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カレーの匂い

先週末の連休の時、街では四方八方からクリスマスソングが流れ、あちこちでサンタ帽をかぶった人がケーキやシュトーレンやチキンなんかを売っていたけれど、今週はすっかり入れ替わって、年の瀬のせわしなさがひたひたと押し寄せてきている。一週間後には、元旦か。やれやれ。

昨日の夜は、カレーを煮た。うちでの定番、ジャワカレー辛口。ストウブの鍋でタマネギのみじん切りを15分ほど炒め、豚バラの角切りとニンジンとジャガイモを加えて炒め、分量よりやや少なめの水を加えて、弱火でコトコト20分。いったん火を止めてルウを溶かし、再び弱火で時々かき混ぜながら10〜15分。おいしくできた。

カレーを作った後、家の中にカレーの匂いがしばらく漂うのが、なんとなく好きだ。自分の家で、普通のカレーをごく当たり前に作って食べられることの、幸せというにはおおげさだけど、ありがたさみたいなものを感じる。こういう何気ないものを大事にしていきたいなあ、と最近よく思う。

底冷えよサヨウナラ

のどを傷めて体調をちょびっと崩したりしてるうちに、季節はすっかり冬になってしまった。部屋で机に向かって仕事をしている時も、はんてんを羽織ってないと、うすら寒く感じる。

三鷹に住んでいた頃は、鉄筋コンクリートのマンションの1階で、日当たりもさほどよくなかったから、夏は涼しかったけど、冬はめっぽう寒かった。特に底冷えがものすごくて、しんしんと冷気のたまる部屋の中で、極地仕様の分厚いウールのソックス(なんでそんなもの持ってるんだという指摘はさておき)を重ね履きし、仕事机の下でデロンギのオイルヒーターをフル稼働させてしのいでいた。

今年引っ越してきた西荻窪の部屋は、マンションの3階にあるので、去年までのような殺気じみた底冷えは感じない。加えて、なんと、床暖房がある。うっかり頼りすぎると電気代がやばいことになるので最小限の使用にしているが、文明の利器のありがたみをしみじみ享受している今日この頃である。

……まあ、それも例によって、今のうちだけなんだけど。1カ月後には、インドだし……。

エクトプラズム

数日前からのちょっとありえないような気温の乱高下のせいか、のどの調子が悪くなった。風邪というほどではないが、のどの入口あたりのいがらっぽさが消えないのだ。

まあそのうち治るだろう、と呑気に構えていたのだが、金曜の昼にインタビューを受けた時、2時間近くしゃべってるうちにどんどん悪化して、その日の夜には、完全にがらがらのしゃがれ声になってしまった。取材の場でしゃべることを見越してケアをしておくべきだった。迂闊。

すると、同居してる相方が、次から次へと自分ののど治療アイテムを持ってきてくれた。相方は人前で割と声を張って話す機会の多い仕事をしていて、彼女自身も冬場はよくのどを傷めるので、そういうアイテムを豊富に持っているのだという。うがい薬。何種類もの漢方薬の粉末。いただきもののマヌカハニー。そして真打は、ポータブルの超音波吸入器。

この超音波吸入器は、水を入れてスイッチを入れると、白い水蒸気が噴出される。口をあけてそれをのどに向けると、のどの奥にうるおいを届けることができるというアイテムだ。実際に使わせてもらうと、なかなか気持よくて、のども楽になる気がする。使用中の姿を鏡とかで見ると、口から白い蒸気がぼわわわとこぼれていて、何とも言えないシュールな光景なのだが。

そんなわけで、僕はこの超音波吸入器を「エクトプラズム」と呼んでいる。

失われた季節感

4週間ぶりにタイから戻ってきた先週末。ひさしぶりに東京の街を歩いていて、あちこちにカボチャやらモンスターやらが飾られているのを見て、「はっはっは、ハロウィーンなんてまだまだ先じゃないか。みんな気が早いなあ」と、完全に素でそう思い込んでいたのは僕だ。まだまだ先どころか、まさに真っ只中だったじゃないか。脳みそから完全に季節感が失われている。

僕の場合、毎年のことながら、ハロウィーンのこの時期が一年のうちで一番日焼けしている。行きつけの理髪店では、「メガネの跡だけ残ってるじゃないですかあ」などと、毎回ケラケラ笑われながら黒焦げっぷりをいじられる。ひさしぶりに長袖の上下を身につけると、皮膚がもそもそして何だか落ち着かない。胃もあったかい食べ物にはなんとなく落ち着かなくて、いまだに「あー、そうめん食べたいなあ」などと思ってしまう。

何から何まで失われている季節感。やれやれである。

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J.D.サリンジャー、柴田元幸訳「ナイン・ストーリーズ」読了(正確に書くと、読んだのは同じ内容の「モンキービジネス 2008 Fall vol.3 サリンジャー号」なのだが)。野崎孝訳の「ナイン・ストーリーズ」を読んだのは、もう思い出せないくらい昔で、家の本棚にあったその本の奥付を見たら、昭和62年5月刊行の30刷だった。平易でみずみずしい言葉で綴られた柴田訳であらためて読み通してみると、昔は気付けなかった会話や場面描写の緻密なディテール、何気ない言葉の背後に潜む現実の重さなどに、はっとさせられる。その中でも、シーモア・グラースが主人公の最初の作品「バナナフィッシュ日和」は、自分でもびっくりするくらい、構成や内容を鮮明に覚えていた。それだけインパクトのある、サリンジャー自身にとっても意味のある作品だったからだろうか。

嵐の前の日曜日

タイへの出発前日。今日は割とのんびりした、いい一日だった。

ゆっくり寝て起きて、先週恵比寿のヴェルデで買った豆でコーヒーをいれ、三鷹から西荻窪に移転したパン屋トキドキの食パンで朝ごはん。午前中のうちに荷造りを仕上げ、家のすぐ近くのパスタ屋(ブリュードッグのビールが4種類も揃っている!)でナポリタンとジャックハマーのおひる。駅前のスーパーで少し買い物をして、午後は家で仕事関係のメール書き。夕方から米を炊いて、晩ごはんは豚バラのしょうが焼きと、長ネギとお揚げの味噌汁。

しかし、そうこうしてる間にも、台風24号はひたひたと迫ってきている。たぶん、今日の真夜中頃に東京に最接近するのだろう。今日の昼過ぎには、首都圏のすべての在来線が20時で運転を取りやめると発表されていた。ある意味、日曜だからできる判断なのだろうが、それだけやばいレベルの台風が近づいてきてるということでもある。

明日、どうにか無事に出発できたら、しばらくこのブログの更新はお休みします。帰国は10月27日(土)の予定。