原稿を納品し終わって、ひさしぶりにゆったりできる時間が取れた。去年の暮れに買ったニコンのD800と、当面の主力レンズになるAF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR
のテスト撮影をしに、井の頭公園へ。空はすこんとよく晴れていて、透明な冬の日射しが眩しかった。
ポール・オースター「ブルックリン・フォリーズ」
この「ブルックリン・フォリーズ
」を買ったのは、確か一年以上も前。家の本棚の目立つ場所にずっと刺さっていたのだが、なぜか手に取らないままでいた。この間の年末年始に帰省する時、新幹線の中でようやく読みはじめたのだが‥‥もっと早く読んでおけばよかった。
ポール・オースターの小説は、徹底的に選び抜いて研ぎ澄ました言葉で、読者をぐいぐいと物語の渦に引きずり込んでいく作品が多かったように思う。だから、読む時もそれなりの集中力を使って対峙しなければならないような気がしていた。でも、この「ブルックリン・フォリーズ」は軽妙な語り口でさらりと読みやすい。主人公のネイサンがチラシの裏に日々書き殴っている「愚行の書」のように、「ひとつ話を書くとそいつがまた別の話につながって、それがまた別の話に」という感じで、ブルックリンに暮らす人々のそれぞれの物語が綴られていく。
物語に登場する人物の多くは、愚かな過ちや消えぬ哀しみを背負っている。でも、そんな弱さを抱えているからこそ、彼らは互いを支え合って生きていけるのではないかとも思う。オースター自身も暮らすブルックリンの街には、そんな傷ついた人々をゆるりと受け止めて包み込む、懐の広さがある。オースターが日本で知られるようになったのは、彼が脚本を手がけたブルックリンを舞台にした映画「スモーク」によるところが大きいと思うが、あの映画が好きな人なら「ブルックリン・フォリーズ
」もきっと気に入るに違いない。
温かなまなざしで語られるこの愛すべき物語にも、慄然とするような現実の出来事が、暗い影を落とす。それもまた、忘れてはならないことだと思う。
弱点の把握
昨日までに書き上げた原稿を、今日は一日かけて、じっくり推敲。少し時間を空けながら何度も読み返して、ちょっとずつ手を入れていく。
文章を書く時、きちんと推敲をして細部を見直すのは、大事な作業だ。推敲を端折ると、たいていろくでもない結果になる。でも、ただ漠然と読み返すだけだと、あまり効果的な推敲にはならない。自分の書きぐせや弱点をあらかじめ把握しているかどうかで、仕上がりにはかなり差が出ると思う。
今回の原稿は、どうだったかな。さっき納品してみたものの、まだそわそわする。ゲラの段階でもう一回、ちゃんと見直さねば。
越えていくハードル
昨日と今日は、ほぼ完全に部屋に閉じこもって、先週の取材の原稿執筆に集中。今年最初のハードルは、テープ起こしに手間取ったのでどうなることやらと思ったが、まずまず順調にクリアできそう。
今年はこれからも、結構な頻度でいろんなハードルが待ち構えている。その大半は自分自身で設置してしまったものだが(苦笑)、必ず越えなければならないハードルもあれば、越えられるかどうか、自分でも半信半疑の高いハードルもある。越えてみたはいいけれど、誰にも振り向いてもらえないハードルもあるかもしれない(苦笑)。
まあでも、やるしかないのだ。自分がどこに辿り着くのか自分でもわからないけど、目の前に現れるハードルを一つひとつ越えていかなければ、どこかに辿り着くことすらできないのだから。
Aside
昨年末に公開されて以来、インド映画の歴代興収記録を軽々と塗り替えてしまった話題の映画「DHOOM 3」。その劇中歌の「Malang」のフルサイズのムービー。インド映画史上もっともお金のかかったミュージカルシーンではないかとも言われているが、アーミル・カーンとカトリーナ・カイフのアクロバットを交えた熱演は、まさに圧巻。日本での公開も噂されている「DHOOM 3」、その実現に期待。