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憧れた旅

終日、部屋で仕事。一昨日リアルタイムでは聴けなかった、沢木耕太郎さんの年に一度のラジオ番組「MIDNIGHT EXPRESS 天涯へ 2016」を聴きながら作業をする。

今年の沢木さんの話は、ひときわ面白かった。ついこの間まで沢木さんが出かけていた東南アジアの旅の話を、とても軽快に、楽しそうに話されていたからだと思う。サイゴンやアンコール・ワット、シーパンドンの話を聴きながら、僕はぼんやりと、あることについて考えていた。

僕が沢木さんの「深夜特急」を初めて読んだのは、大学生の頃。まだ一歩も日本から踏み出したことのなかった僕は、本を読んで、驚き、あきれ、そして憧れた。その後しばらくして大学を自主休学し、シベリア鉄道でロシアを抜けてヨーロッパを目指す旅をしたのも、その旅の体験を文章で書こうとしたのも、間違いなく沢木さんの旅への憧れからだったし、僕なりの模倣だったと思う。

それから大学を卒業し、書くことを生業にしようとあがき続け、時にまた旅に出て、といったことをくりかえしているうちに……いつのまにか僕は、ほかの誰の旅にも似ていない、僕の旅としか言いようのない旅をするようになっていた。誰にも似ていない文章を書くようになり、写真まで自分で撮るようになった。僕の旅そのものが、僕の仕事の一部になった。

実績の面では、沢木さんの足元にもはるかに及ばないし、今後も追いつくことはまずありえない。でも、沢木さんが今も沢木さんらしい旅を続けてらっしゃるように、僕も僕なりの旅を続けていけたら、とは思う。僕の旅から生まれた文章と写真の評価は、読者の方々に委ねるしかないけれど、もし、僕の本を読んで「自分も旅をしてみようかな」と思ってくれる人がほんの少しでもいてくれたとしたら、こんな嬉しいことはない。

そのための戦いは、これからも、ずっと続いていく。

本にできること

昼、渋谷で打ち合わせ。ネパール料理屋でダルバートをいただきながらのランチミーティング。

「僕、大学生の時に、ヤマモトさんの本を読んでたんですよ。登戸の本屋さんに並んでたのを見つけて、普通に買って読ませていただいてました」と言われ、びっくりするやら、恐縮するやら。それと同時に、もうそんなに歳月が過ぎたのか、とも思う。「ラダックの風息」の初版を出してから、気がつくと7年の歳月が過ぎていた。

僕の知らないところで、誰かの家の本棚に、どこかの図書館の片隅に、僕の作った本がある。誰かの人生に、本当にほんのちょっとだけかもしれないけど、何かを残す。そうなっていたとしたら、とても嬉しいことだ。それは、本だからこそ、できることなのだとも思う。

「旅の本を作るという仕事」について、来年の早い時期に、人前で話をさせていただくことになりそう。本決まりになったら、よろしくお願いします。

旅の日々と日常の日々

今年もまあ、それなりにいろんな場所に旅をした。沖縄、ブータン、ラダック、アラスカ、タイ。さっき電卓で計算してみたら、旅に出ていた日数は合計で80日。2カ月半ちょいといったところか。夏から秋にかけては行ったり来たりのくりかえしだったので、日数以上にせわしなかった印象はあるけれど。

まだ完全に確定してはいないのだが、来年は、インドにたぶん丸2カ月。毎年恒例となってきたタイにも約4週間、行くことになると思う。この時点ですでに今年より不在期間が多いという(苦笑)。それ以外にも、短期ではあるけど、個人的な取材ではアラスカとか、仕事の取材としても1、2カ所、別の場所に行くかもしれない。先が思いやられる展開である。

旅の日々と、日常の日々。僕はどちらの時間も好きだ。カメラを手に、たった一人で異国の空気に身を浸している時間も好きだし、東京の自分の部屋でコーヒーを飲んだり、気のおけない人たちと酒を酌み交わしたりする時間も好きだ。ただ、旅に出れば、どこかで何かしら、自分から人に伝える価値のあることをインプットさせてもらえる。ある意味それが今の自分の仕事というか、役割になっている。だから僕は旅に出るのかなとも思う。

自分が旅というものを仕事の主戦場にするようになるなんて、10年前には想像すらしていなかった。コストパフォーマンスを考えると、あまり賢い選択だったとは思えないけど(苦笑)、とりあえず、力が尽き果ててどうにもならなくなるまでは、やり続けてみようと思っている。

孤独の意味

「誰もいない原野の真っ只中で、たった一人でいることが、嬉しくて、嬉しくて、仕方なかった」

20年以上前、ある人が、ある人と、ある人について話した言葉。当時、それを耳にした僕は、その意味がまったく理解できなかった。でも、今はたぶん、ほんの少しだけ、その真の意味が理解できるような気がしている。

危険をかえりみずに冒険をしたことを後で人に自慢しようとか、そんな薄っぺらい気持では断じてない。他の人間と関わるのが嫌で一人になりたかったというのとも違う。たった一人で、誰もいない原野にいる。でも、つらくはないし、寂しくもない。完全な孤独の中に身を置くからこそ、理解できる感覚。世界のすべての存在の中で、自分はそのほんの一部分に過ぎないということ。

あの感覚を、人に説明するのは、とても難しい。

研修修了

総合旅程管理研修、最終日の3日目。昨日までは旅行業法や約款、国内添乗実務(バスツアーとか)についての講習だったが、今日は海外添乗実務と英語。昨日までよりは(実体験に基づく)知識のある分野だったので、個人的には3日間の中で一番やりやすかった。

夕方に講習が終わった後、最後の試験にも無事合格。まあ、今日受講した人は全員合格するくらいユルい難易度の試験なのだが(笑)。これで万一落っこちたら赤っ恥だぞ、と逆に変なプレッシャーがかかったほどだった。基本的に、3日間居眠りせずに講習を受けていれば、普通に合格できると思う。

ともあれ、これにて総合旅程管理研修を無事修了し、総合旅程管理主任者、つまり国内外のツアーで主任添乗員になるための資格を得ることができた。添乗員とガイドの仕事は別物なので、資格がなくてもラダックでガイドを務めるのに不都合はないのだが、より万全な体制で(インドビザも含めて)取り組めるようになったとは思う。なので、来年から、新たな気持ちでがんばります。