この動画に登場する、自由なんとか協会のプレゼンターの日隅一雄氏は、壇上のスピーチで「チベットの僧侶のように焼身自殺をして名を上げた方がいいのかなと思った」と口にし、その場に集まった人々とともに爆笑していた。
ふーん。それを「面白い」と思えるんだ。ふーん。
そういうことを公の場で口にしたら傷つく人が大勢いることを想像する力が働いていない時点で、日隅氏も、自由なんとか協会のお歴々も、ジャーナリスト失格だと思う。
この動画に登場する、自由なんとか協会のプレゼンターの日隅一雄氏は、壇上のスピーチで「チベットの僧侶のように焼身自殺をして名を上げた方がいいのかなと思った」と口にし、その場に集まった人々とともに爆笑していた。
ふーん。それを「面白い」と思えるんだ。ふーん。
そういうことを公の場で口にしたら傷つく人が大勢いることを想像する力が働いていない時点で、日隅氏も、自由なんとか協会のお歴々も、ジャーナリスト失格だと思う。
夕方、仕事の合間にネットでニュースを見ていると、不穏な見出しの記事が目に飛び込んできた。
ダライ・ラマ暗殺狙う 「中国のスパイ侵入」とインド紙報道
7日付のインド紙タイムズ・オブ・インディアによると、中国チベット自治区からのスパイが、インドに亡命中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世(76)の暗殺を企てているとの情報があり、警察当局は警備強化に乗り出した。
西部ムンバイの警察は、中国国籍の「タシ・プンツォク」と名乗る中国の情報機関所属とみられる人物が、インド北部ダラムサラにあるチベット亡命政府に関する情報収集とダライ・ラマ殺害のため、インドへ侵入するとの情報を入手。
ダライ・ラマは説法などを目的にインド各地を訪問することが多い。ムンバイ警察は国内の亡命チベット人の関連組織に情報を伝えた。スパイは計6人いるとされる。
ムンバイ警察は「ダライ・ラマがムンバイのスラムで人々と交流することもある」などとし、将来のムンバイ訪問に備え、関係機関に対策強化を指示した。
事実だったら穏やかじゃないな、と思うし、実際、法王の身は危険かもしれない、とも思う。ただ‥‥もし、中国当局が法王の暗殺を実行に移してしまったら、チベット本土が、血で血を洗う悲惨な状況に陥ってしまう。僕は中国という国にシンパシーは微塵も感じていないけど、これ以上、愚かなことをしでかすことだけはやめてほしい。
昨日、チベットのアバで、また二人のチベット人が焼身自殺をした。こんな哀しいことは、もうたくさんだ。
チベット本土で今、僧侶をはじめとするチベット人たちによる焼身自殺が相次いでいる。今年三月、アバのキルティ・ゴンパの若い僧侶が焼身自殺したのを皮切りに、アバやカンゼで、若い僧侶や尼僧、一般のチベット人たちが、次々と焼身自殺を遂げているのだ。今日、デリーの中国大使館前で焼身自殺を試みた男性を含めると、その数、なんと12人。異常としか言いようがない。
自らの命と引き換えに彼らが訴えているものは、みな同じ。50年前から続いている、中国当局がチベット人とチベット仏教に対して行っている理不尽な弾圧をやめるように、中国に、そして国際社会に対して訴えかけているのだ。
焼身自殺という手段自体は、決して称賛すべきやり方ではない、と僕は思う。でも、そういう最後の手段を選ばざるを得ないほど、チベット本土の人々はあらゆる面で追い詰められている。自由も、宗教も、文化も、誇りも‥‥心そのものまで、無惨に踏みにじられて。そして、焼身自殺でもしなければ振り向いてもらえないほど、国際社会の人々の関心が薄いということも、彼らがそういう手段を選んでしまう一因となっている。
三年前にチベットで起こった騒乱の時、六本木の抗議デモに集まった何千人もの人々は、もう、チベットのことはすっかり忘れてしまったのだろうか? あれからチベットでは、何も変わっていないし、何も終わっていない。むしろ、状況はますます悪くなっているというのに。
今回の焼身自殺のことも、「へー、知らなかった」という人が日本では大半なのかもしれない。でも、その無関心こそが、チベットで次々に焼身自殺が繰り返される原因になっているのだ。「知らなかった」で済ませていいわけがない。
一人でも多くの人に、チベットの人々が置かれている悲惨な状況を知ってもらうこと。それが、今の僕たちがまずやらなければならないことだと思う。
昼、電車に乗って護国寺へ。来日中のダライ・ラマ法王による東日本大震災の四十九日法要に参加する。
セキュリティチェックを終えて階段を上ると、本堂の前の広い境内は、三千人もの人々でぎっしりと埋まっていた。四基の大型スクリーンに、法王のご様子が映し出される。読経の声を聞きながら、家から持ってきた数珠を手にかけ、しばらくの間、じっと手を合わせて、震災で亡くなった方々や、被災地で不自由な暮らしを余儀なくされている方々のことを想った。
僕が祈ったからといって、苦しんでいる方々が救われるわけではないけれど、自分自身の心に祈りを刻むことで、何か変わるものがあるかもしれない。こういう機会に立ち会うことができて、よかったと思う。
夕方、新宿に移動して、新宿眼科画廊で今日から始まるたかしまてつをさんの個展のオープニングパーティーに行く。たかしまさんの作品は以前からいろんな場所で何度か拝見してきたけど、今回の展示は圧巻。白い壁一面にびっしり貼られているのは、キャンバスやダンボール、手帳のページ、レシート、文庫本のカバーなど、ありとあらゆるものに描かれた絵たち。奥の小部屋には、四枚のふすまにどーんと描かれた、文字通りのふすま絵もあるのだ。
パーティーの間も壁のあちこちをずっと眺めて回っていたのだが、見ていて感じたのは、たかしまさんは本当に、骨の髄まで絵を描くことが好きな人なのだなあ、ということ。見る人に元気を与えられる絵というのはすごいと思う。
祈りと元気とで、心が少し軽くなったような気がした。
まさかの雪。この冬は、本当によく降るなあ。昨日のうちに食糧の買い出しをしておいてよかった。一日中、外に一歩も出ることなく、黙々と原稿を書く。
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中国版ジャスミン革命が呼びかけられるようになって、昨日で三週目。ネットでのデモの呼びかけに翻弄される中国当局の右往左往っぷりは、いささか滑稽な様相を呈してきた。何しろ、ネットでどこかが集合場所に指定されるたびに、そこに百人以上の警官を派遣し、放水車で誰彼構わず追い払い、外国メディアをかたっぱしからぶん殴って捕まえているのだから。この状態が数カ月、半年と続けば、必ずどこかで無理が生じる。毎週日曜日の恒例行事は、おそらく今後も続いていくだろう。
考えてみれば、中国の人々も可哀想だなと思う。今の彼らの状態は、手足を縛られ、両目と両耳を塞がれた状態で、経済成長という砂糖水を、ひとさじ、ひとさじ、口の中に流し込まれているようなものだ。僕だったら、そんな生殺しのような生活には耐えられない。自分の言いたいことが言えて、知りたい情報は何でも手に入って、望む生き方を好きに選べる僕たちは、本当に恵まれていると思う。