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写真を選ぶ

終日、部屋で仕事。先日依頼を受けたスピティとラダックについての雑誌向け記事に使う写真のセレクトに没頭する。

今回の記事が掲載される雑誌は、判型がA4サイズよりもさらに幅2センチほど大きいし、8ページも使えるので、写真の載せがいがある。去年から撮影し続けて以来、まだほとんど外部に発表していない写真をようやくちゃんとした形で発表できる最初のチャンスだから、いやがうえにもセレクトに力が入る。あれも載せたい、これも載せたい‥‥そしてはたと気付く。8ページも使える、ではない。8ページしか使えない、のだ。載せたくても載せられない写真の、なんと多いことか。

この記事が完成した後、これを目にした人たちは、どんな風に思うのだろう。自分が「これはいい」と思っている写真でも他人にはそうでもなかったり、そうかと思えばその逆の場合もあるから、正直、どうなることやらわからない。でも、どうにかして、届けたいのだ。あのスピティの谷を吹き抜けていた、乾いた風の感触を。

いきなりフル操業

昨日の朝、インドから日本に戻ってきた。

もともとは先週の土曜朝に戻ってくる予定だったのだが、金曜朝にレーからデリーに飛ぶはずの飛行機がレーの悪天候でキャンセルになってしまい、同じ日の夜に乗る予定だった帰国便も、二日後の日曜夜発の便に変更せざるを得なかったのだ。いつもお世話になっている日本の旅行会社のご協力のおかげでたいした出費にもならず事なきを得たが、手配がつくまではヒヤヒヤものだった(苦笑)。

今日は午後から目黒で打ち合わせ。九月下旬から四週間の予定で取り組むタイ取材について。初めての媒体だし、取材場所も行ったことのない街ばかりなのでどうなることやらという感じだが、何とかうまくやり遂げたいところ。明日も午後から大事な打ち合わせがあるので、さっきまでその準備に追われていた。帰国していきなりフル操業。まあ、ありがたいことではある。

春先に出版社に預けて以来、しばらく進捗が滞っていた新しい書籍の企画の件も、再び検討作業が動き出したという。いい答えが出るといいな。そんなこんなで、いろいろフル操業でがんばる。

ふわふわと

荷造りの最終チェックも、しばらく留守にする自宅の支度も、すべて完了。明日の昼には、成田からデリーへ飛ぶ。

出発前日の夜は、日常から切り離されてもいないけど、片足はすでにあちら側に突っ込んでしまっているような、ふわふわとした、所在ない気分になる。明日、バックパックとカメラバッグを担いで空港のターミナルに踏み込めば、すぱんとスイッチが入るような気もするけど。

海外を一カ月もうろつくのにガイドブックすら必要としない旅だけど(笑)、慣れているからといって油断せず、気を引き締めて、まずは無事に戻ってくることを考えよう。

明日から8月16日(金)頃まで、不在のためブログの更新をお休みします。

接点を作る

昨日の夜はモンベル渋谷店で、ブータン写真家の関健作さんとのトークイベントに出演した。毎度のことながら緊張したが、関さんのおかげもあって、どうにかやり遂げることができた。

あいにくの雨の中、会場には定員の60名を超えるお客さんが集まり、発売されたばかりの関さんの本を大勢の人が買い求めていた。その余波か、少しだけ持ち込んだ僕の本も早々に売り切れてしまった。会場には、僕が何かのイベントに出る時によく参加して声をかけてくださるおなじみのお客さんもいれば、イベントの前まではラダックのことをよく知らなかったのに好きになってくれたというお客さんもいて、それぞれに何だかとてもうれしかった。

昔は、物書きあるいは写真家として本を一冊作り上げてしまえば、それで任務は完了だと思っていた。でも今は、本はとても大きな成果物ではあるけれど、伝えたいことを伝えるための道具の一つでしかない、とも感じている。今回のイベントのような形でいろんな人との接点を作り、自分が伝えたいことに気づいてもらうきっかけにする。それはささやかなきっかけでしかないかもしれないが、やがてとても大きな変化につながらないともかぎらない。

だからこれからも、自分にできる範囲で、そういう接点を作る努力をしていければと思う。

マタルの味

実家から送られてきた野菜の中にグリーンピースが入っていたので、それを使って豆ごはんを作ることにした。

米をいつもより若干少なめにして、いつもの量の水を入れ、酒と塩を少し。ごはん鍋を火にかけて、沸騰してきたらグリーンピースを投入し、蓋をして弱火で炊き、蒸らせばできあがり。

グリーンピースはインドでは「マタル」と呼ばれていて、ジャガイモとグリーンピースのカレー(アルー・マタル)など、インド料理ではよく使われる野菜だ。インドの中でも一番上等なマタルは、スピティ産のものだと言われている。標高四千メートルに達する高地の村々で栽培されるマタルは、畑でもいでさやから取り出し、生のまま頬張っても、まるで果物のように甘い。去年の夏、スピティの村から村へと歩いて旅していた時、収穫に精を出す村人たちが、もぎたてのマタルをよく手づかみで分けてくれたっけ。

僕にとっては懐かしい、マタルの味。もうすぐ、またあそこで味わえるかな。