10月のタイ取材、往路のタイ国際航空の機内で観たのは、今年のIFFJでも上映されたインド映画「心 ~君がくれた歌~」。たぶん、途中いくつかの場面がカットされた短縮版だったと思う。監督はカラン・ジョーハル、主演はランビール・カプールとアヌシュカー・シャルマー。脇を固めるのはアイシュワリヤー・ラーイ、ファワード・カーン、特別出演でシャールク・カーンまで登場する。
音楽の道に惹かれながらもロンドンで怠惰な人生を送るアヤンは、とあるクラブでアリゼーという女性と出会う。その時は互いに恋人がいた2人だったが、それぞれに別離が訪れる頃、アヤンはアリゼーを好きになる。しかしアリゼーはアヤンのことを友人以上に思えない。2人は旅先のパリで、アリゼーの元恋人アリーに出会う。アリーに復縁を迫られたアリゼーは、彼との結婚を選ぶ。アヤンはインドで催されたアリゼーの結婚式に呼び出されて深く傷つくが、帰りの空港で詩人のサバーと知り合い、彼女とウィーンで暮らすようになる……。
……複雑である。原題が「Ae Dil Hai Mushkil(心は難しい)」というくらいだし。この監督、この俳優陣で、海外ロケにキャッチーな音楽の数々と、良作になりそうな雰囲気はムンムンだったのだが、どうにもストーリーと人間関係がややこしくなりすぎてしまったように思う。複雑な物語と入り組んだ人間関係に説得力を持たせるには各登場人物のキャラクター設定が弱くて、「何考えてるんだこの人?」と訝りたくなることも多かった。特に、たぶん誰もが同じ感想だろうけど、後半から結末にかけての、あの展開がなー。それで全部片付けちゃうんだ、という。
アヌシュカーもランビールも奮闘はしているし、アイシュ様は女神のようにお美しいし、個々の場面には心惹かれるものも結構あったのだが……いかんせん、ストーリー(特に後半)とキャラクター設定に無理が生じてしまったかな、と。そのあたり、ちょっと残念な後味が残った。