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本場の味

夜、吉祥寺へ。駅の近くのラオス料理店で、食事をしながらの打ち合わせ。ビアラオを飲みつつ、黒米入りのカオニャオと一緒にラープやガイヤーンをいただく。

その味が悪かったというわけではまったくないのだけれど、食べながら思い出していたのは、この間のタイ取材の時に、行く先々の安食堂や屋台で食べていた料理の味だった。ガイヤーン、パッタイ、ソムタム、カオマンガイ、センレックナーム‥‥安くて、さりげなく、それでいて鮮烈で、何とも言えずうまい。気候などにもかなり影響されていたとは思うが、あれらは文字通り、本場ならではの味だったのだろう。

そう考えると、僕はとてもぜいたくな経験をさせてもらえていたのだと思う。まあ、取材はほんとにきつかったけどね(苦笑)。

思い出して、笑って

午後、編集さんと待ち合わせて、代官山蔦屋書店へ。九月に森本さんが亡くなった後、タイ取材のためにずっとお店に行けないでいたのだが、ようやく今日、書店員の方に時間を取っていただいて、おくやみのご挨拶に。

二階のラウンジで一時間ほど、来月上旬に予定されているお別れの会の話や、森本さんや本やお店のよもやま話をしたのだけれど、不思議としめっぽい感じにはならなくて、あれやこれやを思い出しては結構笑っていたような気がする。きっとそれは、森本さんのお人柄もあるのだろう。

僕も、この世から立ち去った後、誰かに笑って思い出してもらえるような人になれたら、と思う。まあ、どっちかというと「あいつ、つくづく無茶ばっかやってたよね」と、あきれ笑いで思い出される方だと思うけど。

加住丘陵を歩く

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八王子駅から北に少し歩き、浅川を越えると、加住丘陵という小高い丘がある。小宮公園という公園として管理されているこの場所には、コナラやクヌギを中心とした緑豊かな雑木林の中に木道が整備されていて、手軽に自然を味わえる散策コースになっている。気持のいい秋晴れの日、この加住丘陵をぶらぶらと歩いてきた。

ひたすら眠い

昨日の朝、タイ取材を終えて帰国した。

約四週間もの間、南国の太陽に灼かれて黒焦げになってた割には、特に大きく体調を崩したりすることもなく、元気に戻ってくることができたのだが、とりあえず今は、ひたすら眠い。昨日は昼寝もしたし、夜も結構どっぷり寝たのに、まだ全然寝足りない。今日は「撮り・旅!」のパネル展の設営などで朝から出歩いてたのだが、夕方頃には、もう歩きながら寝落ちしてしまいそうなくらい、眠くてたまらなくなった。

つーわけで、今日もビール飲んだら、とっとと寝ます。あー、眠い。

旅立った人へ

代官山蔦屋書店の森本剛史さんが、昨日の早朝に亡くなられたという報せが届いた。

代官山蔦屋書店で旅行コンシェルジュを務められていた森本さんは、100カ国以上を旅してきたトラベルライターでもあり、文字通り、旅と本に関する本物のプロフェッショナルだった。僕が森本さんと初めてお会いしたのは、二年前の初夏。知人の編集者さんの紹介で、発売したばかりの「ラダック ザンスカール トラベルガイド」の件でお店にご挨拶に伺ったのだが、とても親身に話を聞いてくださって、店内でのラダックのトークイベント開催を提案していただいたりした。その後もお店でお会いするたびに、最近の売れ行きや面白そうな作家さんのことなど、気さくに話をしてくださっていた。

昨年の秋、森本さんは入院して大きな手術を受けられたのだが、今年に入ってお店にも復帰されて、春先に「撮り・旅!」に載せる旅と写真のおすすめ本の紹介記事の執筆をお願いした時も、快く引き受けてくださっていた。大入り満員になった「撮り・旅!」の刊行記念トークイベントをやろうと提案してくださったのも森本さんだった。でも、その前後から再び入退院をくりかえされるようになって‥‥。たぶん「撮り・旅!」の記事が、活字になった森本さんの最後のお仕事だったのではないかと思う。

森本さんの親しい友人だった方が、Facebookに「友が旅立った」と書かれていたが、「旅立った」という言葉で見送られるのが森本さんほど似合う人は、他にいないと思う。それにしても、急な旅立ちだった。発売の後にちゃんとお会いして「撮り・旅!」完成のお礼を伝えられなかったことが、本当に悔やんでも悔やみきれない。

「本は旅を連れてくる」。旅行コンシェルジュだった森本さんが、常日頃から同僚の方々に言っていた言葉だという。たぶん森本さんは、旅の力を、本の力を、最後の最後まで信じ続けていたのだ。それが人に、かけがえのない何かをもたらしてくれることを。

僕もまた、旅にまつわる本を作る仕事をしているけれど、さんざん苦労させられる割にさっぱり儲からないし、このままどこまでいってもやせ我慢なだけなのではないかと、暗澹とした気持になることがある。自分の作っている本にはたしてこの世に存在する意味はあるのか、単なる自己満足なだけなのではないか、とさえ思うこともある。

でも。それでも。

僕はこれからも、旅にまつわる本を作り続けると思う。それが誰かに、旅を連れてきてくれることを願って。それが誰かに、何かを変える力を与えてくれることを願って。森本さんに笑われないような本を、一冊々々、作り続ける。

本当に、おつかれさまでした。どうか、よい旅を。