Tag: Outdoor

極北の風

今回のアラスカ取材では、いつも行き当たりばったりな僕にしては珍しく、かなり周到に装備を吟味しながら準備した。撮影機材はもちろんだけど、それと同じくらい慎重に検討したのが、防寒具やテントだった。

二年前に母の付き添いの団体旅行でデナリ国立公園を訪れて、短いハイキングに参加した時、特に強く印象に残ったのは、風の冷たさだった。朝晩はともかく日中はそれほど気温は低くないはずなのだが、とにかく風が、氷のように冷たい。原野で吹き晒されると、体温をごっそり奪い去られてしまう。中途半端な装備で臨むとつらい思いをすることになるのは目に見えていた。

服はもこもこのダウンジャケットではなく(薄い布地だと灌木の枝にひっかかって破れやすい)、ゴアテックスのハードシェルの下に薄手のインナーダウンとソフトシェル、足はトレッキングパンツの下にタイツ。ニットキャップや手袋など、身体の末端を保温するものも重要だ。テントも風に強いしっかりしたタイプをと、アライテントのエアライズを選んだ。寝袋はひさしぶりに、冬のラダックやチャダル・トレックで使った厳寒期用のものを持ち出したが、十二分に役立ってくれた。

それにしても、ワンダーレイクを吹きすさぶ風は、どうしてあんなに冷たいのだろうか。国立公園の入口あたりとは、同じような天気の日でも、風の冷たさがまったく違っていた。あの大きな大きな山‥‥デナリに近づけば近づくほど、風も冷たくなるのかもしれない。わからないけど。

旅と倹約

時と場合にもよるけれど、旅は、ただお金をかければいいってものではないし、ひたすら倹約すればいいってものでもないと思う。

アラスカ取材を実行するにあたって、一番の懸案は、クマでも寒さでもなく、予算だった。夏のアラスカは、宿代も物価もやたらめったら高い。今回、デナリ国立公園ではワンダーレイクのほかに公園入口でもキャンプをしてできるだけホテル泊を減らし、アンカレッジではダウンタウンで最安クラスの宿に泊まった。まあ、そのあたりのことは僕はまったく苦にならなかった。テントで寝袋にくるまって寝るのは好きだし、アメリカの安宿はインドならかなりの上宿だから。

その一方で、アンカレッジやデナリ国立公園入口のレストランなどで食事をする時は、さほど節約しようとは考えなかった。サーモンやハリバット、キングクラブといったアラスカのシーフードはハズレが少ないし、地元のマイクロブリューワリーが造るビールも濃厚でうまい。だから夕食の時は、シーフードのワンプレートにビールを一杯つけるようにしていたし、朝食や昼食の時もあまり値段を気にせずに注文していた。

旅の予算の上限はもちろん頭に入れておかなきゃならないけど、倹約に固執してあれこれ我慢するあまり、気持がしぼんでしまうような旅の仕方は、個人的にはちょっともったいないなと思ってしまう(僕自身、学生時代の最初の一人旅がそんな感じだった。本当に予算が少なかったからだけど)。無駄遣いに気をつけつつ、お金を少し余分にかけることでよりよい経験ができて気持がぐっと高まる機会があるなら、そこはお金をかけるべきだ。

アンカレッジのバーのデッキで、夕暮れの空に伸びる飛行機雲を眺めながら飲んだスタウトの味、忘れられない。

八方尾根にて

happo
二泊三日の日程で、安曇野で実家の人間たちと会ってきた。本来は妹の一家もほぼ全員来る予定だったのだが、台風の影響で姪っ子のブラスバンド部の発表会が順延されて日程がかぶってしまったので、結局、安曇野まで来たのは母と甥っ子1号だけだった。

両親の監視もなく、ライバル(?)の姉と弟もおらず、母と僕に甘え放題の自由を謳歌できるはずだった甥っ子1号だが、安曇野に到着したとたん、成長痛なのか何なのか、朝になると「あしがいたい、おなかがいたい」とぐずぐず泣き出す。昼を過ぎるとある程度痛みはひくようなのだが、翌朝になるとまた同じ状態のくりかえし。本人がやりたいと言っていた僕とのキャッチボールやサッカーも、結局できずじまいだった。

滞在二日目の朝、母はそんなパワーダウン状態の1号と僕を車に乗せ、白馬連峰の八方尾根まで連れていった。ゴンドラを三つ乗り継いで八方池山荘まで上がり、そこから片道1時間ちょっと歩いて八方池まで行くというのが母のプラン。でもゴンドラを降りた後、1号は明らかに気が進まなさそうだったので、「歩きたいの、歩きたくないの、どっち?」と聞くと、「あるきたくない」と。それなら仕方ない。そのままゴンドラで引き返すことにした。

昔、姪っ子が小学校低学年だった頃、僕の父と母と一緒に八方池まで歩いて往復したと聞かされた1号は、くやしそうに「ねーちゃんはリュックをしょってなかったからじゃ。ぼくもリュックなしであしがいたくなかったら、らくしょうじゃ」と言っていた。そんな僕たち三人の頭上を、ふわり、とパラグライダーに乗った人が舞い上がっていった。

食糧の買い出し

ぽんこつな状態で過ごすのにもちょっと飽きてきたので、午後、吉祥寺に出かける。月末からのアラスカ旅行で必要になる食糧の買い出し。

今日買った食糧のほとんどは、山菜おこわや、パスタ、スープなどフリーズドライのもので、あとはインスタントラーメンなど。アウトドアショップで売られている登山用に適したパッケージのものだ。食事としてはいささか味気ないが、場所が場所だけに仕方ない。

日程表からあらかじめ必要な数をそれぞれ算出しておいたのだが、実際に買ってみると結構な量で、レジではお姉さんたちが二人がかりでチェックして袋詰めしてくれた。たぶんその二人には「この人、二、三人のグループでお盆休みにどこかの山へ、二泊三日くらいの縦走に行くのね」とでも思われたんじゃないかと思う。

すみません。一人ぼっちで合計九日間、アラスカくんだりでキャンプを張る物好きです。

スクワット再び

二週間ほど前から、風呂上がりにスクワットをするのを再開した。何しろ、あまりにも身体がなまっていたので。

スクワットは、いつでも気楽にできる割に、ちゃんとしたやり方でやると、エクササイズとして非常に効果がある。人間の身体の筋肉の3分の2は脚についているのだが、スクワットはそれらの筋肉を適度な負荷でまんべんなく動かすことができるからだ。

ただし、「ちゃんとしたやり方で」というのがポイントで、テキトーな姿勢でせっかちにやったりすると、効果がないどころか、膝とかを痛める危険性もある。背筋を伸ばし、腕や上半身の反動を使わないようにして、ゆっくり、じわじわと身体を上下させるといい。

今回、最初は30回程度でも後で軽い筋肉痛が出ていたが、今は50回でもまったく余裕。ちゃんとやれば、短期間でもしっかり効果が出る。もうちょっと続けて、近郊の山歩きに行ってもへばらないようにしておこう。