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灼熱からの帰還

昨日の朝、予定通りの便で、タイから東京に戻ってきた。

今年のタイ取材は、出発の時こそ台風で波乱含みのスタートだったが、現地に着いてみると、最初のチェンラーイでの2日間と、後半のカンチャナブリーでの2日間、そして最後のバンコクでの短時間の気まぐれなスコールを除いて、まったく雨に降られなかった。過去5回の取材をふりかえっても、こんな年は本当に珍しい。

まあ、雨が降らないということは、取材中も毎日ずっとカンカン照りの中を歩き回ったり自転車を漕いだりしないといけないわけで、案の定、顔や手足の露出してる部分の皮膚は、自分でも鏡を見て引くくらいの黒焦げ。結構まめに日焼け止めを塗っていたのだが、灼熱の太陽はまったく容赦してくれなかった。取材中も、行く先々で現地のタイの人に「暑いのに大変ですねえ。水、飲みます?」と気の毒がられてたし(苦笑)。

そんな暑い中での連日の取材なので、例年だと、タイから戻ってくると身体が重だるくて、ダメージが抜けるのに1週間くらいはかかってたのだが、実は今年はそこまでダメージが蓄積していない。それはなぜか、という件については、次のエントリーで。

チャーミー接近

昼、町田へ。前々から依頼されていた、町田市立国際版画美術館で開催中のヨルク・シュマイサー展の会場で、ラダックについてのギャラリートーク。あいにくの雨だし、場所も町田の駅から結構離れたところなので、人はあまり集まらないかなと思っていたのだが、思いの外、大勢の方々にお越しいただいた。今年の夏のツアーのお客さんもお二人来てくださったし、本の読者の方も何人かいらしてくださって、ありがたいことだなあ、と思う。ともあれ、出発前の外での仕事は、これで片付いた。

そう、来週月曜から約4週間、恒例のタイ取材が始まる。やっと東京も涼しくなってきたというのに、僕だけ夏に逆戻り(苦笑)。まあ仕事は仕事だし、何だかんだで今年で6年目なので、しょうがないと思ってる面はあるのだが、ここに来て最大の問題は、チャーミー。台風24号である。

数日前の天気予報では、僕が乗る羽田発バンコク行きの便が出発する月曜の午前中に関東地方も台風に巻き込まれるという予想が出ていて、これはまずい、と僕も焦って関係各所に相談したりしていた。その後、台風の移動速度が速まって、日曜の未明には通り過ぎそうだという予報に。とりあえずほっとしたのだが、残る問題は、風だ。台風が通過した後も強風が収まらないようだと、場合によっては飛行機の出発時間が遅れるかもしれない。2時間以上遅れると、バンコクからのチェンラーイ行きの便に乗り継げないので、かなりめんどくさいことになる。

くっそ、チャーミーめ。そうでなくてもしんどい長旅の始まりなんだから、せめて心穏やかに旅立たせてくれい。

憤死寸前

昨日は夕方から、渋谷にある旅行会社の事務所で飲み会。7月にラダックで実施した、写真家さんたちの取材ツアーの打ち上げ。僕の帰国が遅かったせいで、打ち上げも今頃になってしまったのだった。

ブータンから届いた松茸をグリルで焼いたものや、角田明子さん入魂の餃子の数々、鮫島亜希子さんお手製のチキンビリヤニとイカカレーなど、豪華なメニューがずらり。話もとても盛り上がって、愉しい飲み会になった。

途中、僕以外の方々が秘密裏に仕込んでいたという、入籍祝いに用意してくださっていたケーキがローソクを灯されて運ばれてきた。そして、ケーキを持たされている僕を、プロの写真家5人がスマホで激写するという状況に(苦笑)。あまりにも恥ずかしすぎて、憤死寸前だった……憤死という言葉の本来の意味合いとはちょっと違うけど、まじでこめかみの血管が破裂しそうなくらい、しんどかったので。

人前でああいう風にされるのは、自分にはやっぱり、無理だ……。でも、みなさんのご好意、嬉しかったです。ありがとうございました。

インド率増大

昨日の夜は、吉祥寺のレンガ館モールの地下にある中華料理屋でごはんを食べながらの打ち合わせ。来年から参画する新しい仕事について。

新しい仕事というのは、撮影と執筆を伴う取材で、インドにまつわる旅の本づくりをお手伝いするというもの。ラダックやスピティをはじめ、その他のインドの地域もいくつか担当することになった。それも一回限りではなく、たぶんほぼ毎年。つまり、一年のうちにインドに滞在する時間が、今まで以上に増えるということだ。

たとえば、来年は多くても合計で2カ月くらいのインド滞在になると考えていたのが、昨日の打ち合わせを踏まえると、少なくとも合計3カ月はいなければならなくなりそう。年の4分の1をインドに持ってかれるわけである(苦笑)。

まあ、新しい仕事自体はとても面白そうだし、一緒に組むスタッフも凄腕の方々ばかりなので、楽しみではあるのだが。残りの人生における予想以上のインド率の増大に、やや戦々恐々としている。

想定外すぎる顛末

今年の夏のアラスカへの旅では、後半に、アナクトブック・パスという村に3日間滞在する計画を立てた。北極圏の扉国立公園(Gate of Arctic National Park & Preserve)の只中にぽつんとある、僻地中の僻地だが、大型セスナの定期便はフェアバンクスから毎日運航しているし、村には一軒、レストラン付きの宿もあるという。旅行会社を通じてもろもろを予約手配し、行ってみることにした。

で、アンカレジからフェアバンクス経由で飛行機を乗り継いで、アナクトブック・パスに着いたのだが、あると聞いていた宿がまず見当たらない。何人かの村人(そもそも外を出歩いてる人がほとんどいない)に聞いて、連れていってもらった建物は、看板もなく、中も散らかってて荒れ放題。玄関のナンバーキーを開けてくれた近所の人曰く、宿のマネージャーを務めていた人がこの春に亡くなって、以後は宿もほぼほったらかしの状態らしい。

かろうじて電気と水は使えたので、寝起きできる状態の部屋のナンバーキーを開けてはもらったが、共用のトイレやバスルームはぐちゃぐちゃ。宿に付設のレストランも長い間営業しておらず、汚れた食器がシンクに山と積まれている。使えるのは電子レンジ一台だけ。あわてて村に一軒だけある食料品店に行って、棚に少しだけあったレンジフードと、果物の缶詰、水とジュースを3日分買い込み、滞在中はそれらでどうにかしのいだ。

僕も今までそれなりにいろんな場所を旅してきたが、予約していた宿の人が亡くなってて、誰も管理していない半ば廃屋のような宿でのホラーじみたサバイバルというのは、当たり前だが初めての経験だった。飲み会の席での話のネタとしてはそれなりに引きはあるのかもしれないが、取材目的での旅にはただただマイナス要因でしかなくて、今回の取材や撮影は、正直言ってあまり思い通りにはいかなかった。残念。

まあ、想定外すぎる顛末とはいえ、自分の計画の詰めの甘さもあったのかな……。そういう意味では、良い勉強になった。