蜘蛛の引っ越し

うちの浴室兼トイレの床の隅で、一匹の蜘蛛が巣を張っているのを見つけた。体長1、2センチくらいの蜘蛛で、狭い範囲にみっしりと糸を張り巡らせていた。たぶん、換気窓の外の植え込みから中に入ってきたのだろう。

僕は鷹揚というかズボラというかテキトーな人間なので、その蜘蛛の棲家を見つけた後も、ずっとほったらかしにしていた。あんな低い場所に巣を張って、餌になる虫が引っかかるのだろうか。あと半月もしたら僕はここから引っ越して、その後は清掃業者がどこもかしこも掃除しまくるというのに。

で、一昨日、浴室に入ると、床の上に、ぽつんと蜘蛛がいた。いっこうに餌のかからない自分の巣に愛想が尽きて、新天地を求めてさまよい出たのだろうか。でもこのままだと、彼は排水口に流されて溺れてしまう。

僕は換気窓のハンドルを回し、ひょいと彼をつまんで、外の植え込みに投げてやった。引っ越しだな、彼も。

当たり前の日々

今朝、大阪方面で、かなり大きな地震。死傷者が出て、ライフラインや交通機関にも障害が生じているという。つい二週間ほど前に訪れていた土地だから、まったく他人事とは思えない。関西には友人も大勢いるし。

こういう自然災害の報せを聞くと、ばしゃっと冷や水を浴びせられたような気持になる。普段、当たり前のように感じている日々は、実は当たり前でも何でもなくて、多くの人々の努力とそれなりの幸運によって支えられているということ。運命がほんのちょっと気まぐれを起こせば、たやすく崩れてしまうバランスの上に成り立っているということ。

忘れてはいけないな、と思う。当たり前の日々は、けっして当たり前ではないと。

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ル・グウィン「闇の左手」読了。ものすごい本。打ちのめされた、と思えるほどの読後感。僕の生まれた年に書かれた作品だが、今読んでもまったく古さを感じないどころか、今の時代にこそ読まれるべき着眼点を備えていることに驚く。ル・グウィンの作品はまだ「西のはての年代記」シリーズしか読んでいないのだが、これからいろいろ手に取ってみようと思う。

中央線と総武線

引っ越しまで、あと二週間弱。いつ終わるとも知れなかった不用品の整理にもかなりメドがつき、家具や電化製品の譲渡先も決まりつつある。譲りきれないものはリサイクル業者や粗大ゴミ回収に委ねることになるが、それらの処分をぬかりなく進めていって、引っ越し当日までに本と衣類と食器をきっちり梱包すれば、まあ、何とかなるだろう。

今日は東急ハンズでこまごましたものを買いに新宿まで往復したのだが、引っ越したら、電車に乗る時の感覚を切り替えなければ、と思った。三鷹なら中央線は快速も中央特快も停まるし、総武線や東西線は始発に乗れるのだが、引っ越し先の西荻窪ではかなり事情が変わる。中央線が停まるのは快速のみで、しかも土日祝日は通過してしまう。土日祝日は必ず総武線か東西線、もしくは早朝か深夜の時間帯の中央線の各駅停車に乗らねばならない。今までの感覚で土日もうっかり中央線快速に乗っちゃってそのまま三鷹まで、みたいなこと、絶対やらかしそうだ。ほんと、目に浮かぶ(苦笑)。

かれこれ十年以上、だものなあ。行きつけの本屋も、コンビニも、スーパーも、ラーメン屋も、全部変わる。何だか信じられないような、ピンと来ないような。僕にとっては、何処かの国に半年、一年と旅に出るよりも、大きな変化のような気がする。

スポーツには興味がない

気がつくと、スポーツ観戦というものに、まったく興味がなくなってしまっていた。サッカーにしろ、野球にしろ、テニスに卓球に、もっと言うと夏と冬のオリンピックも、全部。試合中継をテレビなどで観なくなってから、もう何年にもなる気がする。

スポーツそのものが嫌になったのではなく、その周囲を取り巻く、ビジネスや政治のどす黒い部分に、ほとほと嫌気が差したのだ。大会の誘致には姑息な賄賂が蔓延し、国を挙げてのドーピングは後を絶たず、酷使されて壊れた選手は使い捨てられ、メディアは耳ざわりのいい美談だけを世間に垂れ流していく。それらは改善されるどころか、年を追うごとにひどくなっている。

スポーツ観戦が好きな人の趣向を否定する気は毛頭ないし、それでその人の日々の生活にハリが出るならどうぞ楽しんで、と思っているのだが、僕自身に関しては、いや、もう、結構です、というスタンスにさせてもらえれば、と思う。

ワールドカップ、開幕ですか。はあ。どうでもいいや。

サインペン危機一髪

仕事だイベントだ引っ越しだ何だかんだと、最近ばたばたしてるせいで、今日は危うく致命的なミスをやらかすところだった。

夕方、雨が止んだ頃合いを見て、洗濯をしたのだが、洗い終えた洗濯物の中から、なぜかコロリと、黒のサインペンが出てきたのだ。先週金曜のトークイベントの時、お客さんへのサイン対応の際に半袖シャツの胸ポケットにペンを挿したのを忘れたまま、洗濯機に突っ込んでしまったらしい。

ペンによっては、洗濯機の中でインクがあふれて大惨事になっていた可能性もあったが、幸いなことに、洗濯物にはノーダメージ。脱水の時の遠心力でペンのキャップ内でインクが少しあふれていたが、キャップの密封性が高かったおかげで、外にはまったく漏れていなかった。ふう。危ない危ない。

しかしまあ、普通じゃ考えられないようなミスだよなあ……気をつけよう。