便利な生活

今日は一日、部屋でゆっくり。おひるにそうめんをゆでてごまだれで食べ、まほろばさんの豆でコーヒーをいれ、InterFMをかけ流しつつ、インドで撮ってきた写真の現像作業。疲れたら、ソファに寝転がってうとうとしたり。

日本での生活は、あらゆることが便利だ。電気は停電することなく常に流れ、シャワーは一定の温度に保たれたお湯がふんだんに出る。本屋に行けば雑誌や本に情報があふれかえっている。インターネットは光回線でYouTubeでも何でも見放題だし、スマホも4G回線でスイスイつながる。友達が今どこで何をしているのかは、SNSでだいたい筒抜け。近所のコンビニまで歩いていけば、たとえ真夜中でも、何でも買える。アマゾンを使えば、家から一歩も出なくても、たいていのものが買えてしまう。

便利だ。確かに便利だけど……そういう便利さは、人が生きるという行為の本質ではない、という気もする。もっと不便で物が手に入らない場所でも、人は人として、あるがままに、のびのびと生きていける。ラダックで、アラスカで、僕はそう教わってきた、と思っている。

またしても腹が減る

インドから戻ってきて、体重計に乗ったら、二カ月前に出発した時より、2キロ減っていた。

その後、日本での普通の生活に戻るにつれて、体重も少しずつ戻ってきて、今は帰国時よりプラス1キロくらい。それでもまあ、出発前からマイナス1キロ、今年の年初からだとマイナス5キロだから、今の年齢や体調での僕のベストウェイトは、ちょうど今くらいなのだろうと思う。

インド滞在中は、二、三日に一度くらい、宿の部屋で腕立て伏せをやっていた程度。標高3500メートルの地で毎晩フルにエクササイズをやるほどの元気はない(苦笑)。それでも現地で毎日、カメラザックを背負ったまま、結構な距離を歩き回っていたので、体幹や足腰を中心に、結果的にそれなりの運動になっていたとは思う。

それにしても、日本に戻ってきて以来、やたら腹が減る。確か数年前にも似たようなエントリーを書いた記憶があるが、今はとにかく身体がタンパク質や脂肪を欲しているという感覚がある(甘いものはあまり欲しくならない)。供給過剰にならない範囲で、必要な栄養を補充していかねば……。

何しろ、一カ月後には、タイである。あの暑さの中を取材で毎日歩き回れば、またやせるのは必定……。やれやれ。

キックオフ

水曜日は夕方から、八丁堀にある出版社で打ち合わせ。来年の春に出す予定の新しい本を作るための、版元の編集者さんとのキックオフミーティング。制作予算の内訳、発売までのスケジュール、発売後のプロモーション戦略、あとは本のタイトルとか、ページ配分とか……。今回の編集者さんと組んで本を作るのも、これで三冊目。気心の知れた者同士で組める安心感。いい本を作れそうな手応えはあるし、いい本を作らなければならないとも思う。

打ち合わせを終えた後、ひさしぶりに飲みに行きましょう、ということで連れて行かれた近くの店は、茨城県大洗町のあんこうを使った料理がウリの店。「うまいですよ〜」と言われたのだが、あんこうは7、8月が禁漁期で、次に水揚げされたあんこうが入荷するのは来週とのこと。まあ仕方ない。刺身の盛り合わせやメバルの煮付けをいただきつつ、編集者さんとサシで飲みながら、仕事のこと、旅のこと、いろんな話をした。

さあ、いよいよ、本づくりの始まりだ。がんばろ。

「Raees」

先日、デリーから成田までのエアインディアの機内では、離陸が遅れたこともあってかなり疲労していて(そりゃそうだ、その日の午前中にレーからデリーまで飛んで、夜遅くまで空港内で粘ってたんだから)、映画は1本しか観ることができなかった。不覚。その1本に選んだのが「Raees」。シャールク・カーンが、グジャラートの酒密売組織の首領を演じる、ピカレスクロマンだ。

インドの中でも、現在に至るまで酒の販売が禁止されているグジャラート州。貧しい家庭に生まれ育ったライースは、親友のサーディクとともに、酒の密輸を営むマフィアの仕事を手伝いながら生き抜いてきた。やがて彼は独立し、持ち前のカリスマ性を発揮して、自身の密売組織の勢力を急速に拡大していく。そんなライースに目をつけたのが、酒の密売の摘発に異様な執念を燃やす警官、マジュムダール。ライースとマジュムダール、そして彼らを取り巻く者たちの熾烈な生存競争が始まった……。

ヒゲを伸ばし、目つきの悪いメイクをして、眼鏡をかけたシャールクは、いつもの彼特有の軽妙なノリをほぼ封印。酒密売組織の首領ライースとして、渋味のある演技を見せていた。物語の展開やアクションの見せ方も淡々としていながら凄味と迫力があって、思わず息を飲む場面も多かった。自ら法を犯す商売を営み、敵対する者は蹴散らさずにはおかない容赦のなさを持っていながら、周囲の貧しい境遇にある人々を助けようとする優しさも持ち合わせている、ライース。その優しさとナイーブさこそが、波乱万丈ながらも順調だった彼の人生に翳りが生じる原因となるのだが……。

観終わった後の感想は、まさに、どんより(苦笑)。話の流れ上、そうならざるを得ない結末だし、納得できる結末でもあるのだが、それでもまあ、やるせない。でも、見届ける価値のある作品だと思う。ぜひ。

「A Flying Jatt」

成田からデリーに向かうエアインディアの機内で観た映画、三本目は「A Flying Jatt」。キレッキレのダンスとアクションが売りの若手俳優、タイガー・シュロフ主演のアクションヒーローコメディだ。

物語の始まりは、とある湖のほとりにある小さな村。産業廃棄物を垂れ流す悪徳企業が、湖に橋をかけるため、村で崇められている聖なる木を切り倒そうとする。村の学校の体育教師アマンは、ひょんな偶然で、この聖木から不思議な力を授かってしまう。かくして、まったく頭の上がらない母親お手製のコスチュームをまとった彼は、シークのスーパーヒーロー「フライング・ジャット」となったのだった……。

いやー、笑った笑った。ツッコミどころが多すぎて、どこでどう笑えばいいかと迷うくらい。マーシャルアーツの教師ではあるものの、性格的にかなりヘタレだった主人公アマンが、いろんな点でイケてないスーパーヒーローになってしまって、人助けや強敵との戦いの中で、少しずつ成長していく。最終的には「いやいやいや。待て待て待て」と観客全員がツッコミたくなるくらい、とんでもないスケールになってしまうのだが(笑)。

お約束のベタでおバカな笑いがたくさんちりばめられたこの映画だが、実は、環境問題をとても大きなテーマとして扱ってもいる。インド国内での環境問題に対する人々の意識はまだまだ高くないというのが現状だから、こういう子供も笑って楽しめる映画にそうしたテーマが織り込まれているというのは、とてもいいことだと思う。

続編、やらないかなー。たぶんやるんじゃないかな(笑)。