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遠くを想う

先々週は5件、先週は7件、今週は8件。大学案件の取材ラッシュが、いよいよ佳境に突入してきた。今週の平日は木曜だけかろうじて空いていたので、みっちり原稿の執筆に使う予定だったのだが、ついさっき、そこも急な取材で埋まってしまった。原稿を書くのがなかなか追いつかない。翌朝に取材があるのに徹夜で書くわけにもいかないし。

机に向かっていて切羽詰まった気持になる時は、椅子の背もたれに身体を預けて、遠くのことを考える。澄んだ青い空。渇いた地面に咲く小さな花。風に揺れる黄金色の麦穂。懐かしい人たちの声。

「‥‥‥‥タカ! ずいぶんひさしぶりだねえ。しばらく来ないうちに、顔がなまっちろくなっちゃってるよ!」

僕には、もう一つの居場所がある。それは、とても恵まれた、幸せなことだと思う。

無粋な人

やたらに強い風が吹き荒れる日。取材のため、朝から電車に乗って、金町へ。

取材が終わった後、午後の別の場所での取材まで少し時間があったので、駅の近くでおひるを食べることにした。この界隈は餃子屋さんが多いらしく、その中でも一番老舗っぽい店へ。水餃子定食が460円。安いし、うまい。

僕がほふほふと水餃子を堪能していると、突然、店内に罵声が。

「入口のドアが開いてるから、埃がどんどん入ってきて、餃子も、ラーメンも、まずくなるんだよ!」

ふりかえると、カウンターで初老のおっさんが、腰の曲がった店のおばあさんをどやしつけている。同じことを、二度、三度、四度。おばあさんはさらに身を屈めて、入口の方に歩いていってドアを閉じた。なんというか‥‥ほんの2メートル、自分で入口まで歩いていって、黙ってドアを閉めればいいだけの話なのに。

おっさんがどうでもいいことをデカイ声でどなるから、みんなの餃子やラーメンがまずくなるんだよ。

夢の中で

朝、ラッシュアワーで混み合う電車でもまれながら、信濃町へ。時間制限のある取材をどうにかやり終え、また電車で三鷹に戻る。今日もいい天気だ。帰りにフレッシュネスでハンバーガーとコーヒー。

早起きしての朝イチ取材で眠かったので、家に着いてからベッドにもぐり込み、二時間ほど昼寝。

夢を見た。九官鳥の九ちゃん。パグ犬のペコ。祖母がいて、父がいる。しばらくして、ああ、彼らはみな、もういないのだと気付いて、目が覚めた。

静かだった。ぬくもりと、なつかしさと、かなしみと、あきらめがあった。

春はゆるゆる

今日はほんとによく晴れて、暖かな一日だった。昼から青葉台の方に取材に出かけたのだが、歩いてるとあちこちで桜がふわっと花開いているのが見えた。一気にほぼ満開まで進んだようだ。

駅からバスに乗り換えて移動している間も、通りがかった公園では大勢の人が芝生に座って弁当を食べたり寝転んだりしてるのが見えるし、窓から差し込む陽射しにあたってると身体がぽかぽかして、もう、ゆるゆる(苦笑)。緊迫感も何もない状態になってしまって、我ながら大丈夫かと思ったけど、取材はどうにかしゃきっとやり終えた。

帰りの電車の中では、春めいた服装の若い女の子たちが、椅子にもたれ、ぽかんと口を開けたまま寝入っていた。