Tag: Travel

重箱の隅をつつく

毎日、ひたすら、本の原稿の推敲作業に、没頭している。

内容的な面での見直しは一応終わっていて、今週からは、より細かい部分に焦点を合わせた見直しに取り組んでいる。具体的には、草稿のテキストファイルを画面左に置き、中央に新しいファイルのウインドウを開いて、最初から一文字ずつ、草稿を見ながら打ち直している。表記がばらつきがちな単語は、画面右に置いたもう一つのファイルのウインドウに表記をメモしていく。11万字をゼロから打ち直すので、手間は恐ろしくかかるのだが、自分的には、一番いいやり方だと思っている。

ゼロからテキストを打ち直していると、草稿を目で読み返していただけでは気付かなかった、細かい修正点に行き当たる。たとえば、空港で飛行機から滑走路に下りる場面で、草稿では「タラップを降りて、機外に出る」と書いていたのだが、よく考えると、タラップを降りる前に、すでにドアから機外には出ているわけだ。「機外に出て、タラップを降りる」とした方が、より矛盾のない描写になる。こういう、文字通り重箱の隅をつつくような細かい修正点を洗い出して、納得がいくまで直していく。それが、僕の推敲のやり方だ。

ひたすら重箱の隅をつつきまくって、原稿の精度を上げていく。本を一冊書くのも、なかなか、しんどい。

馴染み深い国

1月5日から11日まで、台湾を旅してきた。

旅の目的は、南部にある霧台郷という場所の取材。外部から依頼された取材ではなかったので割と気楽ではあったものの、台北、高雄、霧台、高雄、台北と各一泊ずつの駆け足の旅だったので、小さな霧台はともかく、台北や高雄のような大きな街を見て回るには時間がなさすぎた。

それでも、台湾という国はとても魅力的だった。海を隔てているのに、まるで日本と地続きの場所のように気安く行ける国。初めて来たのに、昔からとてもよく知ってるような馴染み深さのある国。現地で使われている繁体字は、日本人が見れば何となく意味がわかる。駅でも店でも宿でも、流暢な日本語を話せる人はとても多い。そういうコミュニケーションの敷居の低さも、日本人にとっては近しい国に感じられる理由だろう。あと、台湾には日本の文化が好きな人が多いそうで、街の中には日本の商品や広告、漫画やゲームのビジュアルがあふれていた。

個人的には、今の日本よりも台湾の方が、よほど健やかでまともな社会を育んでいるように感じた。今の日本に蔓延している、先の見えない閉塞感、当然の正義が通じない不条理、どうせ何も変えられないという諦めといった雰囲気は、台湾にはない。昨日投開票された台湾総統選の投票率と結果が、それを証明している。

仕事でも、仕事でなくても、また行ってみたいなあ、と思える国を、一つ知ることができた。

今年の年末年始

年末年始は、文字通りの帰省というわけではないのだが、数日間、東京を離れる。

明日、長野の松本に移動し、街をぶらぶら散策して、そこで二泊。大晦日は松本から安曇野の穂高まで日帰りで行って、岡山から来ている僕の実家方面の人たちと会う。元日は午前中のうちに松本から穂高までもう一往復して、初詣やら何やらをやって、昼から神戸を目指して移動し、相方の実家方面の人たちと会い、神戸で一泊。二日の夜までに東京に戻る、という算段。

去年の年末年始は岡山と神戸を回る感じだったので、今年はだいぶ勝手が違うが、まだちゃんと歩いたことのない松本の観光もある程度できそうだし、これはこれでありかなと。そんなわけで、国内小旅行的な年末年始、楽しんできます。良いお年を。

無事に戻る

僕が旅に出る時、相方は必ず「無事に戻ってくるんだよ」と僕に言う。

普通の旅なら、日本でも海外でも、事故や怪我や病気に遭遇する確率は、そんなに極端には変わらない。ただ、僕の場合、そういう確率がそれなりに高い場所に赴かなければならないことが、結構ある。いつも用心に用心を重ねて、犯さなくていいリスクは極力避けているし、そのおかげでか、これまではどうにか五体満足無事に戻ってこれている。でも、相方には心配をかけさせてしまって、申し訳ないと思っている。

今年初めに行った旅は、自分が今まで経験した中で、たぶん一番リスクの高い旅だった。出発前から、新田次郎の小説「孤高の人」の結末がちらついて、不安が頭から離れなかった。戻るべき場所ができると、それを失うのが、とてつもなく怖くなる。あの旅の途中で本当にきわどかった時は、「絶対に、ここでくたばるわけにはいかない。戻るんだ。何が何でも、戻るんだ」と、自分で自分に必死に言い聞かせていた。読んでもらえればわかると思うけど、今、本にしようとしているのは、そんな旅の話だ。

来年は、そこまできわどい旅をやらかすつもりはないけれど、やっぱり、「無事に戻る」ことを第一の目標にしようと思う。

草稿完成

今取り組んでいる本の草稿を、昨日の夕方、ようやく最後まで書き上げた。文字数は11万字超。ページ数は200ページを少し超えるくらい。

正直、ものすごく、ほっとした。もちろん、これから推敲と細かい修正を時間をかけてやっていかなければならないし、写真のセレクトや台割の調整も大変なのはわかっているのだが、とりあえず、土台となる草稿が最初から最後まで揃っている、という安心感は大きい。昨日までは物書きとしての感覚で取り組んでいたけれど、今日からは編集者目線での取り組みに移行していくことになる。

あー、それにしても、本当にほっとしたなあ。僕にとっての「書く旅」が終わってしまったことに、一抹の寂しさはあるけれど。