新しいパダワン

夜、ひさびさに晩酌をしにリトスタへ行く。お店には、昨日から新しいパダワン、つまり見習いスタッフの女の子が加わっていた。緊張した面持ちながらも、一つひとつの仕事——コップをそっと机に置いたり、おしぼりが入っていた袋を回収したり、といったことを慎重にこなしていた。

ミヤザキ店長によると、彼女は「リトルスターレストランのつくりかた。」を読んで、このお店で働こうと思い立って上京してきたのだという。まだリトスタ以外の仕事も決まっていなければ、住む場所すら探している最中というくらいだから、相当な肝の据わりようというか、覚悟というか。そもそも、本を読んで興味を持ったからといって、それでスタッフとして採用されるとは限らないわけだし。

もちろん、彼女が上京してリトスタで働こうと決めたのには、ほかにいくつもの理由があるのだろう。でも、自分が書いた本が他の人の人生に入り込んで、その人の背中をポンと押しているのかと思うと、何だか不思議な気分だ。と同時に、身の引き締まる思いもする。本作りの仕事では、けっして手を抜いたりできないな、と。

新しいパダワンリトスタになじんでいけるかどうかはまだわからないけれど、あのお店で働く日々は、きっと彼女にとってかけがえのない経験になると思う。少なくとも、時給250万円でドミノ・ピザで働くよりは。

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