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春、夏、秋、冬、ぬかるみ

この間、アラスカで滞在したロッジで、オーナー一家の若夫婦が、アラスカの四季の移り変わりについて、こんなことを話してくれた。

「ここでは、4月と5月は雪解けでそこら中がぬかるんでしまって、大変なんだ。どこに移動するにも苦労する。スノーモービルは使えなくなるし、水上飛行機を使おうにも湖面には氷が残ってる。そういう時期が過ぎて、僕らの感覚では、6月が春。7月が夏。8月が秋」

「……あとは全部、冬なんだね(笑)。一番好きなのはどの季節?」

「それはものすごく難しい質問だなあ……。どの季節も、毎日、違う表情がある。年によっても全然違う。だから、全然飽きないんだよ」

アラスカの原野で、日々を生きていくことの、厳しさと愉しさ。朗らかに笑いながら話してくれる彼らが、本当に羨ましかった。

強行軍

今回のアラスカへの旅は、現地から日本に戻ってくるまでが、かなりの強行軍だった。

現地時間の12日、宿泊先からヘリ(!)でタルキートナへ。地ビールのブリュワリーのパブで飲みつつMacをWi-Fiにつないで少し仕事をし、列車に乗って3時間かけてアンカレッジへ。駅からタクシーを拾って空港へ。ターミナル内の地ビールのパブでまた飲みながら(苦笑)少し仕事をして、夜半過ぎのフライトで、明け方、シアトルへ。空港内のフードコートの片隅で、スタバのコーヒー飲んだり、サーモン&チップスを食べたりしながら、Wi-Fiにつないでちまちまと仕事。昼過ぎのフライトで約10時間かけて成田へ。着いたのは日本時間で14日の夕方だった。

で、翌15日は朝6時起きで、午前と午後に八王子方面で取材。昨日も国立で取材。気を張っていたからそこまでしんどくもなかったが、今日は気が抜けたのか、ぐったりとまではいかないものの、身体がだるく感じた。眠くないのに眠いという、よくわからない状態。

まあでも、アラスカの地ビールは、うまかった。

Sounds good

個人の取材旅行でアラスカ、つまりアメリカに行くのもこの間で3回目。だからというわけでもないが、「アメリカ人、妙にこれをよく使うな〜」と感じる言い回しがあるのに気付いた。それは、「Sounds good」。相手が何かを選んだりした時に相槌を打つ感じで「いいねえ」と言う時の言い方だ。

たとえば、レストランやカフェで何かを注文した時、ホールスタッフはよく「Sounds good」と言う。店で何かを買った時、列車の車掌に行き先を聞かれた時、飛行機でCAに機内食はビーフかチキンかを答えた時でさえ、みんなほんとによく使う。英語圏の人ならではの、ちょっとこなれた言い回しなのかもしれない。

というのも、僕が主に旅をしているインドやアジア諸国では、こんな言い回しをされた記憶がさっぱりないからだ。英語が超堪能なスタッフのいる高級ホテルとかなら通じるのかもしれないが、そんなとこには縁はないし。

そういえばちょっと昔、レーのツーリスト向けカフェでブレックファストを注文しようとして、卵の焼き方を聞かれて「Sunny-side up」と答えたら、ネパール人のホールスタッフには1ミリも通じなかった(苦笑)。英語のこなれた言い回しを知っていても、何の役に立たない場所は、世界にまだまだたくさんある。

命の在り処


昨日の夕方、アラスカからシアトル経由で日本に戻ってきた。

冬のアラスカを訪れたのは初めてだったが、思い切って行ってみて、本当によかったと思う。実際に行ってみなければ絶対に感じ取ることのできないものが、あの場所にはあった。冷え切った風に晒されているだけで身の危険を感じるほどの雪と氷の世界。でも、いや、だからこそ、そこには無数の命が潜んでいるのだとわかった。

アラスカでの旅の時間を積み重ねながら、自分が書こうとしているもの、伝えようとしていることの輪郭が、ほんの少しずつ、見えてきたような気がする。それがどこに行き着くのかは、まだ、自分でもまったくわからないのだけれど。

Into the Wilderness

明日から約1週間、再びアラスカに行く。

明日の夕方発の飛行機に乗り、シアトル経由でアンカレジへ。翌朝、鉄道に乗ってタルキートナという小さな町まで行き、そこからセスナに短時間乗せてもらって、原野のど真ん中にある湖に着氷(湖面は凍結しているから)。湖のほとりにあるロッジに数日間滞在し、スノーシューを借りて周辺を歩き回り、写真を撮る。

楽しみではあるのだけれど、同じかそれ以上に、怖い、という気持がある。半年前、南東アラスカのクルーゾフ島で味わった、あのぞわぞわするような感覚が、また甦ってくる。答えの見えない真っ暗な淵に佇み、飛び込むかどうか、逡巡するような……。いや、自分でもわかっている。飛び込むしかないのだ。たとえ結果がどうなろうとも。

帰国は14日(火)夜の予定。では。