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中央線と総武線

引っ越しまで、あと二週間弱。いつ終わるとも知れなかった不用品の整理にもかなりメドがつき、家具や電化製品の譲渡先も決まりつつある。譲りきれないものはリサイクル業者や粗大ゴミ回収に委ねることになるが、それらの処分をぬかりなく進めていって、引っ越し当日までに本と衣類と食器をきっちり梱包すれば、まあ、何とかなるだろう。

今日は東急ハンズでこまごましたものを買いに新宿まで往復したのだが、引っ越したら、電車に乗る時の感覚を切り替えなければ、と思った。三鷹なら中央線は快速も中央特快も停まるし、総武線や東西線は始発に乗れるのだが、引っ越し先の西荻窪ではかなり事情が変わる。中央線が停まるのは快速のみで、しかも土日祝日は通過してしまう。土日祝日は必ず総武線か東西線、もしくは早朝か深夜の時間帯の中央線の各駅停車に乗らねばならない。今までの感覚で土日もうっかり中央線快速に乗っちゃってそのまま三鷹まで、みたいなこと、絶対やらかしそうだ。ほんと、目に浮かぶ(苦笑)。

かれこれ十年以上、だものなあ。行きつけの本屋も、コンビニも、スーパーも、ラーメン屋も、全部変わる。何だか信じられないような、ピンと来ないような。僕にとっては、何処かの国に半年、一年と旅に出るよりも、大きな変化のような気がする。

松尾 純 写真展「クゼゥゲ・クシュ」ギャラリートーク


以前「撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち」にもご協力いただいた広島在住の写真家、松尾純さんの写真展「クゼゥゲ・クシュ」が、銀座と大阪のニコンサロンで開催されます。銀座ニコンサロンでは2018年6月20(水)から26日(火)まで、大阪ニコンサロンでは7月19日(木)から25日(水)まで。いずれも日曜は休館日です。

銀座での展示期間中、6月23日(土)14時から、松尾さんご自身が作品について話をするギャラリートークが開催されます。その司会を、僕が担当させていただくことになりました。予約不要、参加費無料でご観覧いただけますので、よかったらぜひお越しください。

十年ぶりの引越し

六月の終わりに、引越しをすることになった。

引越し先はそんなに遠くではなく、隣の杉並区、最寄駅は西荻窪。二十代の頃はしばらく荻窪に住んでいたから、再び杉並区民に戻るということになるが、正直、まだあまりピンと来ていない。

今住んでいるマンションに越してきたのは、ほぼ十年前。三鷹に住みはじめたのは、そこからさらに五、六年ほど遡る。途中、ラダック取材で日本にいなかった時期も結構長いので単純比較はできないが、高校卒業まで住んでいた岡山の実家と同じくらい、三鷹で暮らしてきた計算になる。

三鷹にはリトスタやまほろば珈琲店をはじめ、馴染みの店がたくさんあるから、これからも月に何度かは来るとは思う。それでも、やっぱりここを離れるとなると、それなりにいろいろ思い出してしまう。

今まで生きてきた時間と、これから訪れる時間の、割と大きな節目となるタイミングなのだろうな。とりあえず今は、引越し当日までに必要な準備と手続きが膨大すぎて、気が遠くなってる(苦笑)。

カフェマメヒコ宇田川町店

午後、渋谷へ。モンベルまで旅先に着て行く少し厚手のロンTを探しに行ったのだが、一番の目的は、マメヒコの宇田川町店に行くこと。7月2日で、閉店してしまうのだという。以前、週末に行こうとしたら長蛇の列ができてて入れなかったので、そのリベンジに。

さすがに平日の午後は空いていて、ゆったり座れた。中央の大きなテーブルの一番端の席に座り、アイスコーヒーとフルーツサンドのハーフサイズ。どちらも王道のうまさ。本を1時間ほど読む。

宇田川町にこの店ができたのは11年前だというから、僕が時々立ち寄りはじめたのは、その数年後からだと思う。その後できた公園通り店と併せて、渋谷がアウェイな僕にとっては本当に数少ない、ほっと落ち着ける店だった。半地下の薄暗い店内、大きなテーブルとランプの明かり、丁寧で感じのいい店員さんたち。

そこに行けばいつも必ずあるはずだ、と思い込んでいた場所が、なくなる。近場に移転するという噂も聞いたけれど、あの場所は、なくなってしまうのだなあ。

あともう一、二回行って、今度はカツサンドを食べておかねば。

それは当たり前ではなく

先週末、母が上京してきた。新宿のホテルに宿を取ったというので、実家のある岡山にはなかなかないというタイ料理店で、一緒に晩飯を食べた。

タイ料理店から喫茶店に場所を移そうということになり、街を歩いていると、「紀伊國屋書店を見てみたい」と言われた。地下一階の旅行書コーナーでは、三月末に出たばかりの僕の本が10冊ほど面陳して置かれていた。

「こんな風に置かれてるの、見たことなかったわ」と母が言った。まあ東京だから……と言いかけて、それは当たり前のことではない、と思い直した。本がこの世に生み出されて、書店の店頭に並べられ、お客さんが手に取って、レジに持っていく。それが、どれだけ大変なことか。どれだけ多くの人の力を借りなければならないか。

本を作り、読者に届ける。この仕事の重さを、あらためて感じた。