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もぬけの殻

午前中のうちに近所のスーパーで買い物をすませ、昼少し前から、都心に出かける。散歩をしながら考えごと(原稿の次のパートのプロットの整理)をしたかったので。

新宿まで電車で出て、紀伊國屋書店に寄った後、そこからてくてく歩いて、代々木、原宿、渋谷、代官山、恵比寿まで。今日はとても天気がよくて、日なたは少し暑いくらいだったけど、初秋らしい爽やかな風が吹いていて、歩いていても気持ちよかった。最後にひさしぶりに寄った恵比寿のヴェルデで飲んだ深煎りブレンドのうまかったこと。

それにしても今日、都心を歩いていてひしひしと感じたのは、閉店してもぬけの殻になったままの店の、異様な多さ。ほんと、唖然とするくらい。いつも何十人も行列ができていたタピオカミルクティーの店とか、十年以上前から営業していた人気ラーメン店とか、角の一等地にあった大きなショーウインドーのアパレルショップとか。どこもかしこもつぶれてるような印象だった。

渋谷界隈では今もあちこちで大規模な再開発工事が続けられているけど、既存のテナントがこの惨状なのに、今から新しいハコモノを作ったところで、どれくらいの企業が出店できる余力を残しているだろうか。直近のコロナ禍の状況を考え合わせると、あと半年ほど経って年度末にさしかかる頃には、もっとひどいことになっているかもしれない。

今の与党の政治家たちに、世間のこの状況は、どのくらい見えているのだろう。たぶん、何も見えてないのだろうな。

パンクな理髪店

1カ月半ぶりくらいに、三鷹にある行きつけの理髪店で、散髪。まだ暑いので、短めに刈り上げてもらう。

店内には、僕の前に一人、後に一人、それぞれ若いお兄さんがいた。店の人が「今日はどうします?」と僕の前の番のお兄さんに聞くと、「モヒカンで!」と歯切れよく答えた。そのお兄さんの髪は、オーダー通り、立ち上がり加減が短めのモヒカンに仕上げられた。

で、僕の後にいたお兄さんが席について、「今日はどうします?」と聞かれると、これまた歯切れよく「スキンヘッドで!」。店の人は、そのお兄さんの頭をウイーンときれいに剃り上げはじめた。

リーゼントやパンチパーマにする人が多めの店だとは思っていたが、最近はパンクな路線に変わったのだろうか。僕も、イナズマ模様の刈り上げにしてもらえばよかったかな。

ヨーイドン

午後、千石で打ち合わせ。来年出すことが決まった、新しい本について。

オンラインとかでなく、対面で仕事の打ち合わせをするのは、たぶん半年ぶりくらいだ。今回の打ち合わせも、「いつもなら小さめのミーティングスペースでやるんですが」と担当編集さんに案内されたのは、14、5人での会議もできるくらいの大きな会議室。ドアも開けて換気にも気を遣っていただいていて、ありがたいことだなと思う。

打ち合わせ自体は、とてもスムーズかつなごやかに進み、諸条件も特に問題なく合意し、つつがなく終えることができた。春先に企画を提案して以来、だいぶ時間がかかってしまったが、これで本格的に執筆に取りかかることができる。ヨーイドン、と自分で自分に声をかけたくなる気分だ。

……ぶっちゃけ、先方で検討してもらっている発売時期を考えると、そんなに悠長に構えてもいられなくなったので、実はちと焦っている(苦笑)。

新しい種類の仕事

来月頃から、新しい取引先と、新しい種類の仕事をさせてもらえることになった。

執筆でも、撮影でも、編集でもない、今までに請け負ったことのない種類の仕事なのだが、執筆と撮影と編集と、それに付随して経験してきた今までの蓄積があるからこそ、請け負うことのできる仕事でもある。何て言えばいいのかな。つまり、右も左もまったくわからない分野ではなく、むしろ今までの経験をフル活用できる分野の仕事、というわけだ。ますますわかりにくいか(笑)。

ともあれ、コロナ禍で先の見えない不況にあえぐ今の世の中で、今回の新しい種類の仕事とか、来年出すことが決まった本の執筆とか、そういう仕事に携わることができるというのは、フリーランスの身空としては有難いことだなとしみじみ思う。

ともあれ、やるからには、がんばります。

「会う」取材

午後、錦糸町で取材。相手の方の知人の方が経営するカフェの定休日に少しお邪魔して、店内で収録させていただく。無論のこと、マスク着用のまま。

こうして人に直接会う形で取材をさせてもらうのは、ものすごくひさしぶりだ。4カ月ぶりくらい。Zoomを使ったリモート取材はこの間やったけれど、対面取材は、リモートとは段違いにやりやすい。相手の表情や会話の間に応じて、場の空気をある程度把握して、コントロールできる。今回は相手の方のお話の面白さにも恵まれて、とても良い感じで取材できたように思う。

インタビュー取材はやっぱり、直接お会いするのが一番だなあ。こういう「会う」取材が、再び当たり前にできるようになりますように。

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テッド・チャン「息吹」読了。ありえたかもしれない人生、変えることのできない過去、それでも選ばなければならない道。深い探究心と奔放な想像力によって生み出された物語が、精緻で美しい文章で綴られている。すごい。本当に素晴らしい。圧巻だった。