先日、デリーから成田までのエアインディアの機内では、離陸が遅れたこともあってかなり疲労していて(そりゃそうだ、その日の午前中にレーからデリーまで飛んで、夜遅くまで空港内で粘ってたんだから)、映画は1本しか観ることができなかった。不覚。その1本に選んだのが「Raees」。シャールク・カーンが、グジャラートの酒密売組織の首領を演じる、ピカレスクロマンだ。
インドの中でも、現在に至るまで酒の販売が禁止されているグジャラート州。貧しい家庭に生まれ育ったライースは、親友のサーディクとともに、酒の密輸を営むマフィアの仕事を手伝いながら生き抜いてきた。やがて彼は独立し、持ち前のカリスマ性を発揮して、自身の密売組織の勢力を急速に拡大していく。そんなライースに目をつけたのが、酒の密売の摘発に異様な執念を燃やす警官、マジュムダール。ライースとマジュムダール、そして彼らを取り巻く者たちの熾烈な生存競争が始まった……。
ヒゲを伸ばし、目つきの悪いメイクをして、眼鏡をかけたシャールクは、いつもの彼特有の軽妙なノリをほぼ封印。酒密売組織の首領ライースとして、渋味のある演技を見せていた。物語の展開やアクションの見せ方も淡々としていながら凄味と迫力があって、思わず息を飲む場面も多かった。自ら法を犯す商売を営み、敵対する者は蹴散らさずにはおかない容赦のなさを持っていながら、周囲の貧しい境遇にある人々を助けようとする優しさも持ち合わせている、ライース。その優しさとナイーブさこそが、波乱万丈ながらも順調だった彼の人生に翳りが生じる原因となるのだが……。
観終わった後の感想は、まさに、どんより(苦笑)。話の流れ上、そうならざるを得ない結末だし、納得できる結末でもあるのだが、それでもまあ、やるせない。でも、見届ける価値のある作品だと思う。ぜひ。