Tag: Society

守られないマニフェスト

この年の瀬のせわしない時期に、総選挙があるらしい。たぶん誰もが「なんで今?」という気持だと思うが、各政党からマニフェストというか公約というものが発表されている。

日本でのマニフェストとは、言うまでもなく、当選したら実現させる政策をまとめたもの。有権者に対する約束である。でも、特に最近、このマニフェストは、まったくといっていいほど守られていない。野党はおろか、与党ですらまともに取り組まないどころか、反故にして正反対の政策を実行したりする。選挙の時は耳ざわりのいい言葉を並べておいて、当選したら、そんな約束事などどこ吹く風。そりゃ、誰もがげんなりして当然だ。

投票したくても、投票したいと思えるまともな政党が、正直、一つも見当たらない。投票率が下がるのもむべなるかな。というか、与党は自分たちが有利になるように投票率を低く抑えたいから、わざわざこのクソ忙しい時期に総選挙に持ち込んだふしもある。

行きますよ、投票には。国民の権利だし。行くけど‥‥誰に投票したらいいの? 消去法で選ぶしかないような選挙、いいかげん何とかしてほしい。

スープ割り

午後、南大沢で、ひさびさに大学案件の取材。帰りに吉祥寺で途中下車して、晩飯につけ麺を食べる。

つけ麺の麺を食べ終えた後につけ汁をスープで割ってもらう「スープ割り」というシステムを知ったのは、確か23歳くらいの時だった。今も荻窪の南口にあるはずの、丸長というお店。おひるにバイト先の社員の人たちに連れて行かれて、「ここではな、食べ終えた後につけ汁をスープで割ってもらうんだぞ」とちょっとうれしそうに教えてもらったのを憶えている。あの頃はまだ、つけ麺を出すお店はそんなに多くなかったんじゃないかな。丸長のつけ汁はとても濃厚で、スープで割ってもらったのをちびちび啜る時の充足感は格別だった。

あれから東京では、いや他の地方もか、つけ麺を出すラーメン屋さんがものすごく増えた。つけ麺専門店なんてのも当たり前。で、つけ麺のノウハウもこなれてきたのか、最近はスープ割り用のスープを魔法瓶に入れて、カウンターに並べて置いてある店ばかりになった。確かにお店側としては、いちいち客から器を受け取ってスープを足して返すより、客の側で好きに作ってもらった方が、オペレーション的には楽に違いない。客の側でも、その方が気楽でいいと思ってる人が多いのかもしれない。

でも‥‥ちょっと味気ないな、という気もする。麺を食べ終えた後、「すみませ〜ん。スープ割り、お願いします」と店員さんに声をかけるの、嫌いじゃなかったから。なじんできた儀式というか段取りが端折られてしまうのは、何だか少しさみしい。どうでもいいといえば、どうでもいいことなのかもしれないけれど。

自撮りにトライ

世間では最近、「自撮り」が流行っているらしい。英語圏では「セルフィー」と呼ぶのかな。要するにスマホとかで自分の写真を撮って、それをSNSにアップしたりすること。

この間、取材で旅していたタイでも、現地の若い子たちが至るところで自撮りをしていた。観光地ではもちろん、なんでそこで?というような突拍子もない場所とタイミングでも。棒の先にスマホを取り付けて使う「自撮り棒」なるアイテムも大人気で、どこに行っても使っている人を見かけた。

僕自身は、もともと自分自身を写真に撮ることにはまったく興味がなかったのだが、これだけタイで自撮りが流行ってるのを目の当たりにして、何か面白いと思える要素があるのかもしれない、と、とりあえず試してみることにした。タイのチェンマイのホテルで、これから取材に出かけるという時に、鏡に映った自分の姿をiPhoneで撮ってみたのだ。

‥‥まったく何にも面白くなかった。写真に写っていたのは、Tシャツ短パン姿のひょろい身体にボロいカメラバッグをぶらさげた、どこからどう見てもただのしょぼくれたおっさんでしかなかった。当たり前だけど。

自撮りはどうぞ、自分に自信のある方々でおやりになってください。僕はもういいです(苦笑)。

旅と平和

今年のタイは、去年の同じ時期と比べて、旅行者が極端に少なかった。

去年から続くクーデターなどの政情不安は確実に影響しているだろうし、外国人に対するビザの規則が一時厳しくなって、いわゆる不良外国人が居づらくなったこともあるのだろう。今の暫定政府もさすがにこのままではまずいとわかったのか、ビザの規則を緩和したり、各地でキャンペーンを張ったりして、観光業の再起に躍起になっている。また上向いてくれるといいけど。でないとガイドブックが売れなくなるので困る(苦笑)。

それにしても、あらためて思うのは、旅行業界というのはつくづく平和産業で、ちょっとした不安要素にもたやすく左右されてしまう存在なのだな、ということ。エボラ出血熱、イスラム国、香港のデモ‥‥。そうした出来事の一つひとつが、「ちょっと旅でもしてこようかな」という気持にブレーキをかける。僕が携わっている仕事も、そんな波にいとも簡単にさらわれてしまう。

いろいろ考えさせられること、考えなきゃいけないことが、たくさんある。

道を訊かれる

午後、目黒で打ち合わせ。来月下旬から始まるタイ取材について。約四週間、再びあの暑い暑い日々が始まるわけだ。僕の夏はいつになったら終わるのだろう。

打ち合わせの後、用事で恵比寿から代官山に向かって歩いていると、前方から歩いてきた白いシャツの爽やかな青年に「すみません、代官山駅まではどう行けばいいですか?」と訊かれた。「逆方向ですよ。あっち行って、そこ曲がって、さらに曲がったところ」と言うと、「ありがとうございます!」と颯爽と歩き去っていった。

たぶん僕は、普通の人よりも街の中で道を訊かれたりする回数が多い方だと思う。家の近所を歩いていても、都心を歩いていても、時には自分自身もよくわからない異国の町を歩いていても。ラダックのレーにいた時とか、地方から出てきたラダック人にまで道を訊かれたし(苦笑)。

「こいつは与し易し」みたいな敷居の低い感じのオーラが出てるのかな。まあ別にいいけど。