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原稿執筆ぼっち合宿 in 湯河原


今週月曜から木曜までの3泊4日で、一人で温泉旅館に籠もってひたすら原稿を書くという、原稿執筆ぼっち合宿を実行してきた。滞在地に選んだのは、湯河原。夏目漱石や芥川龍之介など、明治・大正期の文豪も、よくここの温泉宿に籠もって原稿を書いていたという。

今回のぼっち合宿では、The Ryokan Tokyo YUGAWARAという旅館の「大人の原稿執筆パック」というプランを利用した。朝・昼・晩の3食の食事付きで、通常の食事付きの宿泊よりも割安に泊まれるプランだ。部屋は畳敷きの和室で、外からは秋虫の鳴き声がかすかに響くだけで、とても静か。館内ではWi-Fiも利用できる(が、接続が時々切れる)。いやが上にも執筆が捗りそうな環境だ。

温泉旅館なので、館内にはもちろん大浴場があって、朝方と、夕方〜夜の時間帯に、自由に利用できる。自分の場合は、朝起きてすぐに温泉に入ってさっぱりし、8時に朝食。午前中に執筆を進め、12時に昼食。午後も引き続き執筆し、18時に夕食。その後また温泉に入って、23時頃まで執筆。冷蔵庫に入れておいたビールを飲んで就寝、というスケジュールで過ごした。

旅に出るのは、今じゃない

今年の夏は、ずっと東京の自宅で過ごすことになりそうだ。来週の4連休も、お盆休みも、帰省や旅行をする予定はない。東京にコロナ禍の第二波が襲来している今、迂闊に旅行で動き回ると、行く先々で接する人々に思わぬ迷惑をかけかねない。普通に考えれば、ごく当たり前のことだ。

政府が春先から1.7兆円もの巨費を計上してゴリ押ししてきたGo To Travelキャンペーンは、大勢の人々の移動による感染拡大のリスクを伴う明らかな悪手で、愚策以外の何物でもない。僕は一応、添乗員の資格も持っているので、派遣会社とかに登録すれば、日本国内のグループツアーの添乗員の仕事もできるのだが、今は頼まれたとしてもやりたくない。たとえば、ツアーのお客さんに発熱などの体調不良を訴える方が出たら、どう対処すればいいのだろう? その人だけ病院に預ければ済む話ではない。万全の感染防止対策を取りながらツアーを催行するというのは、少なくとも今の段階では、恐ろしく難しいと思う。地方の観光地にしたところで、苦し紛れに観光客を受け入れて、その中に混じっていた無症状の感染者から感染が拡大したら、それによって被るダメージの方がはるかに大きい。連れて行く側も受け入れる側も、今はリスクが高すぎる。

苦境に陥っている旅行業界を支えるのであれば、人の移動という感染拡大のリスクをできるだけ伴わない方策を、最初から検討すべきだった。直接的な給付金であったり、感染収束後に使える宿泊クーポンなどを先払い購入する際の支援など、方法はたくさんあったはずだ。だが、一部の大手企業が甘い汁を吸えるようにという与党の目論見が、すべての判断を誤らせることになってしまった。

旅は、旅をする者が現地で誰にも迷惑をかけずにすむような状況がちゃんと整っていてこそ、楽しめるものだし、価値のあるものだと思う。旅に出るのは、今じゃない。それによって困る業界の人々がいるのなら、感染拡大のリスクを伴わない形で支える方法を、全員で真剣に考えるべきだと思う。

自粛ポリス

先週の金曜、ひさしぶりに散髪に行った。約2カ月ぶり。最近暑くなってきたし、いつまた散髪できるかわからなかったので、思いっきり短くしてもらうことにした。お店の人は「ああ、インドに行く時くらいの短さですね」とあっさり理解してくれた。

髪を切り終わり、襟足を剃り、シャンプーをしながら、お店の人はこんな話をしてくれた。昨今の緊急事態宣言の影響で、この理髪店もゴールデンウイーク中は店を閉めていたそうだ。で、その旨を知らせる紙を店のシャッターに貼っていた時、通りがかったおばさんが、その貼り紙をスマホで撮っていた。ちなみのその理髪店、客の99%は男性である。

