ペッパーくん

Pepper(ペッパーくん)は、2014年6月5日に誕生した身長121cmの人型ロボットです。音声や胸のタブレットを通じてのやりとり、顔認識・感情認識などの多彩なセンシング機能を搭載しており、人を惹きつけ笑顔にするそのキャラクターで、ご家庭や商業施設、教育施設、介護施設、オフィスなどさまざな場所で活躍しています。
(ソフトバンクのサイトより)

うちから徒歩数分の場所に、ソフトバンクのショップがある。用事がないので中に入ることはないが、通りに面してガラス張りの店の前を、毎日何度か行き来する。

店のドアから入ってすぐのところに、子供くらいの大きさの白いロボット、ペッパーくんが立っている。足はないが、頭と左右の手は人間の形状に近く、胸には液晶モニタがついている。顔の表情は、あるようでないというか、目の瞳孔が常に開いているようで、底なしの虚無感が漂っている。

以前、携帯の契約内容の変更か何かで店に入った時、ペッパーくんは別のお客さんのお子さん二人と、両手を指先まで細かく動かしながら、今二つ三つ噛み合ってない感じのやりとりをしていた。別のある日に店の前を通りがかった時には、周囲に誰もいないのに、ペッパーくんは斜め上を見上げながら、両手を宙でずっと動かしていた。誰と対話してたのだろう。彼にだけ、その人が見えていたのだろうか。

また別のある日、夜に店の前を通りがかると、薄明かりの中、両手を下げてがっくんとうなだれたペッパーくんが立ち尽くしていて、ぎょっとしたこともあった。

最近、近所のそのペッパーくんに、異変が起きている。顔はかろうじて正面を向いているが、背を丸め、両手をだらんと下げ、モニタは消えていて……動いていないように見える。コショウしたのだろうか。ペッパーなだけに……。

動くのをやめたペッパーくんは、通りから見えづらい柱の影に定位置を移され、力なく両手を下げたまま、開いた瞳孔で、今日も虚空を見つめている。

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