1月に成田からデリーに向かうエアインディアの機内で観たインド映画、3本目はヴィディヤー・バーラン主演の「Tumhari Sulu」。2018年のIFFJで「あなたのスールー」という邦題で上映された作品。当時、僕はタイ取材の真っ只中で観ることができず、年末年始のキネカ大森での再上映ラインナップにも入ってなかったと思うので、今回が初見だった。
才気はありながらも専業主婦の立場に甘んじているスールーは、ひょんなことからラジオ局のDJのオーディションを受けることに。深夜枠の番組を担当することになった彼女は、そのセクシーボイスとリスナーとの気の利いたやりとりで、瞬く間に人気DJになる。しかし、仕事で苦労する夫や、スールーの人気ぶりを快く思わない周囲の親戚、学校で問題を起こしてしまった息子など、次から次へとトラブルが起こり……。
この作品、何と言っても、ヴィディヤーの演技が最高。美人といえば美人だけど、ちょっとふっくらした体型と物腰が専業主婦のリアルな雰囲気をよく出していて、そこからの深夜番組DJとしての芝居がかった超セクシーボイスのギャップがすごい(笑)。こんな振れ幅のある演技を苦もなくこなせるのは、彼女しかいない。
女性の自立や社会進出というテーマはインド映画でも最近よく取り上げられるが、この作品では単なるサクセスストーリーとしてはなかなかうまく事が運ばない、社会との関わりのしちめんどくさのような面もよく描かれていた。おとぎ話のようなところもありつつ、でもリアルなほろ苦さもあり、いろんな面から楽しめる作品だと思う。