービーウィーク2022。僕が最初に観に行ったのは、「カクテル 友情のトライアングル」。監督はホーミー・アダジャーニア。主演はサイフ・アリー・カーン、ディーピカー・パードゥコーン、ダイアナ・ペンティ。10年前に公開された作品だ。

執拗にお見合い結婚を勧める母親から逃れて、ロンドンに引っ越した、システムエンジニアのガウタム。毎夜のパーティー三昧の生活を送るフォトグラファーのヴェロニカ。夫と暮らすためにロンドンに来たら偽装結婚だと告げられ追い出されたミーラ。ふとしたきっかけから同じ部屋で暮らすようになった三人。完璧なバランスに思えた彼らの友情の日々は、やがて、少しずつ変化していき……。

欧州ロケ主体で撮影されたスタイリッシュなラブストーリーは、昔も今もボリウッド映画にたくさんあって、この作品もその系譜に連なるものだ。プリータムによる音楽は華やかだし、序盤のハイテンポでコミカルな展開は観客の期待を裏切らない。ただ、後半のシリアスな展開との落差が結構激しいのと、三人それぞれの内面の変遷を表現する描写がやや足りなくて、唐突に感じられるところもあった。

三人の中では、ディーピカーの演技が見事にハマっていて、圧倒的な存在感を放っていた。「オーム・シャンティ・オーム」でデビューした後、しばらくは演技面で辛口の批評を受けていたそうだが、この「カクテル」で一気にブレークスルーを果たしたという評価も、納得の出来である。企画当初は、ディーピカーがヴェロニカとミーラを一人二役で担当するアイデアもあったそうだ。それはそれで、見てみたかった気もする。

何だかんだで安心して楽しめる、今時のボリウッド作品。よきかな、よきかな。

「歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡」

7月29日に閉館することが決まった、東京・神保町の岩波ホール。54年間に及ぶというその歴史に幕を下ろす最後の作品に選ばれたのは、ヴェルナー・ヘルツォーク監督のドキュメンタリー「歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡」。これは見届けねば、と思い、昨日観に行ってきた。

生前からの友人の一人だった監督の語りによって、チャトウィンの人となり、旅の軌跡と思索の遍歴が、南米やオーストラリアで撮影された映像とともに、淡々と、しかしリリカルに紡がれていく。『パタゴニア』や『ソングライン』を読んでいない人には、理解が追いつかない部分がもしかしたらあるかもしれない。ところどころでチャトウィン自身による自著の朗読の音声が挿入されていたのが、しみじみと良かった。

生来の人たらしで、おしゃべりで、作り話が大好きで、誰よりも優れた審美眼と飽くことを知らない好奇心を持っていて、死ぬ間際までずっと、旅に焦がれていた……。

彼には遠く及ばないけれど、僕も、心の赴くままに旅をして、文章を書き続けて、生涯を終えられたら、と思う。

一冊、一冊

午後、西荻の喫茶店それいゆで、初対面の編集者の方との打ち合わせに臨む。

その出版社との仕事は今回が初めてで、作ることになりそうな本のジャンルも、今までに経験したことのない分野だ。2時間近く、あれこれ打ち合わせをしているうちに、自分の内側のテンションが、じりじり上がってくるのを感じる。未知の領域への挑戦に、少しワクワクしていたのかもしれない。

相手の編集者の方も、びっくりするほど熱心で、著者の意志を尊重するのと同じくらい、自分たちの積み上げてきた媒体の価値に自負を持っているのを感じた。今度は、良いチームワークを実現できそうな気がする。それも、少しワクワクしていた理由だったのかもしれない。

この企画が世に出るのは、どんなに早くても再来年以降になるのだが、文字通り、1ページ1ページにじっくりこだわって取り組めそうなので、楽しみになってきた。来年の後半くらいのリリースを目標にしている別の出版社との本の企画もあるし、いろいろがんばらねば。

良い本を作ろう。一冊、一冊、自分の力が続くかぎり。