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産毛の変化

昨日、ひさしぶりに髪を切ってもらいに近所の理髪店に行った。カットとシャンプーが終わり、顔を剃ってもらう段になって、いつも担当してくれている理容師さんが僕の頰を軽く触りながら、「ああ、元に戻りましたね」と言った。

「戻ったって、何がですか?」と聞くと、「夏の終わりに、インドからお戻りになった後にうちにいらした時に気づいて、でもその時は言わなかったんですけど……あの時はすごかったんですよ、お顔の産毛が、ごわっとしてて。でも今はいたって普通ですね」

スピティやラダック、ザンスカールで約2カ月を過ごした後、僕の顔の皮膚は、理容師さんが剃刀を当ててびっくりするくらい、産毛でごわごわになっていたのだそうだ。高地で極度の乾燥と紫外線に晒されるうちに、身体がしぜんと防衛体制を取っていたのだろう。かたや、ふんだんに湿気のあるタイでは、そこまで防御する必要はなかったということか。

しかし、「元に戻った」か……どっちが「元」なんだろうな、僕にとっては。

ラオスへ

タイからの帰国早々、仕事がいろいろ崖っぷち状態なのには、いくつか理由がある。そのうちの一つが、来年の年明け早々、半月ほどラオスに行く予定を入れてしまったことだ。

もともとラオスは、いつか旅してみたいと何年も前から思っていた国だった。タイ取材の時にはラオスとの国境の近くにある街も取材するから、文字通り、ラオスの目の前までは何度も行ったことがある。ただ、実際に訪れるチャンスはなかなかなくて、僕の場合、どうしてもラダックやアラスカの方が取材の優先順位が高くなってしまうから、このままだとラオスにはずっと行きそびれたままになってしまうのでは、と思っていた。

そんな折、スターアライアンスのマイルがそこそこ貯まってきて、時期さえ選べば、東南アジア方面までならタダで往復できる状況になった。1月は東南アジアでは乾季のオンシーズン。ここで使わなければマイルの一部の有効期限も切れてしまう。なので、関係各所に頭を下げて、ラオスに行く計画を進めることにした。個人的な旅ではあるけれど、現地で体験したことは写真と文章にまとめて、「BE-PAL」のWeb連載などで発表するつもりだ。

正直、灼熱のタイ取材から戻ってきたばかりの今の時点では、また東南アジアか……と思わなくもないのだが(苦笑)、未知の国を旅することを想像すると、やっぱり気持が昂まってくる。しかしまあ、その前に、日本での仕事だな。まじで何とかせねば。

とりあえず、忙しい

帰国して、十日と少々。とりあえず、忙しい。

帰ってきてすぐにタイで撮った写真を現像して整理し、リサーチしてきた情報と一緒にまとめて編プロにさくっと送ったまではよかったが、今、目の前に立ち塞がっているのは、来年春に出す新しい本の編集作業。ある程度予想はしていたが、とにかく手間がかかる。これ以上もたついてると、まじで関係各所に大迷惑をかけてしまう(汗)。

今月は大学案件の取材も入るとすでに予告されているし、正直、かなり焦り気味。まあでも、この本を作れるのは自分しかいないし、頼れるのも自分しかいないから、やるしかない。がんばるべ。

ドライマンゴーのヨーグルト漬け

タイから日本に帰国する前、何人かの知り合いへのおみやげと、一袋は自分用に、ドライマンゴーを買った。空港の売店で買うと高いので、バンコクの宿の近くのショッピングモールにある中華系の乾物屋で、ごくオーソドックスなやつを。

ドライマンゴーは酒の肴とかにそのままかじっても普通にうまいが、何かひと工夫して食べるレシピはないものか、と検索してみた。すると、プレーンヨーグルトに1日浸しておく、という食べ方が結構人気なのだという。簡単なので、スーパーでヨーグルトを買ってきて、やってみた。

……すげえ。これ発明した人、天才か。

ヨーグルトにドライマンゴーを1日漬けると、水分がほどよくマンゴーに移って、まるで生のマンゴーのような食感に戻るのだ。それでいて風味は濃縮されていて、うまい。その風味は水気の抜けたヨーグルトの方にも移っていて、それもまたうまい。一緒に食べるとさらにうまい。ものすごく贅沢なデザートを食ってる気分になる。

もちろん、素材のドライマンゴー自体の良し悪しにも味は左右されるとは思うが、程度のいいドライマンゴーが手に入ったら、ぜひ試してみてほしい食べ方だ。ほんと、まじでびっくりした。

夕方6時のタイを撮る

今年のタイ取材では、過去4年間とちょっとだけ違う試みをしていた。

毎日、日中の取材ノルマを終えると、僕はいったん宿に帰って汗でどろどろの身体をシャワーで洗い、少しデスクワークをしてから虫除けスプレーを吹き付け直し、だいたい夕方6時頃、晩ごはんを食べにまた外に出かけていた。その時、カメラにつけていたのは、50mm F1.8の単焦点レンズ。今回の取材中、個人的な作品の撮影は、夕方6時前後に50mm F1.8で、基本的に絞り開放で撮る、という縛りを自分に課していたのだ。

理由はいくつかある。個人的に、一日のうちでタイが一番タイらしい表情を見せると感じるのが、日没前後のこの時間帯。暮れていく空にうっすらと青みが残るくらいのタイミング。昼間の暑さも少し引いて、人々が街に出てきて、露店や食堂がにぎわい出す。僕自身、この時間帯のタイの街の雰囲気が好きだから、というのもある。

50mmの単焦点レンズを絞り開放にしていたのは、南国特有の湿気をたっぷり含んだ空気のうるみのようなものを捉えたかったから。パキッとシャープに撮るのではなく、ぽやんとした感じの写真を撮りたかった。構図にしてもあまりきちんと決め込まず、かなりラフな感じで、ぱしゃぱしゃとスナップ感覚で撮っていた。少々手ブレしてもいいくらいのつもりで。

実際にこういう縛りをつけて撮ってみて、新鮮というか、写真の面白さをあらためて教わったような気がしている。いつもの自分のやり方と違うアプローチにすることで、技術的、感覚的に気付けたことがたくさんあった。写真も、日々是勉強だなあ、と思う。