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「君の名は。」

予想以上の大ヒットで映画館がずっと混雑していたのと、ここしばらくのせわしなさで、なかなか見られないでいた新海誠監督の「君の名は。」を、ようやく観に行くことができた。

千年ぶりに現れた彗星が近づきつつある日本。とある山奥の田舎町に住む高校生、三葉は、不思議な夢を見るようになった。東京にいる見知らぬ少年となって、彼の生活をまるで現実のことのように体験する夢。一方、東京で暮らしている高校生、瀧も、山奥の町にいる見知らぬ少女になってしまう夢を見るようになった。やがて二人は、実際に互いが入れ替わる現象がくりかえされていると気付く。まだ出会ったことのない、出会うはずもなかった二人が、不思議な形で結びつけられた意味は……。

新海監督はもともと独自の世界観と個性的な作風を持っていた方で、これまでの作品は必ずしも万人受けするものとは言い切れないところがあった。SF寄りの作品でも、現実世界寄りの作品でも、大切にしていたのに失ってしまったものを取り戻せない切なさ、やりきれなさのような後味を残す作品が多かった。でも、この「君の名は。」は、そこから立ち上がって、運命に抗ってさえ、大切なものを取り戻すためになりふり構わず駆け出していくような、そんな作品になっていたと思う。

作中には、これまでの新海監督の作品(CMも含めて)のセルフオマージュとも言える要素が数多く盛り込まれている。逆に言えば、過去のそうした蓄積がリブートされてエンターテインメント作品として最適なバランスで昇華されたのが「君の名は。」と言えるのかもしれない。

とりあえず、このピュアで王道なストーリーを素直に楽しめるくらいには、自分に人並みにノーマルな感情が残っていることにほっとしている(笑)。観客は圧倒的に10代、20代が多いのだそうだ。ティーンエイジャーのうちにこういう映画を観ることのできる人は、幸せだと思う。まだの人は、ぜひ映画館へ。

長雨の間に

帰国、取材、原稿、編集、トラブル対応、写真展、オフ会、イベント……ここしばらく、本当にあれこれあたふた振り回されて、さすがに疲れがたまっていたので、今日は完全休養。届いた仕事関係のメールにだけ返事をして、自分からは何もしない。写真の現像や原稿書きもしない。とにかく休む。

じめじめとした長雨が続いてる間に、日が暮れる時刻がだいぶ早くなった。外ではいろんな種類の秋虫が鳴いている。いつのまにか、秋の入口にまで来てしまった。

……1週間後には、約4週間のタイ取材が始まる。熱帯で夏に逆戻り。やれやれ。

かけ違えたボタン

アラスカから日本に戻ってきて10日ほど経ったが、とにかくやたらと眠い。ずっと眠気に襲われている気がする。

ただ、その眠気に従って横になってみても、浅い眠りのまま、割とすぐに目が覚めてしまう。ぐっすり熟睡、という感じにはならない。それで起きて、しばらくすると、また眠くなる。横になる。でも浅いまま、すぐ目が覚める。

アラスカの小屋で一人ぼっちだった時、夜の9時を過ぎて太陽の光が完全に消え去ると、あたりは真の闇に包まれた。窓から外を見ると、海の向こうの遥か彼方に、シトカの街の灯がほんのかすかに見えていた。波の音、風に揺れる梢の音、虫の声。エアマットを敷いた板張りのベッドで、僕は寝袋にくるまっていた。不思議なくらい、ぐっすりと、よく眠れた。孤独も不安も、何も感じなかった。ただ、静寂の中に身を浸していることが心地良かった。

あの島から戻ってくる時に、どこかで、ボタンをかけ違えてしまったのかもしれない。どっちが間違っているのかも、僕にはわからないけれど。

ケープ・マレーの味

今日は昼から夜まで、写真展開催中のポイントウェザーに在廊。激混みというほどでもなく、ほどよくにぎやかで、穏やかな時間だった。来週からラダックに行くという方が訪ねてきてくれたり、知り合いも大勢来てくれたりで、愉しく過ごすことができた。

お店ではおひるに週末限定のインドネシア定食をいただいた。サンバルゴレンウダンに、豚肉の甘辛煮や空芯菜炒め、ガドガドなど。甘味がある中にほどよくスパイスの効いた味。インドネシアは未踏の地なのに、どこかで似たような味を経験したような気が……と思ったら、去年の南アフリカ取材の時にケープタウンで食べた、ケープ・マレー料理の味。

南アフリカにはかつて、オランダ東インド会社によってジャワから大勢の人々が奴隷として連れてこられた。その子孫は今、南アフリカでケープ・マレーという確固としたコミュニティを築き、文化を受け継いでいる。ケープ・マレー料理も彼らのそうした文化の一つだ。

思いがけない人とばったり再会したような、そんな気分になった。

今頃になって

昨日は夕方から、綱島のポイントウェザーで、今日から始まるラダック写真展の設営。すぐに終わるだろうとたかをくくっていたのだが、予想よりずっと大変で、お店の近所から手伝いに来てくれた友人たちがいてくれなかったら、たぶん全然終わらなかったと思う。本当に助かった。おかげで今日から、無事にスタート。

で、今日は午前中のうちに市役所に(制度的には非常に不本意ながら)マイナンバーカードを受け取りに出向いた。で、家に帰ってきて、仕事を……と思ったのだが、急にものすごく身体がだるくなってしまった。ベッドに横になって、夕方まで3、4時間寝る。

今頃になって、ここしばらくの疲れが出てきたのかな。来月からはまた、タイ取材が始まるんだけど。