Tag: Writing

「プロ意識」の基準

「プロ意識」という言葉には、職人や専門職の人たちが持つその分野ならではの考えという意味合いがあるが、最近では比較的一般的な職業の人たちでも、担当領域で持つべき意識という感じで使われている印象がある。僕自身は、もともと編集者でありライターであり、最近は写真もやっているが、いずれもプロ意識なるものを持ってなければ食べていくこともままならない立場なので、自分なりに意識してきた基準めいたものはある。

それは、自分自身の担当領域に対する「責任」と、他人の担当領域に対する「敬意」、そして何か判断を下さなければならない時の「論理性」だ。

自分の担当領域への「責任」というのは、当たり前すぎるように思えるかもしれないけど、それがどのような結果をもたらすかを見通した上で責任を持てるような取り組みをするには、結構な覚悟がいる。結果というのは必ずしも経済的な数字だけとは限らないので、なおさらだ。

同時に、他人の担当領域に対して「敬意」を持つことも大事だと思う。これは他に問題があってもナアナアの馴れ合いでスルーしていいということではない。きちんと敬意を持って接し、互いに理解に努めた上で、問題があればフォローし合う関係を築けなければ、まともなチームワークは期待できないからだ。

その上で、仕事を進めていく上で何らかの判断を下さなければならない時は、好きとか嫌いとか他人との関係とか、そういうものには左右されず、「論理性」を持つ根拠に基づいて判断できるようでなければならない、と思う。

まあでも、仕事の種類にもよるけれど、関わる人が増えれば増えるほど、理想通りに仕事に取り組むのは難しくなっていくんだよな……。かといって、そこで「プロ意識」を譲って妥協してしまうのは、絶対にしてはいけないことだとも思う。たとえ立場的にやせ我慢だとしても、どれだけ矜持を保っていられるのかは、プロであるか否かの基準だ。

たくさん笑うこと

午後、神保町で取材。ひさびさのインタビューの仕事。相手の方のお人柄のおかげで、とても楽しく話を伺わせていただいた。編集部でも何人かの方と話をして、今日は一日、いろんな人たちに会って、たくさん笑ったように思う。

昨日ちょっと嫌なことがあって、いらいら、もやもやしたものをひきずっていたのだが、今日たくさん笑ったことで、何だかとてもすっきりした気分になれた。一人で暮らし、一人で仕事をしていると、ストレスがたまってネガティブな気分に陥った時、切り替えるのに苦労することが時々あるのだが、一番いい解決法は、誰かと会って、たくさん話して、たくさん笑うことなんじゃないかなと思う。

おかげさまで、すっかり元気です。明日から、原稿、がんばろ。

「BE-PAL」Webサイトでの連載開始のお知らせ

Bepal-chadar小学館のアウトドア雑誌「BE-PAL」のWebサイトで、2016年から週に1回のペースで「旅」をテーマにした連載の執筆を担当させていただくことになりました。2015年に執筆したノルウェー南アフリカラダックなどを旅した際のようなフォトレポートのほかに、過去の旅の経験の蓄積の中から構成した記事や、僕以外にも国内外の各地で活動されている方のインタビュー記事(そういえば僕、もともとインタビュアーでした、苦笑)など、今まで以上に豊富なバリエーションで展開していこうと考えています。

この連載は、毎週水曜日の朝に更新される予定です。よかったら週に1回、同誌のWebサイトにアクセスして、ぽちっとクリックして記事をご覧になっていただけるとうれしいです。1月6日(水)からはザンスカールのチャダル・トレックについての連載を開始します。よろしくお願いします。

仕事始め

年末年始は、2泊3日で実家のある岡山に帰省した。母と妹一家とですき焼きを食べ、姪っ子に学校と部活の話を聞き、甥っ子1号と公園でサッカーをし、甥っ子2号は頭をピコピコハンマーで叩いて……あとはこたつで本を一冊読んだくらいか。大晦日もテレビはほとんど見ず、元旦は雑煮とおせちを食べて近所の神社に初詣に行き、昼過ぎ発の新幹線で東京に戻ってきた。

今朝は昼頃までゆっくり寝て、そこから仕事始め。BE-PALのサイト向けの原稿を1本仕上げる。今年からしばらくの間、BE-PALのサイトで週イチ連載を担当するので、今の時点で書ける原稿はできるだけ書き溜めておかないと、後で困ることになるからだ。今作っている本に関連する件で書かねばならない長めの原稿もあるし、週明けからはインタビュー取材の手配もいくつかしなければならない。連休明けには大事な打ち合わせもいくつかあるし、その後は2冊の本の編集作業が本格化する。1月末か2月頃には、沖縄取材も控えているし。

よっしゃ。とりあえず、できることから、がんばろ。

「書く」ということ

部屋で仕事。来年出す予定の本に収録するための原稿を書く。

しばらく前から準備していたこの原稿は、今年取り組んだ中でも、自分にとって一番大切な文章だ。今年だけじゃなく、ここ数年の間でも一番大切かもしれない。どんな文章にするかというイメージは、ずっと前から自分の中で思い描いていて、かなり具体的な形になっていた。でも、なかなか書きはじめられないでいた。少し怖かったのかもしれない。慎重に言葉を選び、自分の気持ちに重ね合わせ、これか、いや違う、と逡巡をくりかえしていた。

でも今日、その文章……たった3000文字ちょっとの長さだけれど、それを最後まで書き終えることができた。書いている間、自分でもびっくりするほどの集中力で、ありったけの気持ちを注ぎ込み、一文字ごとにもがきながら、必死になってキーボードを叩いていた。自分の中に魂みたいなものがあるとしたら、今日一日で、ごっそり削れてしまっただろうと思う。

そうしたら、本当に最後の数行の部分で、自分でも思っていなかったような言葉……たった六文字の言葉が、すっと浮かんできたのだ。その六文字が入ることで、すべてがぴったりと重なり合う。これで書ける、とようやく確信することができた。最後の一行まで書き終え、最初から読み直した時、バカみたいだけれど、ちょっと涙が出そうになった。

「書く」というのは、たぶん、こういうことなのだ。だから僕は、この仕事を続けているのだと思う。