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長い付き合い

昼の間、家でタイ関連のゲラチェック。夕方までに一区切りつけて、新宿へ。ラダックの研究をしている文化人類学者の友人、宮坂さんと会う。ひさしぶりに入った陶玄房で、寒ブリの炙り刺や、あん肝ポン酢和え、牛もつと豆腐の味噌煮込などをつつきつつ、よもやま話というか、ほぼ誰にもわからないラダックのマニアックな話で盛り上がる。

宮坂さんとは、かれこれ七年もの付き合いになる。仕事や住んでいる場所の関係で、会うのはほんのたまにだけど、ラダックという大事なものを互いに共有しているという点でも、代え難い友人だ(と僕は勝手に思っている)。考えてみたら、宮坂さんが紹介してくれなかったら、僕はレーのノルブリンカ・ゲストハウスと出会うこともなかったし、僕がラダックで過ごした日々もまったく違ったものになっていただろう。本当に感謝してもしきれないとあらためて思う。

宮坂さんは来年の春から、愛知県にある大学で教鞭を取ることになった。住む場所はさらに離れてしまうけど、そのうち、日本かラダックでまた会えるといいな。

青森のリンゴ

夕方、中目黒のイタリア料理店へ。先日結婚した青森在住の知人の披露パーティーに出席する。

お二人とはジュレーラダックつながりの知り合い。彼は青森、奥さんは山口と、かなりの遠距離交際を三年間続けて、いろんな困難を乗り越えてのゴールインだったそうだ。今は青森に住んでいて、今日のパーティーでも、食前酒が青森産のシードルだったり、メインの肉料理にリンゴのソースが使われてたり、引き出物が青森のリンゴだったりと、彼ららしい、とても穏やかな雰囲気の宴だった。

帰りの電車の中、iPhoneを取り出そうとバッグのジッパーを開けると、リンゴのいい匂いがふわっと漂ってきた。二人ともお幸せに。

形にする

この間からずっと自分の中でつっかえて手が付けられないでいた作業に、昨日あたりから、ようやく取り組めるようになってきた。形にするとしてもあと一年くらい先の話なのだが、まずは自分の中でイメージが固まりつつあることに、ちょっとほっとする。

ずっとつっかえて悩んでいたのは、たぶん、確信が持てなくなっていたからだと思う。「‥‥そこまでして、それを形にすることに、意味があるんですか?」‥‥同じような言葉を何度も何度も浴びせられているうちに、自分の中でも揺らいで、わからなくなってしまっていたのだ。

それでもやっぱり、立ち向かうしかない。

これを形にすることに意味があるかどうかなんてわからないけれど、形にしなければ、意味があるかどうかさえ確かめられない。大切にしていることを伝えるために、今の自分にできる一番いい方法で、形にする。意味があるかどうかを判断してくれるのは、それを手に取ってくれた人だ。

それでいいのだ、と思う。

パシュミナ

昼のうちはうららかな日和だったけど、夕方に外に出かけようとすると、さすがに風が冷たくなっていた。薄手のダウンに袖を通し、襟元にパシュミナのマフラーを巻く。

このマフラーは、今年の夏にラダックで手に入れたもの。メインバザールに並ぶカシミール人の店で売られている鮮やかな色合いのものではなく、ラダック人経営の店にあった、生成りのパシュミナの色のままのマフラーだ。首に巻くとふわっとしていて、巻いてるのを忘れそうになるほど軽い感触、でも暖かい。生成りだから、だいたいどんな服にも合わせられる。いい感じ。

暮れていく空の下を歩きながら、時折、襟元に指で触れてみる。ラダックはもう、すっかり冬なのだろうな。

相棒のレンズ

台風一過、すかっと晴れた、いい天気。昼、新宿のニコンプラザへ。最近ちょっと調子が悪くなっていた、カメラのレンズの具合を点検してもらいに行く。

このレンズは、普段の撮影でも一番よく使う標準ズームレンズ。たぶん、今まで撮ってきた写真の七、八割くらいは、これを使ってるんじゃないかと思う。「風息」をはじめ、ラダックガイド本も、共同通信社の新聞記事も、先日の「ソトコト」の記事も、このレンズが大事な役割を担ってきた。カメラ本体と同じくらいなじみ深い、長年連れ添った相棒のような存在だ。

今日の点検の結果、工場で一度分解してチェックして、必要な部品は交換するなどして修理した方がいいと言われた。見積りの金額は、メチャクチャ高くもないが、決して安くもない。でも、このレンズにまだ働いてもらえるなら、喜んで修理に出そうと思った。また達者になって戻ってきてもらえるといいな、この相棒に。