削り出す言葉

子供の頃の僕は、ご多分に漏れず、作文や読書感想文の宿題が嫌いだった。苦手ではなかったけど、いつもメンドクサイと感じていた。原稿用紙の升目に一文字ずつ字を書いて埋めていくのは手が痛くなるし、うまくいかなくなって消しゴムで消したらそれまでの苦労が無駄になるしで、こんなの何が面白いんだ、アホか、と思っていた(苦笑)。

そんな僕もおっさんになり(笑)、何の因果か、文章を書くことを生業にしている。最近思うのは、子供の頃に感じていた「作文」という作業に対する印象と、今の自分が文章を書く作業に対する印象はまったく違う、ということ。子供の頃の「作文」は、一つひとつの言葉を小石を積み上げるようにして書いていた。今の自分は、頭の中にぶわーっとある言葉を、彫刻刀で削り出すような感じで形にしている。たぶんそれは、鉛筆で原稿用紙の升目を埋めていくのと、パソコンのキーボードをカタカタ叩くのとの違いでもあるのかな。

言葉は積み上げるより、削って選び取る方が大変だなあ、と思いながら、今日も本の原稿を書いている。

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