いつものように

今朝はなかなかベッドから起き上がれなかった。ここ数週間、日中は取材、夜は執筆という日々がずっと続いて、疲労がたまっていたのだろう。身体が「ノー!」とダメ出ししてるような感じだった(苦笑)。

それでもどうにか昼過ぎには起きて、コーヒーを飲み、近所のコンビニで買ったエクレアで糖分を脳に補給し、原稿に取り組む。半歩ずつでも進まなければ、いつまでたっても終わらないし、終わらせないとまずいし。

でも、今のように疲れてたり、しんどい出来事があったりする時は、きりのいいところですぱっと切り替えた方がいいのも確か。なので、夜は仕事を切り上げて、リトスタに行った。今日の店内は満席で、ヘルプに来た顔なじみの元スタッフさんたちがちゃきちゃきと行き来していて、にぎやかでなごやかな雰囲気だった。たけのこの木の芽フライ、たけのこチャーハン、いちごババロア。いつものように、笑いながらごはんを食べられることの幸せ。

ごちそうさまでした。明日からまた、半歩ずつでも、がんばろう。

はなさんの歌

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取材先から家に戻る電車の中で、iPhoneでニュースを見ていた時、羊毛とおはなのボーカル、千葉はなさんの訃報を知った。

ぼんやりとした気持のまま、雨の中を歩いて帰り、何かを書かずにはいられない気がして、机の前に坐ってはみたものの、何を書けばいいのか、言葉が見つからない。

羊毛とおはなの音楽に最初に接したのは、リトスタの店内でBGMでかかっていた「LIVE IN LIVING’07」が気になって、CDを買って聴きはじめた時からだと思う。羊毛さんが爪弾くギターに、はなさんの歌声が、深く、高く、遠く、響いて重なる。以来、二人の音楽はいつも、僕にとって、部屋で淹れるコーヒーのようにとても身近な存在として、当たり前のようにそこにあった。穏やかに晴れた日の朝も。冷たい雨に窓ガラスが曇る午後も。

二人は意外なほどうちの近所でたびたびライブをやっていて、僕も吉祥寺のキチムやアムリタ食堂で催されたライブに足を運んだことがある。本当にお互いが手を伸ばせば届くほどの近い距離で、はなさんと羊毛さんのおなじみのゆるい掛け合いに笑いながら、二人の歌に耳を傾けた。2013年10月に銀河劇場で開催された十周年記念ライブでは、出演者には内緒で観客全員に造花が一輪ずつ配られて、終盤のクライマックスでスタッフの合図とともに、みんないっせいにそれを頭上に掲げた。幸せなひとときだった。その時の花は、今も僕の手元にある。

2014年2月に品川のグローリア・チャペルでのライブ(この時の「Hyperballad」は本当に凄かった‥‥)を観た後、しばらくしてから、はなさんが病気療養のためしばらくお休みすると聞いた時も、でも、いつかまたライブに足を運べる日が来るに違いない、次はどこに行こうと、ほとんど何の疑いも持っていなかった。それから一年もしないうちにこんな報せを受け取るとは‥‥。やっぱり言葉が見つからない。

好きな曲はたくさんあるけれど、やっぱり、自分にとって一番しっくりくるのは、この間TOKYO FMの番組に出演した時にも最後にリクエストさせてもらった、「ただいま、おかえり」。歌詞にある通り、旅立つ時にすっと背中を押してもらえる、大切な曲。

はなさんの歌は、これからも、ずっと聴くよ。

インタビューに事前準備は必要か?

