ワット・ロン・クンとバーンダム

池にその姿を映すワット・ロン・クン

タイ北部の街チェンラーイの郊外に、最近、多くの人々から注目を集めている二つの場所がある。「チェンラーイのブラック&ホワイト」と呼ばれるこれらの場所に共通しているのは、タイを代表する著名な芸術家によって作られた、いや、今なお作り続けられている「作品」であるということだ。

まずは、「ホワイト・テンプル」とも呼ばれる、ワット・ロン・クンから。この寺院は、チェンラーイ出身の芸術家、チャルーンチャイ・コーシピパットさんが私財を投じて、1997年から作り続けているのだという。訪れた日は、青空の下、白亜の寺院がその姿を池に映していた。

骸骨と酒瓶

境内に入ると、こんな標識?が。この段階で、いろいろ予感させる(笑)。

真正面から見たワット・ロン・クン

真正面から見たワット・ロン・クンの全景。手前の方が、いろいろ大変なことになっている。

地面から伸びる無数の手

地面からにょきにょきと突き出した、無数の手‥‥。

地表で蠢く阿鼻叫喚の顔

阿鼻叫喚の顔たちが蠢く。まさに地獄。だが、不思議と生理的な気持悪ささほどはない。

入口で身構える守護者

寺院へと続く道の入口で身構える守護者の像。

竜の顔が並ぶ道

すさまじいまでに作り込まれた白一色のレリーフを、ガラスのモザイクの煌めきが彩る。

白く燃え上がっているように見える本殿

本殿は、まるで白い炎に包まれているかのように見える。

空を切り裂くような屋根の突端

屋根の突端の先の先まで、ディテールにぬかりはない。

至るところに何者かがいる

寺院の至るところに、何者かが潜んでいる。見ていても飽きることがない。

白い炎の中で祈る僧侶

聖と邪が、一人の芸術家の感性によって奔放にミックスされている、不思議な場所。

華麗な黄金の炎のモニュメント

このワット・ロン・クン、チャルーンチャイさんの制作資金がどこまで続くかと危ぶまれたものの、世間に知られるようになってから次第に寄付金も集まるようになり、完成までの見込みが立ちつつあるそうだ。敷地内にはまだたくさんの未装飾の建物があるので、完成したらいったいどんな姿になるのだろうか。

バーンダムの「黒い家」と石像

もう一つの「ブラック・ハウス」と呼ばれる場所は、タイ語で「黒い家」を意味する、バーンダム。同じくチェンラーイ出身の巨匠、タワン・ダッチャニーさんの手による私設ミュージアムだ。ここもまた、今も制作が続行されていて、全体が作品として進化し続けている。

見事に彫られた扉のレリーフ

バーンダムの装飾は、木彫がメイン。壁面やドアなど、至るところに彫刻が施されている。

一番大きな「黒い家」の内部

一番大きな「黒い家」の内部。まだ制作途中の彫刻などの作品が置かれていた。

敷地内に約40棟の「黒い家」が点在する

バーンダムの敷地内には、大小約40棟の「黒い家」が点在する。どれもタイ北部特有のラーンナー様式のもので、高床式の家の床下に動物の頭骨などを飾っているものが多い。

「黒い家」を装飾する見事な木彫

鋭利な槍のような形の家の壁面を、見事な彫刻が彩っている。

牧歌的な雰囲気を漂わせる扉の装飾

どこか牧歌的な雰囲気を漂わせる、扉の装飾のレリーフ。

細部までこだわりのある精密な彫刻

木彫でここまでやるか、と思わせるほど精密な彫刻もある。

熱帯雨林を思わせる佇まいの家もある

敷地内には、熱帯雨林を思わせる佇まいの家もある。

そこかしこに飾られた動物の頭骨

そこかしこに飾られた動物の頭骨は、バーンダムにおける重要なモチーフなのだろう。

「黒い家」の床下に横たわる象の骨

「黒い家」の床下に横たわる、象の全身の骨らしきもの。作り手の死生観をいろいろと想像させられる。

正直に言って、チェンラーイのようなタイの最北部にある街の郊外で、これほどまでに鮮烈な、しかも未だに進化し続けている芸術作品を目にすることができるとは、まったく想像していなかった。ワット・ロン・クンもバーンダムも、あと何年か経ったら、また違った姿になっているのだろう。その姿を、機会があればまた見てみたいと思った。

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