インディアン・ムービー・ウィーク2020で観た4作目の映画は、「結婚は慎重に!」。主演の二人、アーユシュマーン・クラーナーとジテーンドラ・クマールがゲイのカップルを演じる、スラップスティック・コメディだ。
カールティクとアマンは、歯磨き粉のセールスマンから駆け落ちの手助け業まで、その日暮らしの仕事で食いつなぎながらも、幸せな日々を過ごしていた。ひょんなことから、二人はアマンの親戚の結婚式に出席することになったのだが、超保守的なアマンの父親シャンカルに、二人の関係がバレてしまう。激昂したシャンカルは、アマンにお祓いを受けさせたり、知人の娘との縁談を無理やり進めようとしたりするのだが……。
インドでは英国の植民地だった時代から、同性間での性行為を禁止する法律、刑法第377条が存続していたという。この法律が撤廃され、同性間の性行為が合法化されたのは、2018年9月、つい最近のことだ。「結婚は慎重に!」は、インドという国に新しくもたらされたこの社会基準を真正面から取り上げた、ボリウッドのメジャー路線では初めての娯楽作品ではないかと思う。
主人公のカップルの片方が、意に沿わぬ縁談を頑固な家族から押し付けられ、引き裂かれそうになるのを、主人公たちがあの手この手で乗り越えていくという図式は、「DDLJ 勇者は花嫁を奪う」をはじめ、インド映画では定番のフォーマットだ。この「結婚は慎重に!」もそのフォーマットを使ったドタバタコメディなのだが、アマンの家族と親族が一癖も二癖もある変わり者ばかりで、展開がハチャメチャなので話を追っかけるのが大変(笑)。社会的には彼らの中でもっともマイノリティであるはずのカールティクとアマンが、一番まともで、自分自身に正直に生きていて、それが家族や親族たちと対照的に描かれていく。典型的なホモフォビアであるシャンカルも、二人の絆を目の当たりにするうちに、理解できないと悩みながらも、少しずつ歩み寄っていく。
主人公の二人がゲイであること自体を、笑いのネタにしたり揶揄したりする意図の演出がまったくなかったのも、観ていてすごく清々しかった。いろんな意味で、観る価値のある作品だと思う。