梅雨の合間をぬって、奥多摩の高水三山を歩いてきた。山の高さは一番高い岩茸石山でも793メートルとやや物足りないが、JR青梅線の軍畑駅からすぐに登れるし、帰りも御嶽駅から電車に乗れるので、ラクでいいかな〜、と思って選んだ(笑)。
空模様はあいにくの曇天で、雨こそ降らないものの、湿った雲が空にぺったりと貼り付いている。今日は山上からの眺望はあきらめて、ラダックでのトレッキングのための足慣らしと割り切ることにした。
ここ数年、ラダックやザンスカールで、かなりハードなトレッキングを何度となく繰り返してきた。その体験は他とは比べられないほど素晴らしいものだったけど、その一方で、僕が普段暮らしている東京近郊にも、美しい自然の残る場所はたくさんある。そういった身近な自然を見直す意味で、今年は東京にいる間も山を歩く機会を増やそう、と思っている。
山歩きの装備で、以前からずっと探していたのが、小型のバックパック。日帰りメインで、泊まるとしても小屋泊まりで一泊程度を想定して、20リットルくらいの手頃なものを物色していたのだが、先日、神保町の石井スポーツで偶然見つけたのが、ボレアスというメーカーのラーキンというバックパック。そのスマートさに完全に一目惚れして、衝動買いしてしまった。
ボレアスは、たぶん2011年頃に設立されたばかりの新しいメーカーだと思うが、アウトドア用の機能を十二分に持ちながら、街でも使えるバックパック、というのがコンセプトらしい。僕が買ったラーキンも見た目はシンプルな筒型のバックパックだが、下の方が細くなっているので、中にものを詰めると自然に重心が上の方に来る。バックパックは、重心が上にあると背負った時に軽く感じられるのだ。容量は18リットルだが、ウインドブレーカー、レインポンチョ、タオル、水筒やペットボトル、携帯食糧などを詰めてもまだ余裕があった。
上部と左右にジップポケットがあるほか、正面にあるストレッチ素材の大きなポケットがとても便利。普段使わないギアループの類は、スリットの中に隠れる構造になっている。EVAフォームとメッシュを使った背面パネルやショルダーハーネスは蒸れにくい構造になっていて、実際に使ってみても快適だった。重量は500グラム程度ととても軽く、造りは華奢なもののそれなりにしっかりしていて、ウルトラライト系のバックパックのようにはらはらする感じはない。
東京近郊での山歩きや自転車での遠乗りなど、僕の使用目的にとっては非の打ちどころのない、優秀なバックパック。もっと大きなバックパックを買い替える時は、またボレアスにしようかなと考え中。ただ、そういう大型のタイプを海外旅行に使う場合、空港で預ける時に手荒に扱われると、強度的にちょっと不安があるかな。一回り大きな袋にくるんで預けるとか、作戦を立てる必要があるかも。
仕事もだいぶ落ちついたし、梅雨入りする前に、もう一、二回くらい山歩きをしようと思って、出かけてきた。今回選んだのは、陣馬山から高尾山までの縦走コース。平均標高が低いのはやや物足りないが、家から近いし、縦走にすればそれなりの距離を歩けるので、夏に向けて身体を絞るにはいいかな、と考えた次第。
高尾駅北口から陣馬高原下行きのバスに乗り、学校に向かう大勢の小学生たちと一緒に小一時間。終点で降りて、和田峠に向かう道を登りはじめる。途中に看板があるところから、陣場山新ハイキングコースという細い登山道に入る。杉林の中に、ホーホケキョ、とウグイスの鳴き声が響く。行手の登山道に、木漏れ日の光がこぼれていた。
昨日の午後は、bayfmの「THE FLINTSTONE」という番組の収録のため、海浜幕張にあるbayfm本社に行った。ラダックのガイドブックの件で、話をさせていただくことになったのだ。
スタジオに入ってご挨拶をし、マイクテストも兼ねて雑談をしていると、いつの間にか収録が始まり、あうあうしてるうちに終了。もはや緊張してたのかどうかもよく覚えてないくらい、記憶が断片的(苦笑)。俺、ちゃんとしゃべれてたのかな‥‥。でも、DJの長澤ゆきさんの話術はさすがだった。人前に出たりしゃべったりする人ってすごいなあ、と改めて思う。
緊張の収録を終え、ほっとして電車に乗って都心に戻る。時間つぶしに立ち寄った神保町の石井スポーツで、あるデイパックに一目惚れ。ボレアスというメーカーのラーキンという製品で、シンプルで潔いデザインと背負い心地の軽さが理想的。これも出会いだと、即決して買ってしまった。
夜は吉祥寺で、今回のガイドブックでお世話になった旅行会社の知人の方々と飲み会。旅のあれこれを話しながら、気楽に酒が飲めて、楽しかった。昼間の緊張から解放されたのも、酒がうまかった原因かもしれない。いろいろありがたいことだなあ、と思う。
この間から、奥多摩や丹沢を歩いてみて、やはり日本の山は素晴らしいなあ、と再認識している。
うっすらと霞がかかる山並みの風景はとても美しいし、緑は豊かで、覚えきれないほど多種多様な草木がひしめいているし。鳥はさえずり、猿は悠々と行進し(笑)、生命の気配にあふれている。その一方で、登山道は細かいところまで丁寧に整備されていて、老若男女誰でも歩けるように、至れり尽くせり。当たり前かもしれないけれど、日本らしいのだ、日本の山は。
でも、そういう日本の山のよさを感じてみると、あらためて、ラダックの山の中を歩いてきた自分の体験が、いかにかけがえのないものだったかということもわかる。とてつもなく苛烈で、だからこそ美しい自然の中で、ひっそりと息づく村や、悠然と暮らす遊牧の民を訪ね歩いた日々。考えてみれば、何という贅沢な時間だったことか。
日本の山で穏やかな体験をした後だからこそ、戻りたくなる。あの場所に。