Tag: Travel

キリンを撮る

この間の南アフリカ取材では、ピーランスバーグ国立公園で大小いろんな種類の野生動物の写真を撮った。何しろ相手は動物なので、簡単に撮れるようなことはほとんどなく、いつも右往左往しながら連写を重ねて、当たりが混じるように祈るような撮り方しかできなかった。

たとえば、ゾウのように図体の大きな動物なら、ある程度距離が近ければいくらでも好きなように撮れると思いがちだが、納得のいく表情の写真を撮ろうとすると、ゾウはなかなか手ごわい。長い鼻がしょっちゅうくるんくるん動くので、中途半端にフレームから外れたり、しっくりこない形になったりしてしまう。

一番苦労させられたのは、キリンだった。背の高い草食動物ならではの警戒心の強さもあるが、いざ撮れそうな位置にポジショニングできても、あの長い首はものすごく厄介だ。右に左にゆらゆら傾いて、顔にフォーカスを合わせてもすぐに外れてしまったり、首の先だけひょいとフレームアウトしてしまったりする。あれには本当にあたふたさせられた。

動物撮影の経験値を積むのには確かにいい機会だったけど、あの分野の奥の深さを思い知らされたのも確か。ネイチャーフォトグラファーの人たちって大変だ、ほんとに。

Wi-Fiの呪縛

帰国してからというもの、連休とかまったく関係なく、日々仕事に追われる。来年春に出す新しい本の打ち合わせ。南アフリカで撮った写真のセレクトと現像、そして原稿の執筆‥‥。来週明けには別の仕事の打ち合わせが立て続けに。そして再来週の月曜日からは、毎年恒例、約4週間のタイ取材だ。

ここ数年、タイのような観光の盛んな国はもちろん、ラダックのような辺境の地でも、宿でWi-Fiにつないでネットが使える時代になった(停電したり、上位回線が頻繁に落ちたりするけど)。一昔前は「いや〜、何しろラダックなんで、ネットにつなぐ必要のある仕事はできないですね〜」と言い訳することもできたのだが、もはやその手は通じなくなりつつある。

なので、僕もついに重い腰を上げて、海外取材用にMacBook Air 11インチを導入することにした。長期取材時には撮影済みデータを外付ハードディスクにバックアップするのにも使うので、USB-Cポートが一つしかないMacBookではなく、枯れた仕様のMacBook Airを選んだ。この僕ごときが、あろうことかMacの2台体制である。

こういう体制にしてしまうと、旅先でもむやみに忙しくなってしまうんだろうなあ‥‥宿で寝る暇もなくなるかも‥‥Wi-Fiの呪縛、恐るべし。

カビとの戦い

海外取材で家をしばらく留守にする時、一番神経を使うのが、カビ対策。

今住んでいるのはマンションの一階なので、普通に暮らしていても革製品などをやられることがあるのだが、海外に出かけると、場合によっては数カ月も部屋を閉め切ったままにするので、何の対策もしないでいると、本当に恐ろしいことになる(汗)。なので、出発前にはベッドシーツなどをすべて洗濯し、除湿剤を各所にセットし、クローゼットは閉め切らず、靴や革製品はなるべく湿気の少なそうな広めの場所に置く。そうしたカビ防止策の準備にも、それなりに慣れてきたと思っていた。

しかし、今年の夏は手強かった。猛烈に暑い日々が続いた後、僕が帰国する頃から毎日のように雨。部屋に戻ってみるとむわっとした湿気がたまりにたまっていて、革ベルトが2本、枕カバーが1枚、それから今年初めまで使っていた古いカメラバッグの外側がカビにやられていた。ベルトはカビを落とした後にエタノールで除菌し、枕カバーもしっかり洗濯したが、カメラやレンズにはカビが大敵なので、カメラバッグはどうにもならない。廃棄するしかなさそうだ。

嗚呼、湿気の少ない部屋に引っ越したい(苦笑)。

自然の掟

zebra
10日間の南アフリカでの取材を終え、昨日の夜、日本に帰ってきた。

プレスツアー特有の窮屈さと時間のなさはあったものの、初めて訪れたアフリカ最南端の国での日々は、確かに得難い体験だった。特に旅の終盤、ピーランスバーグ国立公園で野生動物の姿を追いかけた二日間は、自分にとって良い経験になったと思う。

ジープで原野を走っている時、写真ではまともに撮れないほどはるか彼方を、ライオンの群れが獲物を追って全速力で駆けている姿を見た。別の場所では、ずっと以前に息絶えた後、ジャッカルやハイエナに肉も骨も食べ尽くされ、皮だけになったキリンの亡骸を見た。そこは動物園などではなく、命のやりとりが日々当たり前のように行われている自然の中なのだということ。そうした自然の掟が支配する中では、一人の人間は本当にちっぽけで無力な存在でしかないことを、身をもって感じた。

あの大陸の大地を、いつかまた、踏みしめる日が来るのかもしれない。

一時帰宅の終わり

先週インドから日本に戻ってきて、合計3社からの仕事の〆切をどうにかこうにかクリアし、ほっとしたのもつかの間、日曜からはまた旅に出る。南アフリカへのプレスツアー取材に10日間。あっという間に一時帰宅の期間が終わってしまった。

この間、大学案件の主任さんから「何だかもう、一年の半分くらいは海外で生活してるみたいな感じですね」というメールを受け取ったのだが、いやいやさすがにそこまでは、と今年の海外滞在日数を計算してみたら、10月からのタイ取材の分を含めると3カ月半に達することに気付いて、ちょっと愕然とした。半年なんてそんなまさか、みたいに言えるほどの差はない。

来年も仕事でインドとタイに行くことはほぼ確定しているし、個人的にはアラスカもまた組み込みたいと思っているので、日数的には今年と同じかそれ以上になるかもしれない。こうなってくると、日本での仕事の種類の割合とか、タイミングの調整とか、いろいろ見直した方がいい面も出てくる。何より、自分自身がどういう方向に進んでいきたいのか、もう一度ちゃんと考えた方がいいような気がしている。

ともあれ、まずは南アフリカへ。ライオンやチーターやワニのおやつにならないように気をつけます。帰国は9月16日(水)夜の予定です。では。