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本づくり、佳境

午後、出版社で打ち合わせ。編集部内で目を通してもらった初校を受け取る。ところどころに付箋の挟まった分厚い紙の束を手にすると、よっしゃ、という気分になる。

表紙のカバーデザインもほぼ決まったし(とても格好いいデザインにしていただいた)、地図などの制作もおおむね順調だ。今回の本づくりも、いよいよ佳境にさしかかってきた。最後の最後まで油断は禁物だが、あと2カ月後くらいには、この本が現実世界に存在するものとして、書店の店頭に並ぶことになる。それを想像すると、何だか子供のようにわくわくしてくる。

今までにもそれなりの数の本を作ってきたけれど、こんな子供のような気分になるのは、ひさしぶりだ。「ラダックの風息」の時以来だろうか。それだけ、今度の本は、僕自身にとっても大切な本なのだと思う。

嘘は身を滅ぼす

嘘は、つくのも、つかれるのも、嫌いだ。嘘をつくことで物事がうまく運ぶなんてことは、まずない。せいぜいその場しのぎにしかならなくて、後になって嘘がばれたら、倍返しで酷いことになる。

去年、仕事で信頼していた人たちに、嘘をつかれた。彼らは僕の知らないところで、僕が何年も前からこつこつ積み重ねてきた仕事に直接ぶつかるようなことを仕組んでいた。第三者からその話を聞いて抗議すると、「その話は白紙に戻す」「人間関係を壊してまですることではない」とその人たちは言った。しかし、彼らはそれを白紙に戻したりせず、裏でこっそり準備を続けていた。僕を利用するだけ利用して、僕が彼らとの仕事を中止するなどして抗議することができないタイミングになって、すべてをひっくり返した。

思い返しても、つくづく、酷い話だ。

僕は彼らとの関係を断ち、別の会社とその仕事を継続することにした。それまでの仕事を通じて出会った大勢の顧客の方々とのつながりは、今も健在だ。同業者の友人たちとの関係も良好だと思う。

一方、僕に嘘をついていた人たちは、経費を差し引くとおそらくごく僅かであろう利益と引き換えに、僕の存在を介してつながっていた顧客の方々や、同じく僕を介してつながっていた関係者からの信頼を、ごっそり失った。どうして彼らは、あんなやり方をしたんだろう、と思う。その場しのぎの嘘をつき続け、ナアナアのなしくずしで乗り切ることなんて、できるわけがないのに。

だから僕は、嘘を、つくのも、つかれるのも、嫌いなのだ。

荒波越えて

先週は、かなりばたばたしていた。

水曜日、昼から御茶ノ水で記者会見の取材と撮影。帰宅してすぐに写真のセレクトと現像。木曜日、午前中から記事の執筆。写真データをサーバにアップしようとしたら謎のエラーが出て困惑。午後から渋谷で本のデザインや進行の打ち合わせ。帰宅して記事制作の続き。どうにか原稿と写真をアップして、編集部チェックに回す。

金曜日、朝から異様に頭が重い。たぶん眼精疲労系の頭痛で、あまりにもどよんどよんな状態だったので、相方を送り出してから、午前中ずっと寝込む。午後になっていくぶん持ち直して、夕方にカレーを自炊して食べる頃には、ほぼほぼ回復。しかしまあ、この程度の作業の詰まり具合で半日寝込むとは、無理が効かなくなったものだなあと思う。

そんなこんなで荒波越えて、超特急で書いた記事、「BE-PAL」のサイトにアップされてます。よしなに。

平和産業

今年の旅行業界は、かなり厳しい状況に陥ると思う。

理由は、例の新型肺炎だ。実際の危険性よりも、得体の知れない病が流行しているという情報の蔓延が、必要以上に人々の警戒心を煽っている。用心し過ぎるに越したことはないのだが、そういう警戒心によって、人々の行動の選択肢から真っ先に排除されていくものの一つが、旅行だと思う。

インバウンドもアウトバウンドも、旅行会社はすでに青息吐息の状態だろうし、新型肺炎が終息するまで(半年はかかるのでは)持ちこたえられない会社も出てくると思う。僕自身の仕事は旅行関係の書籍を作る仕事だが、ガイドブックを出している出版社は印刷部数を低めに設定し直すに違いないし、出版社に新刊の企画を持ち込んでも通しにくくなるだろう。影響は、僕や同業者にも少なからずある。

旅行業界は、結局、平和産業なのだ。政情不安やテロ、戦争、そして疫病の流行など、何かが起これば、もろに影響を受ける。その大波が静まるまで、僕らはじっと耐えて待つしかない。最近は、そういう大波の押し寄せる頻度が、ずいぶん増えてきているようにも思う。

まあ、こればっかりは、仕方がない。できる範囲で、がんばろ。

目と脳が限界

約11万字の草稿をゼロからタイプし直しつつ取り組んでいる、本の推敲作業。10日間ほどかけて、ようやく終盤に差し掛かってきた。

膨大な量のテキストをタイプしているとはいえ、指や肩肘の疲労はそんなにきつくない。ただ、目と、脳が、かなりしんどい。一字々々、猛烈に集中して画面を睨みつけながら、これでいいか悪いかを絶え間なくジャッジし続けてるわけだから、まあ、無理もない。それこそ、文中の読点の有無や場所とか、漢字かひらがなかの選択とか、こだわりはじめたら、推敲はもう、果てしないのである。

昨日はとうとう、目と脳の疲労が限界に達した。朝起きた時から、視神経とその先につながる脳みその芯の部分が、ぼわーんとぼやけるような感じで、もう、どうにもならないくらいに疲れ切っていた。午前中に少し作業を進めてみたものの、まったく効率が上がらなくて、一時間半ほど仮眠。それでもすっきりしないので、夜は風呂から出てすぐに、布団に入って寝てしまった。

眠りに眠り続けて、約十二時間。おかげで今日は、だいぶましになって、普通に作業に戻ることができた。こんな風にして、おっさんが一人でヒイコラゼーハー言いながら作ってる新しい本、たぶん4月下旬頃に発売です。よろしく。