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『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』

冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ
文・写真:山本高樹
価格:本体1800円+税
発行:雷鳥社
A5変形判288ページ(カラー77ページ)
ISBN978-4-8441-3765-8
配本:2020年4月下旬

書き下ろしの旅行記としては約11年ぶりに、新刊を上梓します。インド北部、ヒマラヤの西外れに位置するチベット文化圏、ザンスカール地方を、真冬に旅した時の記録です。

凍結した川の上に現れる幻の道チャダルを辿り、雪崩の頻発する豪雪地帯ルンナク渓谷を抜け、最深部にある僧院、プクタル・ゴンパで真冬に催されるグストル祭を取材しました。約4週間に及ぶ旅の中で、起こった出来事、出会った人々、一つひとつのエピソードを克明に綴っています。

この本に書き記した内容は、もしかすると、あと10年もしないうちに、ザンスカールからすっかり失われてしまうかもしれません。それでも、いや、だからこそ、この本を作っておきたい、と僕は強く思いました。この本が、一人でも多くの読者の方のもとに届くことを願っています。

蟄居の日々

先週末は、相方と二人、ほぼ家に閉じこもって過ごした。出歩いたのは、日曜の昼に近所に食パンを買いに行った時くらい。

土曜は魯肉飯と煮卵と大根スープを作り、日曜は二日前に仕込んでおいた塩豚を根菜と一緒にコトコト煮て、味噌とバターと牛乳で味付けしたスープを作った。近所の焼き菓子屋さんで買っておいたショートブレッドをコーヒーと一緒にいただいたり、これも近所で買ったレバーペーストやチーズを肴にウイスキーをちびちび飲んだりした。こういう時、ささやかにでも、食事とかで気分をアゲていくのは、心の平安を保つために大事だと思っている。

家の外、というか世界は、いろいろ大変なことになっている。ただ、今の時点で僕たち一人ひとりが実践できる最善の選択は、可能な限り家の中にいて、外を出歩かないことだ。一人ひとりがセルフ・アイソレーション(自主隔離)を徹底する以外、新型コロナウイルスの脅威を克服する方法はない。

それにしても、感染拡大を食い止めるために奮闘を続ける医療従事者の方々や、各地方自治体の担当の方々、ライフラインや交通の維持に携わる方々、配送業者の方々、スーパーやドラッグストアの販売員の方々……そういう方々がいなければ、今の社会は完全に壊れてしまう。本当に、感謝してもしきれない。

そして、政府からの「自粛を要請」、つまり「責任も取らないし補償もしないけどお前ら空気読めよな」という理不尽な要求によって、厳しい状況に追い込まれている個人経営のお店やレストランの方々のことも、とても気にかかる。どうにかして支援したいが、なかなか良い手立てがないのが今回の事態の困ったところだ。他の国々では当たり前のように金銭による補償がなされているのに、日本政府はどうしてこうも冷淡なのだろう。

とにもかくにも、今は、自分にできる最善の選択、蟄居を継続するほかない。サバイブしよう。

それでも僕は、今日カレーを煮る

それにしても、新型コロナウイルス。なかなか、厄介である。

昨日、東京では、1日に判明した人数としては最多の41名の感染者が発見された。このペースがさらに加速すれば、非常事態宣言からの首都封鎖(ロックダウン)も現実味を帯びてくる。都知事は昨夜、今週末の外出の自粛を要請した(責任も取らないし補償もしないけど空気読めよな、という「自粛の要請」である)。それでどのくらいの効果があるのか、甚だ疑問ではある。

外務省は、全世界を対象に、レベル2の危険情報を出した。こんなことは前代未聞だ。インドは昨日から3週間、全土で外出禁止令が出ているし、世界各国の大都市でも似たような指示が出ている。イタリアやスペインでの死者数の激増のニュースは、本当に痛ましくて、やりきれない。

そうかといって、僕は医療従事者ではないし、マスクや消毒用アルコールを製造できるわけでもない。今の自分にできるのは、外出の後にうがいと手洗いを励行し、人混みを極力避けることくらいしかない。まあでも、今は、一人ひとりがそう心がけるのが、一番大事なのだと思う。

昨日、今後1週間くらいの自炊の献立を考え、無駄にしないように食材を吟味して、二人が1週間、問題なく食べていけるような準備を整えた。無闇に保存食を買い溜めるのではなく、生鮮食品も含め、献立に合わせて、必要なものだけを。週末はもともと外出しないつもりだったし、しばらくは主に家に籠もって、仕事をしたり、本を読んだり、料理をしたりして過ごそうと思う。

とりあえず、今夜は、カレーを煮る。チェティナード・チキンカレーと、カチュンバル。

インドビザ無効化

昨日の夕方、急に、これまでに発給されている日本人向けのインドのビザはすべて無効になる、と発表された。新規のビザの申請は一応大使館で受け付けているようだが、おそらくほぼ不可能だろう。これからしばらくの間、日本からインドに行くことはできなくなった。

あと10日くらいしたら、僕も取材や執筆・編集で関わっている「地球の歩き方インド」の最新版が発売されるのだが、よりによって、このタイミングとは……(苦笑)。今年の夏の催行を計画していたラダックやザンスカールでのツアー企画も、実現は非常に厳しくなった。まったくもって、やれやれである。

とりあえず今は、目の前の仕事……来月出る新しい本の編集作業に、集中しなければ。刊行記念トークイベントも延期にする可能性が出てきたけど、それも含めて、その時その時に選べる最善の選択肢を、選んでいくしかない。

そもそもテレワーク

新型肺炎COVIC-19流行の影響で、世間的に外出が憚られる雰囲気の今日この頃。僕も、食材の買い出しとかで駅前に行く以外、ほぼ終日、家に籠もって仕事をしている。

……あれ? それって、今までとまったく同じじゃないか(苦笑)。そうだった。僕の場合、そもそもの業務形態がテレワークみたいなものだった。そんなわけで今も家で、春に出す予定の新刊の初校を、ためつすがめつチェックし続けている。

それでもまあ、これから先は、仕事への影響も少なからず出てくるだろう。日本からの入国をストップしている国が増えてきているし、インドも日本人へのe-Visaとアライバルビザの発給を停止した。米国も日本からの渡航をストップする可能性が報じられている。日本からどこの国にも行けなくなったら、当然、取材の仕事はなくなる。

でも、こればっかりは、仕方ないし、どうしようもない。そうなった時に備えて、できる範囲で対策を準備しておかねば、だ。