インディアン・ムービー・ウィーク2020・リターンズで最後に観たのは、タミル映画「ジガルタンダ」。ラジニ様主演「ペーッタ」を手掛けたカールティク・スッバラージが、その前の2014年に作った作品だ。タイトルは、舞台となるマドゥライの街の名物のアイスクリームシェイクの名前だという。
短編映画コンテストのテレビ番組に出場したカールティクは、審査員の一人の映画プロデューサーから長編の劇場公開作を撮らないかと持ちかけられる。プロデューサーの希望はコテコテのギャング映画だが、社会派映画を撮りたいカールティクは、実在のギャングを取材して脚本を作りたいと考え、身の危険を顧みず、マドゥライで最近悪名高いギャング、セードゥの取り巻きへの接近を試みる。しかし……。
上にリンクを張ったYouTubeの予告編動画だと、この作品の真の姿は、たぶんほとんどわからない。特に後半から、文字通り予測不能な超展開に次ぐ超展開が繰り広げられる。南インド特有の情け容赦ないゴリッゴリのギャング映画かと思いきや……いや確かにそういう映画なのだが……残酷さとペーソスとユーモアが入れ替わり立ち替わり現れる中に、恋とか友情とか先人の教えとか、何より、あふれんばかりの映画愛(!)がみなぎっているのだ。あと、ヴィジャイ・セードゥパティのめちゃ贅沢な無駄遣い(笑)。
映画館を出る時、すごいものを観た、すごいものを観た、と、自分でも言語化できない興奮でいっぱいになった。こんな感じの「してやられた感」は、「ヴィクラムとヴェーダー」以来だろうか。いつかまた、日本で再上映の機会があるようだったら、未見の方はぜひ観ておくことをおすすめする。いやほんと、すごいものを観た。