すっきり晴れた、気持ちのいい日和。こまごましたものを買う用事があって、午後、吉祥寺までぶらぶら歩いていく。
歩きながら、頭の中にくりかえし浮かんでくるのは、一昨日のクーデルカの写真展と、図録に書かれていた彼の言葉。無国籍の身の上で流浪の旅を続けながら写真を撮っていた彼は、自分の居場所だと思える場所を見つけてしまわないように、必死に耐えていたのだという。はたしてそれは、いかほどの苦しみだったことか。
僕はかつて、いろんな場所を旅しながらも、心のどこかで、ここは自分の居場所だと思える場所に出会えることを望んでいた。そしてラダックという場所と巡り会い、かけがえのない時間をそこで過ごした。でも、それができたのは、僕にとってのもう一つの居場所、生まれた国である日本という場所があったからなのだと、今はわかる。僕はたまたま、恵まれていたのだ。今の自分があるのは、実力でも何でもなく、たくさんの幸運に支えられていたからにすぎない。
自分を支えてくれていた幸運を、おろそかにしてはならないな、とあらためて思った。