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仕事の後の甘やかし

まるで台風のような、生ぬるい強風が吹き荒れた日。終日、部屋で仕事。

先週収録したインタビューの音声起こしがようやく終わり、それを基にした原稿の執筆に着手。言葉を選び取って磨きをかけるうちに、たぶん文字数は半分以下になってしまうと思うけど、単調で果てしのない音声起こしに比べれば、言葉を研ぎ澄ませていくのは、ずっと愉しい作業だ。

とはいえ、異様に集中力を要求される作業でもあるので、数千字も書いていると、脳がめっちゃ疲れる。こういう時は、仕事の後の甘やかしが必要だ。今宵のおやつは、ひさびさに買った、レヴェのポムドテール。しかも2個。じゃーん。

深夜、一人ぼっちの部屋でうれうれとミルクティーをいれている、しがないおっさんであった。

普段の倍

午後、リトスタへ。今作っている本に必要な、ある方へのロングインタビューの収録。

長尺の取材だと特にそうなのだが、僕の場合、誰かにインタビューをする時は、普段の倍、脳みそを使う。頭の中の半分は、相手の方の話を聞きながら相槌を打ったり問いかけを挟んだりしつつ、残り半分では、この展開で原稿として大丈夫か、何か足りない要素はないか、そのために必要な質問は何かと、必死になってぐるんぐるん考える。そんな状態なので、取材が終わる頃には頭が疲れてぼーっとなって、考えごとをするのがしんどくなるくらい。

今日の取材はうまくいったのかな‥‥。「楽しかったですよ」と言っていただけたのは、ありがたかったけど。原稿、がんばらねば‥‥。

冬が来ていた

ここしばらく途切れなく続いていた連絡業務や打ち合わせも、今日になってやや小康状態。午後、ひさしぶりに散髪へ。外は灰色の雲がたれこめ、じめじめと肌寒い。セーターに薄手のダウンを羽織って出かける。

理髪店では予想通り、タイ帰りで妙に日焼けしてることを店員さんにいじられる(苦笑)。特に首の後ろ側のあたりが未だに真っ黒らしい。ともあれ、髪を切ってもらってさっぱりしたところで、まほろば珈琲店まで歩いてコーヒー豆を補充。帰りにたかねでたい焼きをひとつ買い、歩きながら尻尾からかじる。中の餡から湯気がたちのぼる。

交差点での信号待ちの間、両手を上着のポケットに突っ込んで、空を見上げる。冬はもうそこに来ていた。

いってらっしゃい

昨日の夕方、三鷹南口にある理髪店へ。1カ月ぶりの散髪。

この理髪店には結構昔から、1、2カ月に一度くらいお世話になっているのだが、数年前から「仕事でしょっちゅう海外に、しかも結構エクストリームなところに行ってる人」という認識をされるようになった。そりゃそうだ。しばらく顔を見せないと思ったら、日焼けして頰のこけた顔とぼっさぼさの頭で現れるのだから。

「この間はどこに行ってたんでしたっけ? アフリカ?」
「そうです。ライオンとお近づきになってきました」
「ははは。今日はどうします? 涼しくなってきたから長めに残しときます?」
「いえ、来週から1カ月ほどタイに行くので‥‥夏仕様で短くしてください」
「また行くんですか。ずっと日本にいないですねえ」

お会計を終えて店を出る時、「いってらっしゃい!」と後ろから声をかけてもらった。いってきます、そろそろ。

近所徘徊

7年間ほど使い続けてきたデスクライトが壊れてしまい、修理代も異様に高くついてしまうとわかったので、名残惜しいが廃棄することにした。捨てるにはかなり大きめの有料ゴミ袋が必要だ。ひと袋ずつバラ売りしてる店で調達しようと、夕刻、晩ごはんついでに出かける。

ネットで調べると、大きめの有料ゴミ袋をバラ売りしている店は、近所に3軒。どれもスーパーなどではなく、小さな個人経営の店のようだ。1軒目に訪ねた薬局は、日曜だからかお休み。そこからiPhoneの地図を見ながらてくてく歩き、今まで通ったこともないような細い路地を抜け、2軒目の酒屋へ。しかしそこもお休み。3軒目はさらにぐるっと回ったところにある文具店らしい。

再びiPhoneの地図を見ながらてくてく歩いてると、頭上の電線に、何百羽というムクドリが。この辺にあるNTTの電波塔周辺が、彼らの溜まり場となっているようだ。電磁波に惹かれてるのか、それとも他に理由があるのか。「こわいねー、こわいねー」と、おばちゃんが飼い犬のポメラニアンに語りかけながら空を見上げている。

ようやく辿り着いた3軒目は、文具店なのかタバコ屋さんなのか判然としない物件で、ものすごく狭い店内に老夫婦がひっそり座っていた。ゴミ袋を所望すると、机の引き出しから無造作に一枚引き出して、ほいと渡してくれた。

ほんの小さな旅のような、近所徘徊だった。