旅の中で読んだ本

昨日の午後、予定通りに帰国した。長い待ち時間と移動時間でほとほと疲れたが、一晩ぐっすり寝て、今日はすっかり回復。毎度のことながら、時差ボケに悩まされない体質に生まれてよかったなあと思う。

この夏の旅で経験した出来事については、気が向いたらそのうち書くとして、とりあえず、今回持って行った2冊の本についての簡単な感想を。

1冊は、ジュンパ・ラヒリの短編集「停電の夜に」。彼女の本で最初に読んだのは「低地」だったのだが、その繊細な描写力と緻密な構成、圧倒的な完成度に、ほとんど打ちのめされたといっていいほどの衝撃を受けた。「停電の夜に」は彼女のデビュー作なのだが、これでいきなりピューリッツァー賞を受賞している。今回の旅の途中、デリーからサンフランシスコに向かう機内には、米国で暮らしているらしいインド人が大勢乗っていたのだが、米国育ちのインド人である彼女の創作のルーツは、こういう人たちと共通する部分にあるのだろうな、と思った。

もう1冊は、ブルース・チャトウィンの「パタゴニア」。実は、彼の代表作「ソングライン」を僕はまだ読んでいないのだが(ハードカバーは分厚くて重いので、文庫化されたらそれを旅先に持って行こうとずっと思っていたのだが、なかなか文庫化されないまま、幾星霜……)、巻末の解説で池澤夏樹さんが書かれていた、「ソングライン」が優等生の弟なら、「パタゴニア」はわんぱくな兄という形容は、個人的にものすごくしっくりくる。パタゴニアにまつわる大小の逸話を無数にちりばめた、天衣無縫なスタイルの旅行記。こういうやり方もあるのか、と個人的にすごく参考になった。

どちらも、とても良い本だった。おすすめ。

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