連休明けに再び営業を再開すると、何人かのおばさんが、店の前を通りががるたびに、店が営業している様子をガラス越しにスマホで撮っていくようになった。中にお客さんがいる時でも、おかまいなく。そのおばさんたちの不審な挙動に、「ああ、これが自粛ポリスというやつか」と合点したという。緊急事態宣言下で営業している店の様子を、SNSに晒したり、自治体に苦情として持ち込んだり、するのだそうだ。「怖いんで、SNSとか見てないですけどね」とお店の人は苦笑していたが。

今回の緊急事態宣言で、理髪店や美容院は、休業要請の対象にはなっていない。にもかかわらず、警察でも役人でもない一般の人たちが、裏付けのない正義感にかられて、そんな所業をするとは……。すっかり、監視社会じゃないか。まったく、人間というやつは。

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伊藤精一「俺のアラスカ 伝説の“日本人トラッパー”が語る狩猟生活」読了。アラスカに移り住んで罠猟師(トラッパー)とハンティング・ガイドとして暮らしてきた伊藤精一さんの口述をまとめた本。とても貴重な記録で、伊藤さんの軽妙な語り口とあいまって興味深く読ませていただいた。残念なのは、誤植が多かったこと。本文組の書体指定が変に転んでしまってる部分など、かなり気になった。見本誌までの段階で直せなかったのだろうか。

身構えてしまう

午前中、池袋へ。ジュンク堂書店池袋本店で今日から始まる、『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』刊行記念写真展の設営のお手伝いに。設営作業自体は1時間ほどで終わった。スペースや予算など、いろいろ制約のある中で、まずまず良い感じに展示できたのではないかと思う。

担当編集さんと別れ、麺屋武蔵二天でおひるを食べ、電車を乗り継いて、丸の内、神保町、新宿の書店をいくつか回る。『冬の旅』が店頭でどんな感じに置かれているかを確認して、版元にフィードバックするため、という大義名分はあるが、ぶっちゃけ、自分の本が店頭に並べられてるのを見ておきたかったからだった(苦笑)。

大きめの書店では今日はどこも『鬼滅の刃』最新刊を買いに来た人たちの行列ができていて、ソーシャル・ディスタンスを意識してる分、とても長い列になっていた。それ以外のフロアでも、平日の昼間の割には結構人が来ている。街の中も、池袋や新宿はいつもの数分の1だとは思うが、それでも大勢の人が行き来していた。

電車に乗って都心に出て、大きなターミナル駅を利用したのは、ずいぶんひさしぶりだったのだが、正直、疲れた(苦笑)。ラッシュアワーに比べれば列車内は全然がらがらだし、街にも人混みができているわけではないのだが、それでも、マスクを外したまま大声で携帯で話をしてるおっさんや、マスクをしないまま電車に乗ってきて菓子パンをかじってるにーちゃんなどを見かけると、やっぱり身構えてしまうし、可能ならしっかり距離を取って迂回してしまう。今のこの状況では、都心に出かけたところで、気晴らしになるどころか、逆に気疲れしてしまう、と思った。

いつまで続くんだろうなあ、この状況は。

飛び去っていく時間に

暑い。今日は部屋の窓を開けて網戸にし、サーキュレーターを回している。部屋着は先週あたりから、すでにTシャツと短パン。この調子だと、来月からはエアコンを除湿モードで動かさないと、耐えられなくなるかも。

ついこの間、桜の季節があって、「今年はコロナ禍でちゃんと花見できなかったなあ」と思っていたのに、気がつけばもう夏が目の前に迫っている。今の世の中の嫌な状態を早くやり過ごしたい、一息つける時期が来てほしい、と思っているから、しぜんと時間が早く飛び去っていくように感じるのかもしれない。

……まあ、そう簡単には収束しないだろうな、ということも、薄々わかっているのだが。

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ロバート・ムーア『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』読了。しばらく前に買っていたものをようやく読んだのだが、面白かった。アパラチアン・トレイルをスルーハイクした経験をきっかけに、「トレイルとは、道とは何か?」というそもそものところから、徹底的に掘り起こして文献を調べ、体当たりで取材し、思索を巡らせて書かれた労作。ハイク好きの人には特におすすめ。