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京都一泊二日

恵文社一乗寺店で開催されるトークイベントに出演するため、土日の一泊二日で、京都に行ってきた。

恵文社一乗寺店は本当にうっとりするほど素晴らしい本屋さんで、店内をぶらぶらするだけでも、何時間でも過ごせそうな気がした。イベント会場の雰囲気もすごくよくて、あんな場所で大勢のお客さんを前に話をさせてもらえたのは、本当にいい経験になったと思う。

イベントの後は関係者の方々と近くで打ち上げをし、夜半前に、あらかじめ予約しておいた四条のホテルへ。何の変哲もないシングルルームだったが、よく眠れた。

で、今日はお昼前から京都市内のその他の本屋さんを何カ所か回った。誠光社では店長の堀部さんがご不在だったのが残念だったが、店内で棚を眺めているだけで、何かもう胸がいっぱいになってしまうほど幸せな気分になれた。そこからホホホ座、善行堂と、ちょっと蒸し暑い中をてくてく歩いて回った。行く先々で買った本で、ボストンバッグはどんどん重くなっていった。

おひるはイノダコーヒー本店へ。風情のある旧館の窓辺のソファ席に通してもらえた。一番深煎りのジャーマンブレンドと、ビーフカツサンド。このビーフカツサンドがめっちゃうまくて、もしかしたら自分史上過去最高のサンドイッチかもしれない。高かったけど、その価値はある。

気分もおなかもすっかり満足して、修学旅行生でごったがえす駅の近くで自分みやげに黒七味を買い、帰りの新幹線に乗った。小さな旅だったけれど、いい旅だった。

写真展「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」@横浜


3月末から5月末まで、三鷹で開催していた写真展「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」を、6月中旬から約2週間、横浜中華街の「旅カフェ&バル Short Trip ショートトリップ」で開催させていただくことになりました。店内の構造と会期を考慮して、三鷹の展示での前期と後期の内容を合わせて再構成した展示にします。「ラダックの風息[新装版]」に未収録エピソードの小冊子と新旧表紙写真のポストカード2種をセットにした「ラダックの風息[新装版]限定特典セット」の販売も行います。横浜方面の方々、そして三鷹での展示を見逃したという方、ぜひお越しください。

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山本高樹 写真展
「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」

インド北部、ヒマラヤの西外れにひっそりと息づくチベット文化圏、ラダック、ザンスカール、スピティ。この地をずっと見守り続けてきた「ラダックの風息[新装版]」の著者、山本高樹による最新写真展。空果つる地を吹き抜ける、風息の行方を辿る旅へ。

期間:2016年6月14日(火)〜6月29日(水)
会場:旅カフェ&バル Short Trip ショートトリップ
神奈川県横浜市中区山下町214 RIビル2F
TEL&FAX 045-641-6950 http://shorttrip.info
時間:14:00〜23:00
定休:月曜日
料金:無料(会場が飲食店なので、1品以上のオーダーをお願いします)

※会場では山本高樹の最新刊「ラダックの風息[新装版]」に部数限定の小冊子「未収録エピソード」とポストカード2種をセットにした「ラダックの風息[新装版]限定特典セット」の販売も行います。

幸福の国から

yamamoto写真は、ティンプー郊外の丘の上にて。気づかないうちに、中田浩資さんに撮影していただいていた。

昨日の夜、約1週間のブータンでの取材から日本に戻ってきた。乾燥と土埃でうっかり喉と鼻をやられてしまい、帰国便のディレイなどもあって疲れてはいるが、まあどうにか。

ブータンという国は……自分自身でどう受け止めればいいのか、予想以上に戸惑いを感じた国だった。インドと中国の間にある、幸福を旗印に掲げた小さな国。それゆえのひずみや矛盾もそこかしこに見え隠れする。それをわかっていながら、「穏やかな国、優しい人々」という安直なアプローチであっさり片付けてしまいたくはないな、と思った。

写真についても迷ったし、悩んだ。ブータンを訪れた旅行者の誰もが「写真が撮りやすい国」だと言う。確かにみんな人当たりがよくて、いきなり無造作にカメラを向ける人にも愛想よく笑ってくれるから、撮ろうと思えば誰でもそれなりの写真が撮れてしまう。でも、「だから何?」となってしまう。少なくとも僕自身の場合は、そこからさらに考え、被写体(人も、風景も)と向き合い、撮るまでの過程を丁寧に、大切にしなければ、違いと深みを作れないと感じた。短い滞在期間と限られた単独行動時間の中ではそれは非常に難しくて、自分で納得のできる写真はごくわずかしか撮れなかった。

いろいろ考えさせられることの多い旅だったけど、自分自身の立ち位置と考え方を再確認できた旅でもあった気がする。ブータン……また戻ることはあるのかな。辺境の土着の聖地巡りか、あるいはスノーマン・トレックか……そうなるべき時が来たら、そうなるのかもしれない。

幸福の国へ

昨日と今日の二日間、大学案件で計6件の取材。いいかげん脳みそがへちまの中身みたいになりそうだが、その原稿をろくに書く時間もないまま、明日から約1週間、ブータンに行く。

今回の取材は、数名の写真家さんたちと行く撮影中心のツアーのような形。現地では短期間ながらも割と自由に行動できるのだが、ここしばらく、ずっと書き仕事ばかりだったから、カメラを扱う勘が鈍ってやしないかと心配だ(苦笑)。あまりにも直前まで仕事がぎっちりで、帰ってからもぎっちり待ち構えてるので、気持もなかなか切り替わらない。それでもまあ、何とかするしかないし、何とかなるだろうけど。

日本では、「幸せの国」というわかりやすすぎるラベリングで語られてしまうことの多いブータン。実際に訪ねたら、どんな国なんだろう。自分の目と耳と鼻と、それから舌で(辛いんだろうな、エマダツィ)確かめてみるのが、一番間違いない気がする。

帰国は6月7日(火)の予定です。では、いってきます。

「会う」ということ

3月末から展示を続けていた、リトスタでのラダック写真展。約2カ月間の会期も、明日でついに最終日。始める前は長い長いと思っていたが、ふりかえってみると、本当にあっという間だった。

今回の写真展は、自分自身にとって、ひときわ記憶に残る展示になった。「ラダックの風息[新装版]」という思い入れの強い一冊の刊行に合わせての展示だったこともあるが、今回は仕事の合間をぬって可能なかぎり会場に在廊するようにしたことが、とても大きかったと思う。実際、僕が会場にいることをSNSで知った上で訪ねてきてくれた方や、あるいは知らずに偶然訪れて、僕と話をしたことで俄然興味を深めてくれた方も少なくなかった。

誰かに「会う」ということは、その人に対する興味や思い入れの度合いをぐっと深める、またとないきっかけになりうるのだと最近思う。もちろん、会ってみて幻滅したというパターンもあるかもしれないが(苦笑)、写真展の在廊やトークイベントへの出演というのは、そういう出会いの場を作る貴重な機会なのだと実感している。僕にとっても、そうしていろんな人にお会いして話をすることでフィードバックしてもらえる思いというのは、本当にかけがえのない、大切なものだ。

写真展最終日、気持ちを引き締めて、行ってこようと思う。