2021年の映画鑑賞は、元旦にゾーヤー・アクタル監督の「人生は二度とない」を観たのが最初だったのだが、年末になって再び、同監督の別の作品を観る機会に恵まれた。この「鼓動を高鳴らせ!」という作品、俳優陣がとにかく豪華。アニル・カプール、プリヤンカー・チョープラー、ランヴィール・シン、アヌシュカー・シャルマー、ファルハーン・アクタル……。あと、ナレーション役の犬の声で、アーミル・カーンまで(笑)。この錚々たる顔ぶれによる群像劇が、はたしてどうまとまるのか、興味があった。
会社経営者として一代で財を成したカマル・メヘラーは、妻のニーラムとの結婚30周年記念に、親戚や友人を地中海クルーズに招待する。クルーズには、結婚した後にオンライン旅行代理店を起業して成功した娘のアイシャや、カマルの会社の後継者と目されている息子のカビールも参加。表向きは仲睦まじく見えるメヘラー家だが、実は、カマルとニーラムの夫婦仲は冷え切っていて、カマルの会社も経営の危機に。アイシャは自分を認めてくれない夫や姑との折り合いに苦悩し、カビールも自身のビジネスへの適性のなさに、別の人生を模索していた。そんな一家を中心に、クルーズ船では、美しいダンサーのファラーや、アイシャの幼馴染のサニーなども絡んだ複雑な人間関係から、次から次へとハプニングが起こり……。
見事な作品だと思う。ボリウッド・ムービーならではのスラップスティックなファミリー・コメディの側面もあれば、インドの富裕層にさえ(いや、富裕層だからこそか)根強くはびこるミソジニー(女性蔑視)の問題を、特にアイシャに絡めて巧く織り込んでいる側面もある。クルーズ船でトルコ各地を巡るロード・ムービーでもあるので、「人生は二度とない」を彷彿とさせるリリカルな旅の描写も随所に挿入されていて、それがとてもいい(特に、カビールとファラーが、イスタンブールの街を自転車で疾走するシーンが最高!)。
とにかく登場人物がものすごく多いため、それぞれに相応なエンディングを用意して見せるのは無理だったと思うが、いろいろ行き違い、すれ違いはあれど、本質的な悪人は一人もいなかったので、みんな悩み惑いながらも、それぞれの道を歩んでいくのだろうな、と観終えた後に何となく思った。
いやあ、本当に、良い映画だった……。
ちなみにこの映画、劇中歌もなかなか秀逸なのだが、特にすごかったのが「Gallan Goodiyaan」。この大人数で、なんと、一発撮り!