「Bajirao Mastani」

この間、アラスカに行く時に乗ったデルタ航空の機内で観たインド映画「Bajirao Mastani」。年末年始に観た「銃弾の饗宴 ラームとリーラ」と同じく、監督はサンジャイ・リーラー・バンサーリーで、ランヴィール・シンとディーピカ・パードゥコーン、そしてプリヤンカー・チョープラーが揃い踏みという、華麗で濃密な歴史絵巻。

時は18世紀のインド。当時のマラーター王国で絶大な権力を持つペーシュワー(宰相)に若くして任命されたバージーラーオは、自ら軍を率いて各地への遠征をくりかえしていた。ある時、遠征中のバージーラーオを、ブンデルカンド王の娘マスターニーが援軍を要請するために訪ねてくる。ムガル帝国軍に包囲されていたブンデルカンド城の窮地を救ったバージーラーオは、マスターニーと恋に落ちる。自国に戻ったバージーラーオを追って嫁入りすることになるマスターニー。しかし周囲の人々は、ムスリムであるマスターニーの存在を頑なに受け入れようとしない。そして、それまでバージーラーオと仲睦まじかった第一夫人のカーシーバーイも、内心深く傷ついていた……。

この作品、ミュージカルシーンのいくつかはYouTubeで観ていたのだが、作品全体を通じても映像の緻密さと美しさは本当に圧倒的で、口をあんぐり開けて見入ってしまうほど。ストーリーは史実にある程度基づいた悲恋の物語なのだが、個人的にはマスターニーと同じかそれ以上に、カーシーバーイに感情移入してしまったというか、不憫でならなかった。この役柄にプリヤンカーを起用したのは大正解だったと思う。でなければディーピカの存在感に負けてしまっていただろう。

これはやっぱり、飛行機の座席の小さなモニタではどうにも物足りない。映画館のスクリーンで、どっぷり浸りたいと思ってしまった。

ケープ・マレーの味

今日は昼から夜まで、写真展開催中のポイントウェザーに在廊。激混みというほどでもなく、ほどよくにぎやかで、穏やかな時間だった。来週からラダックに行くという方が訪ねてきてくれたり、知り合いも大勢来てくれたりで、愉しく過ごすことができた。

お店ではおひるに週末限定のインドネシア定食をいただいた。サンバルゴレンウダンに、豚肉の甘辛煮や空芯菜炒め、ガドガドなど。甘味がある中にほどよくスパイスの効いた味。インドネシアは未踏の地なのに、どこかで似たような味を経験したような気が……と思ったら、去年の南アフリカ取材の時にケープタウンで食べた、ケープ・マレー料理の味。

南アフリカにはかつて、オランダ東インド会社によってジャワから大勢の人々が奴隷として連れてこられた。その子孫は今、南アフリカでケープ・マレーという確固としたコミュニティを築き、文化を受け継いでいる。ケープ・マレー料理も彼らのそうした文化の一つだ。

思いがけない人とばったり再会したような、そんな気分になった。

今頃になって

昨日は夕方から、綱島のポイントウェザーで、今日から始まるラダック写真展の設営。すぐに終わるだろうとたかをくくっていたのだが、予想よりずっと大変で、お店の近所から手伝いに来てくれた友人たちがいてくれなかったら、たぶん全然終わらなかったと思う。本当に助かった。おかげで今日から、無事にスタート。

で、今日は午前中のうちに市役所に(制度的には非常に不本意ながら)マイナンバーカードを受け取りに出向いた。で、家に帰ってきて、仕事を……と思ったのだが、急にものすごく身体がだるくなってしまった。ベッドに横になって、夕方まで3、4時間寝る。

今頃になって、ここしばらくの疲れが出てきたのかな。来月からはまた、タイ取材が始まるんだけど。

現世にて

午後、原宿で取材。竹沢うるまさんへのインタビュー。今回も面白いお話を聞くことができた。写真家としての意思の強さとしなやかさ。素晴らしいなあと思う。

終わった後、代々木八幡までてくてく歩いて、かくたみほさんの写真展。フィンランドの沈まない真夜中の太陽。光が本当に綺麗。その一方で、逆に極夜ってどんななんだろう、と興味を持っている自分もいる。

夕方まで時間をつぶし、関さんと合流して、モンベル渋谷店さんの担当者さんにイベントの件でご挨拶。今回もいいイベントにしなければ、と思う。

帰国早々、ばたばたした一日だった。渋谷の喧騒の中に巻き込まれて、現世に戻ってきたのかな……いや、まだ何かを置き去りにしたままだな。まだ、そんな風に感じている。

森と氷河と鯨


昨日の午後、予定通りに南東アラスカから日本に戻ってきた。この間のラダックでの滞在に比べれば、期間も半分だし、あっという間だった気もするのだが、ラダックから戻ってきた時以上に、浦島感というか、周囲の環境にうまく馴染めなくて、ぼーっとしてしまっている。日本に、というより、人間のいる環境に。

南東アラスカでの日々は……短い間に、本当にいろんな出来事があった。誰かに話しても、すぐには信じてもらえないような出来事も。氷河の青い氷。苔の繁茂する深い森。ハクトウワシのまなざし。無邪気にじゃれあうクマ。ボートを取り巻くザトウクジラの群れ……。

あまりにも気高く、美しいものを、僕は、目にしすぎてしまったのかもしれない。