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飛行機雲

雲一つない青空。暖かくて気持のいい日和。コットンセーターにジージャンを羽織って、外に出かける。

午後、赤坂へ。懸案の本の企画について、編集者さんと打ち合わせ。企画のコンセプトを外すことなく、より実現の可能性が高い方向で検討を進めていくことで合意。先行きが不透明なことが多い世の中だけど、僕たちは、いい本を作る準備を整えることに集中する。今は、それがベストの選択肢なのだと思う。

三鷹駅から家まで歩いて帰る途中、ふと見上げると、茜色の空に、輝くひとすじの飛行機雲が伸びていくのが見えた。まるで、空をスパッとナイフで裂いたかのように。

台割を作る

終日、部屋で仕事。懸案の本の企画を実現させるため、台割の検討を進める。

台割とは、本のどのページにどんな内容が入るのか、最初から最後まで割り当てる、本全体の設計図のようなものだ。普通は、ある程度原稿を書き進めてから台割の策定に入るのだが、今回はちょっと特殊な事情があって、既存のフォーマットにできるだけ近い形に構成をあてはめた案も用意しておく必要が出てきた。なので、「1ページ目は総扉で、2、3ページ目はグラビアのイントロダクションで‥‥」といった具合に、ひたすらゴリゴリと検討を重ねていく。

こういう台割を作る作業、僕は大好きだ。頭の中で好きなように本のカタチを思い浮かべられるのは、編集の仕事の醍醐味の一つなんじゃないかと思う。考えているうちにどんどん楽しくなって、時間が過ぎるのを忘れる。

気がつけば、すっかり夜だった。

強く思う気持

今日は一日中、メールやら電話やらでの連絡業務に追われた。いろいろな案件が、同時進行で進んでいる。

その中でも、ここまで順調に準備が進んでいたものの、震災の影響で頓挫している企画がある。取材を伴うこともあって、ちょっと難しい判断を迫られているのだが、担当編集者さんとやりとりしている時、こんな風に書かれていたメールにぐっときた。

「山本さんが、“こんな本があったらいい! こういうのを作りたい!”と強く思う気持が、実現への一番の力になります。“欲しいものを作る”というのが、モノ作りの原点です」

そうなのだ。青臭い言い方かもしれないけど、情熱を注ぎ込んで、やり遂げてやろうと強く思う気持こそが、今のような困難な状況を打開する一番の原動力なのだと思う。自分が提案した企画に対して、こんな風に侠気を見せて協力してもらえることほど、心強いことはない。

燃えてきた。必ず、いい本にしてみせる。

自分にできる仕事

計画停電が始まってからというもの、「今日は何時から停電になるんだろ?」と調べてから一日の行動計画を練っている。時間が制限されているせいか、普段より集中力が増して、妙に仕事がはかどる(苦笑)。今、自分が担当している分の執筆は、あらかたメドがついた感じ。このまま編集作業もうまく進んで、予定通りのスケジュールで校了できればいいのだが。

‥‥わかっている。今、自分がこうして本を作ったところで、被災地にいる人々の飢えや寒さを癒すどころか、不安を紛らすことさえしてあげられない。本当にくやしい。それでもいつか、何かの形で、ほんの幾許かでも支えにしてもらえたら、と思わずにいられない。今は、目の前にある仕事を、一つひとつ、やっていくしかない。

震災の後遺症で、日本中が内向き後ろ向きになって、出版業界もしばらくは厳しくなるだろう。でも、いつか、みんなが再び立ち上がって前を向こうとした時、手に取って読んでもらえる本があるように、今から新しい本を作る準備をしていく。それが、今の自分にできる仕事。

マイペースで

今日もずいぶん寒い。終日、部屋に籠って仕事。

今取り組んでいる本の作業は、自分の担当分についてはゴールが見えてきていて、そう焦らなくても予定通りに進められそうな気配になってきた。その後の編集作業は、ひたすらゴリゴリと進めればいいわけだし。

ただ、去年からオファーを受けて、年明けから取りかかれるように待ち構えていた官公庁関連の仕事については、未だにこちらまで回ってくる気配がない。たぶん、作業に取りかかれるとしても、四月以降になりそう。仲介してくれている編集プロダクションの方も「申し訳ないです」と謝ってくださっているのだが、問題は別の場所にあるとわかっているので(苦笑)、僕は別に気にしていない。

働こうと思えば日曜でも働けるし、休もうと思えば平日でも休める。マイペースで働けるという意味では、フリーランスというのは恵まれた勤務形態なのかもしれない。まあ、そんなに儲かる職業でもないし、あんまり好き勝手に休んでると、仕事が来なくなってしまうんだけど(笑)。

フリーランスなりのよさを噛みしめつつ、これからも、マイペースで、ぼちぼちと。