最近、自分のクライアントの担当者や同業者の知人から似たようなことを聞いたので、それについてつらつらと。

僕のようなライターが、仕事で誰かにインタビューをしてそれを文章にする時、取材前にはあらかじめ、相手についてある程度下調べをしたり、質問項目のリストを用意したりする。ところが最近は、そういう事前の下調べをあえてせず、アドリブの質問でインタビューをするライターの方も結構いるのだという。

個人的には、「事前準備もせずにインタビューするなんてありえない!」と頭ごなしに否定しようとは思わない。予定調和を排除してアドリブによるライブ感を重視したいインタビューなら、事前準備をしない方がいい場合もあるかもしれない。そのライターの方に卓越した実力(インタビュー術、文章力、その他もろもろ)があるなら、下調べなしのアドリブスタイルのインタビューをしてほしいという依頼も来るのかもしれない。ただ、僕自身のライターとしての今までの経験から言えるのは、世の中にあるインタビュー案件のうち、そういう類の仕事はほんのわずかだ。下調べをしていなければ相手はすぐ気付くし、気分を害する人も少なくない。ほとんどの場合、手抜きとしてしか受け取られないんじゃないかと思う。

じゃあ、とことん徹底的に前もって準備をして、インタビュー本番は計画通りに質問を重ねていけばいいのかというと、それもちょっと違う。あらかじめ決めた質問をするだけなら、誰にだって、機械にだってできる。大切なのは、自分は(あるいは依頼元は)なぜその人に会いたいのか、自分はその人に何を聞きたいのか、その2点をきちんと考えて、はっきりさせておくこと。それさえぶれなければ、予備知識や質問項目はいったんポケットに入れておいても構わない。インタビューでは相手の表情や言葉に全力で集中しながら、時には臨機応変に質問を変えたり、話の流れを微妙に調整したりして、自分が会いに来た理由を相手に伝え、自分が聞きたいことの核心を相手から引き出し、あわよくばプラスアルファの何かをつかみとることを目指す。それが良いインタビューの条件だと思う。

ちなみに、まだ駆け出しのライターの方は、事前準備はしすぎるくらいしておいた方がいい。その誠実さはきっと相手にも伝わるはずだし、たとえ途中でちょっとバタバタしたとしても、どこかで心の通じ合うやりとりはできるんじゃないかと思う。そういう経験を少しずつ重ねていけば、アドリブの質問なんて、そのうち意識しなくても自然にできるようになるはずだ。ぶっちゃけ、アドリブ自体は別にたいした技術でもないと思う。

あとは、ひたすら丁寧に原稿を書く。がんばりましょう、お互いに。

四月の雪

雨に時折雪が混じる、寒い一日。四月とはとても思えない。

今日は朝から向ケ丘遊園の方で大学案件の取材があったのだが、至るところで電車が遅れていた。僕自身は予定の時間に間に合ったものの、それ以外の関係者が全員遅れたので、取材の時間も押して、おひるも食べられないまま午後の取材に突入。ひもじかった‥‥。隣に座っていた営業さんのおなかもきゅるきゅる鳴っていた(笑)。

取材を終えた後、恵比寿に移動。AFURIで柚子塩ラーメンを食べて一息ついて、今日から始まる竹沢うるまさんの写真展へ。風合いのある紙の質感と相まって、時に絵画のようにすら見える美しい佇まいの作品を堪能。その後は京橋に移動して、たかしまてつをさんの手帳絵&品々絵展へ。見ていて何だかほほえましく、でも時にはっとさせられる作品の数々。文具店の二階という展示空間そのものもすごくよかった。

そんなこんなで、四月の雪の中を駆けずり回った一日。今しか見られないものは、見られるなら、見ておくべきだと思う。

遠くを想う

先々週は5件、先週は7件、今週は8件。大学案件の取材ラッシュが、いよいよ佳境に突入してきた。今週の平日は木曜だけかろうじて空いていたので、みっちり原稿の執筆に使う予定だったのだが、ついさっき、そこも急な取材で埋まってしまった。原稿を書くのがなかなか追いつかない。翌朝に取材があるのに徹夜で書くわけにもいかないし。

机に向かっていて切羽詰まった気持になる時は、椅子の背もたれに身体を預けて、遠くのことを考える。澄んだ青い空。渇いた地面に咲く小さな花。風に揺れる黄金色の麦穂。懐かしい人たちの声。

「‥‥‥‥タカ! ずいぶんひさしぶりだねえ。しばらく来ないうちに、顔がなまっちろくなっちゃってるよ!」

僕には、もう一つの居場所がある。それは、とても恵まれた、幸せなことだと思う。