Category: Review

「3 idiots」

今年の夏のラダックでは、インド人観光客の姿がやたらめったら目についた。どうしてこんなに多いのかとラダック人の知人に聞くと、去年インドで大ヒットしたアーミル・カーン制作・主演の「3 idiots」という映画のラストシーンが、ラダックのパンゴン・ツォという湖で撮影されていたからだという。その後、別のラダック人の友人夫妻の家に泊めてもらった時に、この映画の英語字幕入りDVDを観ることができた。

工科大学で「三バカトリオ」(3 idiots)と呼ばれていた、ランチョ、ファラン、ラジュの同級生三人。だが、卒業から十年、学年でも一番の天才だったランチョは消息不明のままだった。ところがある日、ファランとラジュを呼び出したかつての同級生チャトゥルは、ランチョの居場所を知っていると話す。十年前に交わした、彼とランチョのどっちが十年後に成功を収めているかという賭けの結果を確かめる時がきたというのだ。三人は一台の車に乗り、インド北部へとランチョを探す旅に出る——。

いやはや、面白い。これは予想以上にいい映画だ。

物語は、学生時代の三バカトリオのさまざまなエピソードと、ランチョ探しの旅とが並行して語られていく。コメディタッチの展開が続くのかと思いきや、ものづくりに携わることの素晴らしさを描いたり、偏狭な教育制度や自殺者の増加などの社会問題についてチクッと刺すところもあって、なかなか奥が深い。大切なのは、人が自分らしさを忘れずに生きていくこと。そして、大切な人を想い続けて生きていくこと。この映画のメッセージはそこに込められている。

三時間近くもある長い映画で、正直、学生時代のエピソードがありえない展開かつテンコ盛りすぎなのは否めないが、何だかんだでグイグイ引き込まれて、観終わった後はものすごくスッキリした気分になった。終盤に登場するラダックの学校(シェイにある学校の校舎で撮影された)の描写や、ラストシーンのパンゴン・ツォのターコイズ・ブルーの湖水も素晴らしかった。ラダックびいきとしては、もうちょっと長い尺をラダックに割いてほしかったけど(笑)。

アーミル・カーンは、最近のインド映画界の中では随一のヒットメーカーとして知られている。以前、ラダック滞在中にテレビで観た「Taare Zameen Par」は、発達障害を抱えながらたぐいまれな絵の才能を秘めた少年を主人公にした映画で、これもすごく面白かったのを憶えている(デチェンは「あたしは、この映画の男の子が大好きなんだよ!」と言ってたっけ)。日本のどこかの映画館で、アーミル・カーン作品の特集上映をやってくれたらいいのに。絶対にヒットすると思うのだが‥‥。

三鷹の行きつけの店

三鷹で暮らすようになって、かれこれ八年くらいになる。このブログの文中にも、近所の行きつけの店の名前が時々出てくるが、最近の読者の中には「それ、どんな店?」と思う方もいるかもしれない。そこで、三鷹にある僕の行きつけの店を、ここでまとめて紹介しようと思う。

旅音「インドホリック」

ラダックから日本に帰ってきた時、旅音の新刊「インドホリック」が、僕のいない間に発売されていたことを知った。しかも、「ラダックの風息」と同じ出版社から。そこから不思議な縁がつながって、11月3日に開催するトークイベントのゲストとしてお招きすることになったのだが、それはまた別の話。

旅音とは鎌倉在住のご夫婦で、ご主人の林澄里さんが写真とWebを、奥さんの加奈子さんが文章を担当されている。中南米を一年かけて旅した日々を描いた前作「中南米スイッチ」もそうだったが、この「インドホリック」も、瀟酒でとても美しい本だ。鮮やかな色彩のインドの情景を、みずみずしい感性で切り取った写真の数々。インド各地を約半年かけて旅した日々を綴る文章は、感動した出来事があった時も、困ったトラブルに遭遇した時も、きちんと抑制が効いていて、ニュートラルな視線に好感が持てる。

旅行記というと、自分の行為に陶酔してしまったり、妙にカッコつけてしまったり、あるいは面白おかしくウケを狙ったりしてしまいがちだが、旅音による二冊の本は、本当に自然体で、いい案配のバランス感覚でまとめられている。それはたぶん、彼ら自身が、旅というものに対する自分たちなりのスタンスを確立しているからだろう。

長い旅を経験した人の中には、疲弊して擦り切れてしまったり、何かが変質してしまう人も少なからずいる。でも、旅音の二人は、異国に対するフレッシュな好奇心と敬意を抱きながら、実にのびのびと旅を楽しんでいる。それでいて、自分たちらしさも忘れていない。「旅の達人」といった類の人たちとは違う。「旅を楽しむことがうまい人たち」なのだと思う。そして、そういう人たちが作った本というのは、読んでいても気分がいい。

できれば、せめてあと1折(16ページ)はページ数に余裕を持たせて、その分、見開きや1ページ断ち落としでズバッとレイアウトされた写真をもっと見たかった‥‥というのは、贅沢すぎる注文か。フルカラーの本でこれ以上ページ数を増やすのは、採算面でかなり厳しくなるのはわかっているけれど。

僕の撮影機材

ここ数年、自分の仕事の範疇に写真というものが入ってきているせいか、「どんなカメラを使っているんですか?」とか「あのレンズはどう思いますか?」といったことをたまに人から聞かれるようになった。ここでは、僕が使っている撮影機材について、ひと通り開陳しておこうと思う。

BRIEFING DAY TRIPPER/S

休みの日に出歩く時のショルダーバッグを、ずっと前から探していた。

これまで使っていたポーターのフリースタイルの小型ショルダーは、財布とiPhoneとキーホルダーを入れるには十分なものの、それ以外のものはほとんど入らない。かといって、仕事の時に使っているForca Shoulder Packは、身軽に出歩くにはちょっと大きい。財布などの他にGR DIGITALや文庫本を放り込めるような、手頃なサイズのショルダーバッグはないものか‥‥。そうして探し続けているうちに、最近になって見つけたのが、ブリーフィングのDAY TRIPPER/Sだった。

ブリーフィングは、ミルスペック(米国の軍用物資の規格)に準拠した、ミリタリーテイストのゴツいデザインのバッグを作っているブランドだが、このDAY TRIPPER/Sは、ころっとした形の微笑ましいデザイン。大きすぎず小さすぎずの絶妙なサイジングで、底にかけてマチが広く取ってあり、意外とたくさんモノが入る。財布とiPhoneと文庫本の他に、カメラならオリンパスのPENくらいは楽々入るだろうし、ついでにトーツの折り畳み傘も突っ込める。欲を言えば、バッグの内側に明るい色の内張がされていたら、中のモノを探しやすくて、もっと便利だったと思うが。

僕にとっては、願ったり叶ったりのバッグ。長く愛用していければと思う。