Tag: Tokyo

折れない心で

三鷹北口界隈には、何軒かのラーメン屋がある。うちから一番近いのは、チェーン店を除くと、たぶんその中でも一番後発の店だ。

その店がオープンしたばかりの頃は、割と大勢のお客さんが来ていて、外で待たなければならない時もあるほどだった。でも、去年あたりからは、だんだんそういうことも少なくなって、夕方にふらっと行くと、他に誰も客がいないことも珍しくなくなった。まだ若くて愛想のいいご夫婦がやっている店なのだが、そんな風にがらんとした時に店に入ると、二人はしんどさを押し殺すようにして笑顔を見せるのだった。

味はけっして悪くないし、むしろなかなかうまい。店のしつらえからメニューまで、丁寧に気を配っていると思う。ベストを尽くしているはずなのに、うまくいかないもどかしさ。そういう思いは、場所や仕事は違えど、今の世の中でたくさんの人が抱えているものなのかもしれない。僕自身も含めて。

今日の夕方も、その店の暖簾をくぐった時は他に誰もいなかったのだが、その後、とととっと立て続けにお客さんが入ってきたので、少しほっとした。ちょっとなれなれしい感じの二人連れの女性客の一人が店のご主人に「おいしいラーメン屋さんがあるからって、この子を連れてきたんですよ!」と話しかけると、ご主人は「ありがとうございます。これからも続けていけるように、がんばります!」と頭を下げていた。

「ごちそうさま」と言って席を立つと、「いつもありがとうございます! またよろしくお願いします!」という二人の声が背中を追いかけてきた。

お互い、がんばりましょうね。ベストを尽くして。折れない心で。

卒業式

朝、取材のため、早稲田の戸山キャンパスへ。地下鉄の駅から地上に出ると、何だかやけに人が多い。袴姿の女の子が多いのを見ると、どうやら卒業式のようだ。一学年の人数が多すぎるので、何回かに分けてやっているらしい。

僕自身もこの戸山キャンパスに通っていた人間なのだが、卒業式には、結局出なかった。当時雑誌の編集部でやっていたバイトにかこつけて、サボったというのが正しい。

なんで卒業式に出なかったのかというと‥‥何かしらの研究で成果を上げて、清々しい達成感を感じながら卒業の日を迎えるというのとは、まったく程遠い学生生活だったからだと思う。最初からろくに講義にも出ず、就職活動を放棄したついでに自主留年して、バイトに明け暮れ、無鉄砲な旅に出て、ほうほうのていでやっとこさ単位を揃え‥‥書類上は卒業できる身分になっただけ、というのが僕の大学での日々だった。

そういうろくでもない学生生活を過ごしていると、こういうろくでもない人間が生成されるというわけだ(苦笑)。

ちなみに、卒業式で受け取らなかった卒業証書は、それから十年も経った後、突然大学から「取りに来てください」という督促状が来たので(苦笑)、一応、僕の手元にある。

ヤギとの遭遇

今朝は六時起きで、午前中に溝の口、午後に豊田方面で取材。

午前中の取材が終わった後、電車を乗り継いで京王堀之内駅まで行き、ネットでちょこっと調べておいた近くのラーメン屋さんに行ってみたら、あたり一面閑散としてる中で、その店の前にだけ行列ができていた。みんなそんなにラーメンが好きなのか。

行列に少し並んで、ラーメンを食べ終えても、まだ時間に余裕がある。取材の待ち合わせ場所まで、iPhoneで地図を見ながら歩いて行くことにした。うららかな陽射しの中、気持ちのいい散歩だなー、と思っていたら、道は次第に上り坂になり、周囲はみるみるうちに山っぽい雰囲気に。ふと気づくと、道端にある囲いの中で、ヤギたちが干し草をもしゃもしゃしながら、じーっと僕を見ていた。

えーと、俺、何しにこんなところにまで来たんだっけ? 世の中、いろんなことが起こるものなのだな。

春うらら

昼、リトスタでおひるを食べながらの打ち合わせ。今日からいちごのババロアも登場ということで、一緒においしくいただいた。打ち合わせの方も、これからいろいろ面白いことが実現できそうで、楽しみになってきた。

それにしても、今日は暖かかった。20℃は余裕で超えてただろう。打ち合わせの後、おなかいっぱいで眠いし、まっすぐ家に戻るのが惜しいくらいのいい天気だったので、吉祥寺方面に散歩してみることに。風の散歩道では、気の早い桜が咲きはじめている。井の頭公園には早々と「宴会は22時まで」の横断幕が(笑)。すっかり春うららだな。

ぐるっと北に回って家まで戻ると、眠気がさめるどころか、ますます眠くなった(笑)。

洋食屋にて

朝から午後にかけて、鷹の台で大学案件の取材。1本目と2本目の間に1時間半ほど時間があったので、どこかでおひるを食べようとうろうろ。

去年この町に来た時、確かあのへんに何か‥‥と、うっすらした記憶を頼りに歩いていると、あった。ものすごく古めかしくてこぢんまりとした佇まいの洋食屋。中に入ると、ほぼ満席だったが運よく座れた。お店をやってるご夫婦の応対は、至極淡々とした感じ。店内に流れ続けるゆうゆうワイド。

ハンバーグ定食を注文。小ぶりの煮込みハンバーグが2枚に、目玉焼きとケチャップスパゲティとサラダ、味噌汁、どんぶりごはん。デミグラスソースがちゃんとしてて、すごくおいしい。これでなんと650円だという。すっかり満腹で、午後の取材で眠くならないか心配になってしまった(笑)。

でも最近は、こういう良心的な洋食屋は、東京ではどんどん減っているのではないかと思う。昔、荻窪に住んでいた時によく通っていた洋食屋も、だいぶ前になくなってしまったし。どこに行っても同じようなチェーン店が並んでいるだけの町は、やっぱりつまらない。だから、こういうお店には末長くがんばってほしいと思う。