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もしも明日人生が終わるとしたら

飲み会の席で、こんなことを訊かれた。

「もしも明日人生が終わるとしたら、最後の日、何をしたいですか?」

さて、何をしよう‥‥と考えてみると、意外なほどすんなりと、自分の場合はこれだな、という答えが出た。

その時点で手元にある、未発表の写真や文章。それを残された24時間(せめてそのくらいの時間はもらいたい)を使って、できるだけ選んで整理して、何らかの形で発表できるようにまとめる。最低限の準備しかできないだろうけど、まあそれは仕方ない。まとめた素材は、信頼できる人に「すみませんが、これをお願いします」と託す。

その後、もし時間が少し残っていたら、ビールを飲みながら何かおいしいものが食べたい。営業時間内だったら、リトスタがいいな。家から近いし。飲み食いし終えたら、家に帰って、まあこんなものかな、と思いながら、その時を待つ。

「そうして発表されたものが読者にどんな風に受け取られるか、知ることができなくてもいいんですか?」と訊かれた。反応を知る時間がないのは確かに残念だけど、褒めてもらうのが目的ではないから。伝えられれば、それでいい。

実際に、そんな風に終えられたら、いいかもな、と思う。

取材抜きの旅

この間のトークイベントの打ち上げの席で、「取材を抜きにして、世界のどこへでも旅に行けるとしたら、どこに行きたいですか?」と訊かれた。

ふりかえってみれば、たぶんここ10年くらいの間、完全に取材を抜きにして海外を旅したことは、一度もなかったと思う。依頼される形での旅はもちろん、完全に個人的な動機からの旅でも、目的は取材だった。現地を旅しながら、写真を撮り、細かくメモを取り、日本に戻ってから何らかの形でまとめて発表する。本や雑誌、Webサイト、写真展、トークイベント。いつのまにか、取材をしながら旅をすることが、当たり前のようになっていた。

取材とか仕事とか、いっさい抜きにして、旅に出る。それは気楽で楽しいかもしれない‥‥と思いかけて、はたと気付いた。今の僕にとって、取材をいっさいしない旅というのは、とても居心地の悪い、つまらない時間になってしまうだろうということに。

旅をしながら、見て、聞いて、感じて、撮って、書いて、それを誰かに伝える。そういうことをひっくるめた全部が、僕にとっての旅なのだと思う。

道しるべ

昨日はモンベル御徒町店で、写真家の関健作さんとのトークイベント。昼に会場入りして、椅子やプロジェクターの設営と、書籍販売の準備。会場はほぼ満席。いざ本番……となると、毎度のことながら緊張して、何をしゃべったかあまり覚えてない(苦笑)。関さんの軽妙なトークに助けてもらいながら、どうにかこうにか乗り切った。

終了後は希望者の型に本へのサインなどをさせていただいて、その後はあたふたと撤収作業をして、曙橋へ移動。チベットレストランタシデレでの懇親会。こちらも満席で、みなさん楽しそうに歓談されていて、良かった。しかしまあ、自分で企画しておいて何だが、イベントからサイン対応から懇親会まで、全部ひとつながりのイベントみたいなもので、気を抜く暇がまったくなかったから、さすがに、こてんぱんに疲れた。

お客さんにも、いろんな人がいる。気軽に足を運んでもらってワイワイ楽しんでもらうのも、もちろん嬉しい。自身も写真や文章に携わっていて、何かのヒントをつかみ取ろうとしている人も、もちろん歓迎。時には、何かで思い悩んでいて、心の深いところから取り出してきた質問を投げかけてくる人もいる。そういう質問には、こちらも真剣に応えなければいけない。

僕らが生きてきた中でたくわえてきたものが、誰かが生きていくための道しるべになるのかもしれないなら、喜んで差し出そうと思う。いつかまた、こういう機会があれば。

春、夏、秋、冬、ぬかるみ

この間、アラスカで滞在したロッジで、オーナー一家の若夫婦が、アラスカの四季の移り変わりについて、こんなことを話してくれた。

「ここでは、4月と5月は雪解けでそこら中がぬかるんでしまって、大変なんだ。どこに移動するにも苦労する。スノーモービルは使えなくなるし、水上飛行機を使おうにも湖面には氷が残ってる。そういう時期が過ぎて、僕らの感覚では、6月が春。7月が夏。8月が秋」

「……あとは全部、冬なんだね(笑)。一番好きなのはどの季節?」

「それはものすごく難しい質問だなあ……。どの季節も、毎日、違う表情がある。年によっても全然違う。だから、全然飽きないんだよ」

アラスカの原野で、日々を生きていくことの、厳しさと愉しさ。朗らかに笑いながら話してくれる彼らが、本当に羨ましかった。

強行軍

今回のアラスカへの旅は、現地から日本に戻ってくるまでが、かなりの強行軍だった。

現地時間の12日、宿泊先からヘリ(!)でタルキートナへ。地ビールのブリュワリーのパブで飲みつつMacをWi-Fiにつないで少し仕事をし、列車に乗って3時間かけてアンカレッジへ。駅からタクシーを拾って空港へ。ターミナル内の地ビールのパブでまた飲みながら(苦笑)少し仕事をして、夜半過ぎのフライトで、明け方、シアトルへ。空港内のフードコートの片隅で、スタバのコーヒー飲んだり、サーモン&チップスを食べたりしながら、Wi-Fiにつないでちまちまと仕事。昼過ぎのフライトで約10時間かけて成田へ。着いたのは日本時間で14日の夕方だった。

で、翌15日は朝6時起きで、午前と午後に八王子方面で取材。昨日も国立で取材。気を張っていたからそこまでしんどくもなかったが、今日は気が抜けたのか、ぐったりとまではいかないものの、身体がだるく感じた。眠くないのに眠いという、よくわからない状態。

まあでも、アラスカの地ビールは、うまかった。