インディアンムービーウィーク2021で今回最後に観たのは、「俺だって極道さ」。主演はヴィジャイ・セードゥパティ、プロデュースをダヌシュが手がけたという、サスペンス・コメディとでも呼べるような作品。
舞台は南インドの街、ポンディシェリー。警官の母親を持つ青年パーンディは、親の期待とは裏腹に極道の世界に憧れ、仲間たちとチンケな悪さをして日々を過ごしていた。彼はある日、耳に障害を持つ女性カーダンバリに出会い、惹かれていく。カーダンバリは、ある目的のために姿を消し、行方不明となった父親からの連絡を待っていた。父親の目的とは、彼の仇敵であり、彼の妻を殺した張本人であり、カーダンバリが聴覚を失くす原因を作ったギャングの頭領への復讐だった……。
予想できるようで予想が裏切られていくストーリーの組み立てが面白くて、観終えた後に、へーっ!と思わず感心してしまった。コメディシーンが途切れない割には結構な数の人が死んでるし(割と軽めなネタの流れで殺される人もいる)、ヒロインのカーダンバリが抱える苦悩は重すぎるし、そのあたりの対比に戸惑う部分はあったのだが、無敵のヒーローというわけではない主人公を飄々と演じたVJPによって、危ういバランスをうまく保っていたように感じた。
こういう作品を世に送り出していることもまた、南インド映画の懐の深さなのだなあ、と思う。