目指せ、動ける身体


ひさしぶりの山歩き。このブログを遡ってみたら、前回は去年の10月だったから、一年以上ぶりか。歩いたコースは毎度おなじみ、陣馬山から高尾山までの縦走ルート。空は雲一つない快晴で、陣馬山の山頂からは、富士山がくっきりと見えた。

去年このコースを歩いた時は、四十肩によるブランクやら何やらで身体がかなりなまっていて、歩いていても割ときつかったのだが、今日はそんなにきつくもなく、のんびりした気分で歩けた。八月下旬までインド北部に滞在してた分の高地順応効果がまだ少し残っていたと思うし、四十肩完治後に復活させた自重筋トレで、各部の筋力がだいぶ戻ってきているのもその要因だと思う。

とはいえ、小刻みなアップダウンの尾根道を何時間か歩いていると、筋トレだけでは鍛えることができていなかった足腰の細かい筋肉、たとえば足の裏とか、そういう部分に疲労がじわじわ溜まっていくのはわかった。こればっかりは、普段の生活の中での筋トレだけではどうにもならないので、もう少し山歩きの頻度を上げるとかしなければ、と思う。動ける身体を維持するのも、いろいろ大変だ。特に体力下り坂のおっさんにとっては。

目標は、海外取材でカメラザック担いで走り回っても、へこたれない身体を維持すること。地道にやっていこう。

仕事の軸足を移す

気がつけば、もう11月だ。夏の終わり頃の時点では、11月はタイ取材に行っている予定だったのだが、まだ日本にいる。依頼元の都合で、取材時期が年明け以降にずれてしまったので、年内は東京に留まることになった。

今年に入ってからの異様な円安と燃油高の影響で、海外取材はかなりハードルが上がってしまっている。自分で企画を立てて自腹で行く取材はもちろん大変だけど、出版社などから依頼を受けて行く海外取材も、取材費の捻出が相当きつくなっていて、採算が合わなくなってきていると聞く。ずっとこの状況が続くかどうかはわからないが、海外取材が絡む仕事の依頼は、減少傾向が続きそうだ。

僕自身、ここ十数年ほどの間は、旅行分野の仕事に軸足を置いていたが、このままでいいかどうか、ちょっと立ち止まって検討した方がいいような気がしている。自分の中で一番大事にしている取材テーマ……ラダックだったり、その他の地域だったりを変えるつもりはないけれど、それ以外のいわゆるライスワーク、継続的に収入を得るための仕事の種類に関しては、海外の動向にあまり振り回されないような分野を組み込んでいくことも考えている。

それは何かと聞かれると、すぐには思い浮かばないのだが……まあ、何かあるだろう。がんばります。

「RRR」

「バーフバリ」二部作を世に送り出して一躍名を馳せたS.S.ラージャマウリ監督の最新作「RRR」。インド映画史上最高額となる7200万ドルの製作費を投じられたこの大作、主演はテルグ映画界の二大スター、ラーム・チャランとNTR Jr.のダブルキャストで、脇を固めるのはアジャイ・デーヴガンとアーリヤー・バットという超豪華な配役。今年もっとも観ておきたかったこのインド映画を、満を持して観に行ってきた。

この映画の二人の主人公、ラーマとビームには、それぞれモデルとなった実在の人物がいたのだという。実際には出会うことはなかったというその二人の人生が、もし交わっていたとしたら……? という発想が、この作品が生まれたきっかけだったそうだ。大英帝国に支配されていた1920年代のインドでの独立闘争を背景に、叙事詩「ラーマーヤナ」をモチーフにした、この上なく濃密な物語が描き出されていく。最初から最後まで、ただただ圧倒された。3時間が一瞬で過ぎ去った。

S.S.ラージャマウリ監督の作品の特徴は、良い意味での「けれん味」だと僕は思う。演出の常識の枠を軽々と飛び越え、奇想天外な発想と圧倒的な迫力のビジュアルを、次から次へと観客に浴びせ続ける。観ている側も、リアリティとか辻褄とか細けえことはいいんだよ、という気分にさせられるし、実際、それがとても心地良くもある。

彼の作品のもう一つの特徴は、「人間の尊厳」をとても大切にしている点だと思う。主人公やヒロイン、家族や仲間だけでなく、名もなき市井の人々に対しても。彼らの尊厳が理不尽に踏みにじられた時、ラーマとビームは敢然と巨悪に立ち向かう。さらわれた少女を取り戻すために。囚われの友を救い出すために。国や民族の独立云々の前に、人間一人ひとりの尊厳を守り抜くことへの思いが、「RRR」には満ち溢れていたように感じた。

最後に。配信とかを待つのでなく、映画館で、大きなスクリーンで、観ましょう。

打ち合わせと収録と

昨日は昼から、神宮前で打ち合わせ。次に作る本のデザインについて、担当していただくデザイナーの方々と。

僕自身は、執筆・撮影・編集という役割をほぼ一人でこなす人間なのだが、デザインや造本、印刷といった分野ではまだまだ全然知識不足で、最新技術のノウハウにも追いつけていない。だから、その道の専門職の方々のアイデアを伺えるのは、本当に勉強になる。良い本を作れたらいいなあ。まずは原稿に着手せねばだけど……。

夕方からは、六本木ヒルズのJ-WAVEのスタジオで、コメントの収録に臨んだ。今週末の土曜日に放送される予定だという。先月と今月、2カ月連続でJ-WAVEに出させていただくことになるとは、想像もしていなかった。今回は収録なので、うまく編集されていることを願う……。

もろもろ終わった後、ブリュードッグ六本木に行って、ビールとハンバーガーで一人で軽く飲む。頑張った自分。おつかれ。

ほんのつかの間

今週は、ほんのつかの間ではあるけれど、ちょっとひと息つけそうな状況になった。

八月下旬にインドから帰国して以来、九月は新刊『旅は旨くて、時々苦い』の発売に合わせてのトークイベントやラジオ出演が立て続けにあった。加えて、よみうりカルチャーでのラダック講座も担当していたし、BE-PALのサイトでの短期連載の準備や、まだ表に出せない仕事も色々入っていて……本当に休む暇がなかった。特に、人前に出る類の仕事がいつになくたくさんあったので、絶対にコロナに罹患できない、罹ってしまったらその後の予定が全部吹っ飛んで、関係者の方々に大迷惑をかけてしまう……というプレッシャーがきつかった。

そんなこんなのあれこれもどうにか切り抜け、先週の原稿執筆ぼっち合宿が功を奏して、一番大変だった原稿もどうにか提出できるメドがついた。来週半ばの打ち合わせの後からは、また次の本の作業に着手せねばだけど。とりあえず、ひと息つける時はしっかり休んでおこうと思う。それが、ほんのつかの間だとしても。

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牟田都子『文にあたる』読了。穏やかな言葉で綴られているけれど、「気骨」のある本だなと感じた。牟田さんの(そして世の校正者の方々の)仕事に対する真摯さに接して、本づくりに携わる者の一人として、あらためて身の引き締まる思いがした。僕自身、執筆だけでなく、雑誌や書籍の編集もしていたので、この本を読み進めるうち、過去に自分がやらかしたあれやこれやがフラッシュバックしてきて、時々胃のあたりが重くなった(苦笑)。同じような思いをした同業の方々、きっと多いはず……。