精神と時の部屋

今朝は起きた瞬間、ダメだ、と思った。頭の前半分が異様に重だるくて、ぼんやりしてしまう。身体もきつい。五月に入ってからの、いや、たぶん、それ以前から蓄積してた仕事やら何やらの疲労が、一気に噴出したのだろう。午前中は何も考えられなくて、頭痛薬を飲んで、ソファに横になっているしかなかった。

幸い、今日は急ぎの仕事もなかったので、終日オフにすることにした。昼になってだいぶ回復したので、午後は西荻のフヅクエへ。店内で最奥の位置にある、ほかの席からほぼ完全に死角になっている席にすべりこむ。お店の人からは、この席は「精神と時の部屋」と言われているそうだ。確かにここは、しばし時を忘れることができる。

鶏ハムのサンドイッチ、ショートブレッド、アイスコーヒーをいただきながら、トマス・エスペダルの『歩くこと、または飼いならされずに詩的な人生を生きる術』を読む。こういう時間が、もっと必要だ。ずっとベタ踏みのアクセルを、もう少しゆるめてみよう。

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アーシュラ・K・ル・グウィン『ゲド戦記』全六巻読了。二年くらい前に買っておいた岩波少年文庫のボックスセットを、一気に読んだ。若年層向けとはいえ、それぞれの物語を貫くテーマは、本当に深遠で……。稀代のストーリー・テラーがはためかせる想像の翼に乗って、アースシー世界での長い長い旅を、存分に愉しませてもらった。

海外では『The Books of Earthsea: The Complete Illustrated Edition』という、六冊とアースシー世界を舞台にした短編をすべて収録し、美しいイラストを添えた本が2018年に出ている。これ、二冊か三冊に分冊して、日本でも新訳で出してくれないかな……。岩波版の訳文も名作だとは思うが、さすがに古さを感じたので。その際は『ゲド戦記』とかではなく、原題に沿ったタイトルにしてほしい。

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