Tag: Life

選んだのは本だった

一昨日ラジオ番組の収録をしてきたばかりだが、来月末にはまた別の番組の収録がある。自分について人に説明するのにしっちゃかめっちゃかになるとまずいので、収録前には、これまでの出来事を書き出して整理してみたりしていた。

いろいろふりかえってみてあらためて思うのは‥‥僕は、編集者とかライターとか写真家とか、そういう職業に就くことを目的にしてきたのではなく、自由に旅をしてそれを仕事につなげたいという生き方をしたかったのでもなく、ただただ、本を作りたかっただけなのだ、ということ。自分が本当に心の底から大切だと思えることを、本という形にして、それを人に伝える。二十代初めの青二才の頃から、ずっとそうだったのだと。

それは生き方とすら呼べない、独りよがりで単純な衝動でしかないのかもしれない。でも、僕が自分の人生を費やすのに選んだのは、本だった。それには、ひとかけらの後悔もない。

思い出して、笑って

午後、編集さんと待ち合わせて、代官山蔦屋書店へ。九月に森本さんが亡くなった後、タイ取材のためにずっとお店に行けないでいたのだが、ようやく今日、書店員の方に時間を取っていただいて、おくやみのご挨拶に。

二階のラウンジで一時間ほど、来月上旬に予定されているお別れの会の話や、森本さんや本やお店のよもやま話をしたのだけれど、不思議としめっぽい感じにはならなくて、あれやこれやを思い出しては結構笑っていたような気がする。きっとそれは、森本さんのお人柄もあるのだろう。

僕も、この世から立ち去った後、誰かに笑って思い出してもらえるような人になれたら、と思う。まあ、どっちかというと「あいつ、つくづく無茶ばっかやってたよね」と、あきれ笑いで思い出される方だと思うけど。

巻き戻るもの

終日、部屋で仕事。ここ最近、ずっとかかりきりだったタイ取材のデータチェックの取りまとめや写真のセレクトがようやく終了。明日の打ち合わせにも間に合いそうだ。

帰国して以来、何かといろいろ気忙しかったけれど、それも四週間以上休みなしで駆けずり回っていたタイでの日々に比べれば、だいぶマイルドな状態だったと思う。気候も穏やかで、ごはんはおいしいし、たっぷり寝られるし。家で自炊したり、コーヒーをいれたりしてると、いろんなものが本来の位置に巻き戻っていくような気がする。

まあ、すっかり日本時間に巻き戻ったら巻き戻ったで、そのうちまたそわそわしてきて、どこそこに行きたいなどという妄想が頭をもたげてくるのだろうな。困った病だ(苦笑)。

置き忘れてきたもの

昨日は帰国早々打ち合わせ的な集まりがあったりして、時差の抜け切らないボケボケな状態で出かけてきたのだが、今日は丸一日家にいられたし、ゆっくり、のんびり過ごして、だいぶ身体もしゃんとしてきた。

しかし、何というか、気持は未だにどこかふわふわと宙を漂っていて、まったく地に足がついてない感じだ。心の中の一部分を、彼の地に置き忘れてきてしまったかのような。次はいつ、どうやって‥‥と、気がつくとぐるぐる考え続けていたりする。

どうなるんだろうな。まあ、なるようにしかならないんだろうな。

ありふれた日々に

日々を生きていると、いろんなできごとに接する。良い知らせもあれば、悪い知らせもある。時には、どうしてそんな理不尽なことに、と、やりきれない気持になる時もある。

自分自身はというと、何の変哲もないありふれた日々を過ごしている。でも、そのありふれた日々こそが、実はかけがえのないものなのだ。自分自身が今こうして生きていられるのは、本当に、たまたまだ。運がいいだけだ。ありふれた日々に手を伸ばしても届かない人が、この世界にはたくさんいる。

今こうして生きていられる自分に、残された時間でできることは何なのか、もう一度、じっくり考えてみる。