退路を断つ

僕という人間は、自分でやり遂げようと思ったことを、そのまま臆面もなく口に出してしまうところがある。

小学生の時、突然「将棋の棋士になりたい」と言い出して、親に全力で止められた記憶がある(笑)。大学生の時は、「就職活動をやめて、バイトで金を貯めて旅に出る」と宣言して、周囲に呆れられながらそのまま実行してしまった。出版社で働くようになってからも「俺は物書きになる」と言い続けていたし、「ラダックで一、二年くらい暮らして、自分の写真と文章を本にする」と言って本当にやらかしてしまったのは、その最たる例かもしれない。

単に頑固というのもあるが、口に出すことで退路を断ち、自分自身にプレッシャーをかけている部分もある。たぶん、僕にはこういうやり方が合っているのだろう。

このやり方のいいところは、やり遂げようと思って口に出した時点で、他の人から応援してもらえるようになること。それはそれでプレッシャーになる場合もあるが、逆に、思いもよらないサポートを得られることもある。「ラダックの風息」を書いていた時、どれだけ周囲の人々に助けられたかわからない。

もちろん、口に出したからといって、あらゆる目標が叶えられるわけではない。僕自身、うまくいかなくて挫折した経験もたくさんある。でも、その過程で自分なりに全力を尽くしていれば、それを見てくれている人は必ずいる。あきらめてすべてを投げ出したとしても、ほんの幾許かは、目には見えないものが残る。

ただし、やりたいと思ったことを、あれもこれもとやたらめったら口に出して、結局どれも中途半端で投げ出してしまうのは、一番よくない。少なくとも、僕はその人を信頼できるとは思わない。あれこれ迷いながら、やりたいことを選び出したら、ばしっと退路を断って、全力で臨むべきだと思う。

退路を断って、何か一つのことをやり遂げたら、確実に、そこから何かが変わる。

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